【ネタバレ】『ザ・フラッシュ』ラスト解説 ─ 衝撃サプライズなぜ実現?全3バージョン製作された結末の全容

この記事には、『ザ・フラッシュ』の重大なネタバレが含まれています。

『ザ・フラッシュ』には全3種類のラストシーンがあった?
『ザ・フラッシュ』劇場上映版のラストでは、ジョージ・クルーニー版のブルース・ウェインが現れたことによって、バリーがタイムラインを元に戻すことに実は失敗していたことを示唆した。The Hollywood Reporterによると、このラストのため製作されていた前2バージョンのエンディングでも、裁判所の正面階段という場所設定は変わらなかったようだ。
『ザ・フラッシュ』幻の結末:バージョン1

最初のバージョンでは、そこにサッシャ・カジェのスーパーガールとマイケル・キートンのバットマン、つまり本編でバリーと一緒に戦った2人が登場し、バリーが元の世界に戻れていないことを仄めかす演出となっていた。このバージョンは、何度もテスト試写で上映されていたという。当時のDCでは、この2人が今後のシリーズを牽引する役になるはずだったということだろう。
しかし、それからワーナー・ブラザースがディスカバリーに買収され、幹部陣が入れ替わったことにより、新たなバージョンに作り直されることになった。これを進めたのは、当時のワーナー・ブラザース映画部門CEOとなっていたマイケル・デ・ルカとパメラ・アブディだ。
『ザ・フラッシュ』幻の結末:バージョン2
このバージョン2では、バージョン1のカジェ版スーパーガール、キートン版バットマンに加えて、ヘンリー・カヴィルのスーパーマン、ガル・ガドットのワンダーウーマンも加わっていたという。これは、当時のDCが将来に向けて仕掛ける企画への伏線となるはずだった。

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デ・ルカとアブディは『ブラックアダム』(2022)で、ドウェイン・ジョンソンの相談を受けてカヴィル版スーパーマンの再登場を進めた2人だ。当時カヴィル版スーパーマンの新作企画もアナウンスされていたことから明らかだったように、『ザ・フラッシュ』結末のバージョン2は、今後のカヴィル版スーパーマン映画に向けた助走だった。
ワンダーウーマンもまだシリーズ第3弾に向けて動いていた。2022年12月には、その内容が新設DCスタジオによる方針と相容れず、パティ・ジェンキンス監督と決裂して企画も中止になったと報じられた。その数日後には「『ザ・フラッシュ』からヘンリー・カヴィルとガル・ガドットの登場シーンがカットされる」との情報も。つまりこの時、バージョン2の予定が変更されていたということだ。

バージョン2の結末に加わったキートン版バットマンは、実はその当時は単独新作映画が予定されていた。『ザ・フラッシュ』から派生する内容で、アニメシリーズ「バットマン・ザ・フューチャー」を題材に、年老いたブルース・ウェインが新たな高校生バットマンを指南するという内容だ。
キートン版バットマンが登場予定だった作品は他にもある。お蔵入りになった映画『バットガール』だ。この未公開作品では、『ジャスティス・リーグ』(2017)でJ・K・シモンズが演じたジェームズ・ゴードンも続投していた。どのような世界観となるかが謎だったが、『ザ・フラッシュ』結末のバージョン2からであれば、いかようにも繋げることができただろう。
さらにキートンは、『アクアマン』の続編『アクアマン・アンド・ザ・ロスト・キングダム(原題:Aquaman and the Lost Kingdom)』にも登場予定となっていて、その撮影も済まされていた。キートン版バットマンは、マーベル映画でいうところのニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)のように「複数の映画に登場し、指導する老練者」になるはずだったのだ。

しかし、その途中でジェームズ・ガン&ピーター・サフランによるDCスタジオが設立され、新たなユニバース計画が実行に移されたことで、これらの予定は全て闇に消えた。キートン版バットマン単独映画は『ザ・フラッシュ』脚本のクリスティーナ・ホドソンが執筆も進めていたが中止となり、『アクアマン』続編では急きょベン・アフレックがブルース・ウェイン役として撮影に参加。キートン版と出番を差し替えるためと見られている。
ちなみにバージョン2でもカジェ版スーパーガールが残されたのは、このキャラクターの今後の登場の可能性を残しておくため。スタジオは、このスーパーガールが本編中でゾッド将軍に倒されたまま退場することを望まなかったという。