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映画『ザ・バットマン』に学ぶ「2年目」の働き方 ─ フリーランスのための五箇条

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』が公開となった。バットマン2年目としてのブルース・ウェインを描く野心的な本作。これまでの主な映画で描かれたベテランヒーロー像ではなく、今回ではまだ戦闘術やガジェットの扱い、そして信念も確立されていないブルースがもがきながらも悪と戦う姿が描かれる。

そんな本作は、彼のように「2年目」として仕事に挑む人々にとって非常に大きな刺激がある。社会人2年目の方はもちろんのこと、ヴィジランテとして単身で戦うバットマンのように、何の後ろ盾も持たないフリーランス2年目や起業家2年目の方には、カッコいい働き方の大きなヒントが詰まっているのだ。

本記事では“『ザ・バットマン』に学ぶ「2年目」の働き方”と題して、サラリーマン、フリーランス、会社設立を経験した筆者の目線から気づきをまとめたい。主にフリーランスとして働く方へ向けたものとなっている。

1. ジェームズ・ゴードン(支援者)を見つけろ

ザ・バットマン
© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

そもそもバットマンというヴィジランテのコンセプトは不条理である。不気味なコウモリの格好をして、たった1人で夜な夜な犯罪者たちを懲らしめるというのは、現実的に考えてかなりクレイジーだ。それでもバットマンがゴッサム・シティで恐れられる存在として暗躍できているのは、ジェームズ・ゴードンの存在あってこそである。

腐敗や汚職蔓延るゴッサム・シティにおいて、ゴッサム市警刑事のゴードンは「最後の良心」とされる男だ。悪を許さず、街の浄化を理想とするゴードンはバットマンと奇跡的に志を共にし、バットマンは彼のおかげで警察の捜査と行動を共にでき、極めて限られた場所に立ち入ることができ、また情報も得ることができる。もしもバットマンにゴードンがいなければ、彼の犯罪探知、及び情報収集の範囲には限度が生じるはずだ。

ゴードンの地位や人柄もある。『ザ・バットマン』劇中でも、バットマンは警察内部で煙たがれ、不審がられる描写があるが、そこはゴードンは「彼は私のツレだ」とゴリ押ししてくれるので、まかり通る。ゴードンは警察内でそれなりの役職にありながらも、バットマンという(警察から見れば)アウトローの力も積極的に借りるという柔軟性を持っている。

まだ後ろ盾もない2年目の戦士にとって、ゴードンのような存在がいるか、いないかは、極めて重要だ。それは、「バットマンの物語にゴードンがいなかったら?」を想像すれば容易にわかるはずである。

現実の社会人生活に置き換えるのなら、ゴードンはあなたの仕事分野において重要な企業でそれなりのポストにいるような人物や、頼れる先輩、投資家(エンジェル)などに当たるだろう。バットマンは犯罪者を捕まえる必要があるが、あなたは仕事を捕まえる必要がある。そのために必要な機会や情報を惜しまず与えてくれるような人物を見つけよう。

2. 道具にはこだわれ

『THE BATMAN-ザ・バットマンー』
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ブルース・ウェインは大富豪で、そのためバットマンのスーツやガジェットなどの開発には必要十分な額を費やすことができる。それでは、もしもブルースが開発費をケチって、不完全なスーツやガジェットを身につけていたら?スーツは防弾でなくなり、バットマンは悪党の銃撃に怯えながら、逃げるように戦わなくてはならない。ガジェットは肝心な時にうまく働かず、悪党を取り逃したり、または逃げ遅れて自分の身に危険が及ぶかもしれない。バットモービルはいつもガス欠で外装もベッコベコ。それではゴッサムの悪党どもに「恐怖」など与えられるはずもない。

ノーランの『ダークナイト』トリロジーでは、最高のガジェットを提供するルーシャス・フォックス(モーガン・フリーマン)がいたが、『ザ・バットマン』にルーシャスはおらず、どうやら若きブルースが自前で開発をしている。道具にはとことんこだわるべきだと、ブルースはよく理解しているからだ。

