Slackで見るドラマ「ザ・オフィス」始動 ─ 平日9時から17時、毎日リアルタイムで展開

アメリカの人気コメディドラマ「ザ・オフィス」(2005-2013)が、なんとビジネスチャットツール「Slack」にて展開されている。
「ザ・オフィス」は架空の企業ダンダー・ミフリン社の支社を舞台に繰り広げられる日常のドタバタを、フェイクドキュメンタリー形式で描いたもので、2001~2002年にイギリスで放送された同名ドラマ(邦題「ジ・オフィス」)をアメリカにてリメイクしたシリーズだ。スティーブ・カレルが主演を務め、エミー賞をはじめ数々の賞に輝いた。
Slack版「ザ・オフィス」は、ドラマ版の全201エピソードの脚本を、すべてSlackで展開できるよう再構築したもの。平日の朝9時~夕方5時まで(米国時間)、登場人物たちの会話が「オフィス」「会議室」「キッチン」「倉庫」など複数のチャンネルでリアルタイムに展開される(「パーティー計画委員会」や「コール・オブ・デューティ」なんてチャンネルもある)。言葉だけでなく、絵文字やGIF画像など、Slackならではの形式で繰り広げられるジョークが見どころだ。もともとのシリーズがフェイクドキュメンタリーだったことも、まさに今回の試みにはぴったりだろう。

この“ドラマ”を見る…もとい体験するには、公式ページ経由でダンダー・ミフリン社のSlackに登録すればOK。2020年5月11日(月曜日、米国時間)にスタートしたばかりだが、すでに登録者は1万人近くに到達(本記事時点)。ユーザーは登場人物ではないので発言は慎むよう求められているが、リアクションを送ってオフィスを盛り上げることは可能だ。

運営にあたっているのは、オンラインで展開するサービスやストーリーで“バズ”を生み出す米国のベンチャー企業「MSCHF」。新型コロナウイルスの感染拡大により、米国ではリモートワークでの勤務にあたっている人々も多いが、実はこうした状況に陥る前から企画は始動していたとのこと。もともとは「ザ・オフィス」の放送後、さまざまなテクノロジーやツールの登場により、“仕事”や“働き方”の概念が劇的に変わったことを踏まえて企画されたものだったという。それ以上にタイムリーな内容になったのは偶然だったのだ。
平日9~17時の“放送”にあたり、MSCHFは約20名のチームを組織してプロジェクトを進行しているとのこと。“ドラマ”をスムーズに、問題なく展開するため、荒らし行為に対応するスタッフも数名控えている。なお、本作は日常的に長時間にわたって展開されるわけだが、なにせドラマ版は全201エピソードである、完結には約2~3週間かかる見込みだ。ぜひすべてをリアルタイムで体験したいところだが、本気で追いかければ仕事どころではなくなってしまいそう……。
ちなみに「ザ・オフィス」を手がけたベン・シルバーマン&ポール・リーベルシュタインは、コロナ禍を受けてリモートワークを扱った新作コメディドラマを企画中。これとは別に、Netflixは「ソーシャルディスタンス」をテーマにしたドラマも企画しており、情勢の変化を作品に反映すべく、すでにクリエイターたちは粛々と準備にあたっている。しかしそんな中でも、Slackを使ってドラマを展開しよう、ストーリーを語ろうという試みはとりわけ野心的だ。もしかして今後、このような企画が増えることにもなりうる?