「最近観た配信映画は?」4人中3人が答えられない ─ 「すぐに配信されるとわかっていても映画館に行く」回答多数、米調査

ストリーミングサービスの台頭は、意外にも映画館業界にダメージを与えていないのかもしれない。最新の調査によると、観客の3分の2が劇場公開から配信開始までの間隔を気にしていないこと、配信オリジナル作品より劇場公開作品のほうがより大きな注目を集めていることがわかった。米Deadlineが報じている。
今回の調査は、米国の大手エージェンシーであるUnited Talent Agencyの調査研究部門UTA IQが、米国に住む15歳~69歳の2000人を対象に行ったもの(2023年1月4日~11日調査)。回答者の3分の2が、「家で観られるようになるまでの期間が短いことは、劇場へ行くかどうかの判断にはほとんど or まったく影響を与えない」と答えた。
また、2023年に映画館に行くペースを「昨年(2022年)同様、もしくは昨年よりも上げていきたい」と答えたのは全体の4分の3。「回数を減らしたい、もしくはまったく行かないつもり」と答えた者のうち、その理由として「家で十分たくさんの映画を観られるから」と回答したのはわずか28%にとどまった。家で観られる映画のラインナップが豊富であることは、映画館を訪れる動機とはあまり関係がないということだ。
各社が配信プラットフォームに注力し、劇場公開作の配信が早くなったことは、どちらも新型コロナウイルス禍と浅からぬ関係にある。それ以前から配信重視の流れはあったものの、2020年に映画館が休業となり、その後も観客が大幅に減ったことを受けて、各映画会社は「配信」を有効な選択肢として選ぶようになった。2020年~2022年は劇場公開作品の本数が大幅に減ったが、今後は再び劇場公開作が増えるとみられている。
コロナ禍の前後を比較して、「コロナ禍以前ほど映画館に行っていない」と答えた者のうち、その理由として「家でたくさん映画を観られるから」と答えた者も28%で、全体の3分の1以下。むしろ映画館に行かない理由として大きな割合を占めたのは、「価格のため」(47%)「健康・安全面に懸念があるため」(38%)だった。
また興味深いのは、配信オリジナルの映画がこれだけ増えた今でも、劇場公開作品のほうが注目を集めていることだ。2022年にNetflixで最も観られた映画トップ5のうち、なんと3作品が通常の劇場公開作品だったという事実もあるし、今回の調査では、「最近観た映画」として挙げられた24タイトルのうち、配信オリジナル作品はわずか8作品。2023年1月上旬の調査とあって、最も多く挙げられたのは『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』(2022年12月23日配信)だった。
さらに、「一番最近観た配信オリジナル映画は?」との質問に対し、作品のタイトルを答えることができたのは回答者のわずか4分の1。残りの4分の3は「思い出せない」あるいは劇場公開作品のタイトルを答えたという。劇場公開作品に比べ、配信オリジナル映画が観客の印象に残りづらい傾向が見て取れる。
自宅で早いうちに観られるようになるとわかっていても映画館に行く、また配信オリジナル作品の印象が劇場公開作品より薄くなりがち……という結果からは、映画を劇場で観るという体験を、観客が意識的にも、また無意識的にも重要視していることが推測される。劇場公開作品のほうが興味を惹きやすいのはプロモーションの問題もあるだろうが、いずれにせよ調査結果は“劇場強し”を一様に示していると言えるのだ。
2022年の下半期からは、ディズニーがディズニープラスを重視する戦略を見直す、AppleやAmazonが自社オリジナル作品の劇場公開に多額の予算を投入するなど、各社が再び映画の劇場公開に回帰する流れが生まれつつある。映画業界に革命をもたらすかと思われた配信のムーブメントだが、今年以降はその形をやや変えることになるかもしれない。
Source: Deadline