バットマンのように、仕事道具にはこだわろう。例えばパソコンを新調する時に、スペック選びに迷ったら、良い方を選ぶという気概も時には必要である。劣っている道具を使って仕事のパフォーマンスが最適化されない、なんてことが起こったら、困るのは自分自身だし、何よりもクライアントに失礼だ。

3. 戦う分野を確立せよ

ザ・バットマン
© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

バットマンが悪党の前に姿を現すのは、基本的には夜である。それは、悪党どもに恐怖を与えるというバットマン独自のコンセプトのためなのだが、いつ闇から現れるか分からないというその威厳は、「バットマン=夜」という印象を植え付けているからこそ機能する。

もちろんブルース・ウェインとしては時間問わず立ち回るわけであるが、(あるいはコミックでは必ずしも夜だけに限らない、)もしもバットマンが朝も昼も戦っていたら、彼の評判も随分違ってしまっていただろう。そもそも、ブルースの身も持たない。戦う時間帯を限定するというのは、バットマンのイメージ戦略としても、ブルースの現実的な都合としても、非常に理にかなっている。

このように、戦うフィールドを限定するというのは仕事においても応用が効く。活動能力がまだ限られている2年目であれば尚更だ。「ゴッサム・シティの夜」に限定するバットマンのように、地域や時間帯、あるいは分野、年齢、性別、属性を絞ってのビジネスを考えてみよう。ランチェスター戦略というやつである。

4. バットシグナルが灯ったらいつでも動け

ジェームズ・ゴードンは警察署の屋上から、闇夜目掛けてバットシグナルを灯す。犯罪が起こっているという証、そして間も無くバットマンが出没するという警告だ。

バットマンの物語を象徴するこのバットシグナルだが、ブルースの目線で見ればなかなか大変である。どんなに忙しくとも、どんなに疲れ果てていても、夜空にシグナルが見えれば、いつでもバットマンとして戦いに出向かなければならない。

フリーランスにも、時としてこういうことが起こる。深夜であろうと、土日祝日であろうと、「今、バットシグナルが灯っている」と感じる瞬間だ。バットマンが「今日は疲れたからもう寝るわ」と街を見捨てないのと同じように、仕事においても、今すぐ動かなくてはならないという状況はある。過酷なフリーランスの世界にいるときは、そういった事実があることも理解しておく必要がある。

5. 悩んで、もがけ

『THE BATMAN-ザ・バットマンー』
© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & © DC

バットマン。闇の騎士、ケープを纏った十字軍騎士、世界最高の探偵──。様々な異名と共に畏れられるスーパーヒーローだが、『ザ・バットマン』で、2年目バットマンのブルースはとにかく悩んでいる。

確かに、劇中では犯罪者を脅かすような名声は確立しており、悪党どもを一掃できるような格闘スキルは兼ね備えている。しかし、次々と起こる怪事件にバットマンは翻弄される。トラウマに悩み、周囲と衝突し、痛み、苦しむ。その隙を最狂の知能犯リドラーに狙われ、バットマンはますます追い込まれていく……。

そういうものなのだ。あのバットマンでさえ、2年目の時代はそれほど苦しんだのだ。そして長きにわたるバットマンの歴史の中で、彼はほとんどいつも苦しい戦いを強いられている。世界中の誰もが憧れるバットマンでさえ、悩みは尽きないものなのだ。

だから、フリーランス2年目のあなたが仕事の進め方やキャッシュフローに悩んで苦しむのも、自分のスタイルが確立できないと焦るのも、至極当然のことなのである。「もしかして自分だけがうまくいっていないのか」と不安になったら、『ザ・バットマン』を観て思い出してほしい。あのバットマンでさえ、これだけ苦しみながら、それでも戦い続けたのだと。

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』は公開中。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。