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『サンダーボルツ*』エレーナの高層ビルジャンプ、『ミッション:インポッシブル』トム・クルーズを意識していた ─ 「数秒間だけトム・クルーズになりきった」

サンダーボルツ
(c) 2025 MARVEL

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)映画『サンダーボルツ*』は、フローレンス・ピュー演じるエレーナが、とあるミッションのため高層ビルの屋上から飛び降りるシーンから始まる。予告編などでも印象的なこのシーンは、スタントパーソンではなくピュー自らが演じた。撮影地はマレーシア・クアラルンプールの“世界で2番目に高いビル”ムルデカ118。2023年に竣工したばかりの新しいビルだ。

ハリウッドに危険なスタントに自ら挑戦するスターといえば、『ミッション:インポッシブル』シリーズのトム・クルーズ。米The Hollywood Reporterのインタビューで、ピューはトムを意識したことを認めている。

「トム・クルーズがやることはなんでも──スタントであれ、演技であれ、本当に素晴らしいですよね。だから、ほんの少しでも彼のようにふるまってみたい。私が飛行機を操縦したり、バイクに乗ったりすることはないと思いますが、これは私にとって最高のスタントでした。数秒間だけトム・クルーズになりきるのは楽しかったですね。」

サンダーボルツ*
(c) 2025 MARVEL

このシーンは当初から脚本にあったが、マーベル・スタジオは保険の問題から及び腰になり、一時はスタントの削除を検討したそう。そこで、ピューはケヴィン・ファイギ社長に直談判したという。「生意気にも、“これはプロモーションで使えますよ”とメールしました。とにかくプッシュしていたら、“検討しましょう”と。なるべく安全に飛び降りられるよう、たくさんの方々が力を尽くしてくださったおかげです」。

監督のジェイク・シュライアーも、「トム・クルーズは大好きだし、『ミッション:インポッシブル』シリーズも大好き」と語る。お気に入りは『ミッション:インポッシブル/ ゴースト・プロトコル』(2011)で、キャラクター由来の強力なアクションを形にした記念碑的作品だと強調した。

その影響は、どうやらピューの高層ビルからのジャンプシーンにも活きているようだ。「トム・クルーズや彼の仕事と競う気はないけれど、少なくともこれが私たちなりのスタントの解釈です」という。

「死を恐れないようなジャンプを、フローレンスが自分で演じたなんて信じられませんよね。本当に特別なのは、あのショットが顔のクローズアップから始まる長回しであること。非常に暗く、孤独な精神状態のなか、彼女は同じテイクで世界有数の高層ビルから飛び降りようとする。役を演じながらスタントをやってのけるのが独自性であり、感情面では演技に近いスタント。それが僕たちの強みを活かす方法でした。」

このシーンが撮られたのは、撮影最終日の前日。無事にビルからの飛び降りをやり遂げたあと、一同は路上に移動し、エレーナがビルの爆発を見上げる場面を撮った。シュライアー監督いわく「彼女はワンテイクで最高の演技を見せてくれた」そうで、撮影は午後1時ごろに終わったという。

もっとも「高いところから飛ぶのは楽しい、いつも高さは気にしない」というピューだが、さすがにムルデカ118からのジャンプは「レベルがまったく違った」と話す。撮影中は完璧に精神状態をコントロールし、スタントのあとも奇妙なほど落ち着いていたそうだが、やはり精神的には大きな負担がかかっていたよう。「帰ったあとは3時間ほど熟睡してしまいました」と明かしている。

映画『サンダーボルツ*』は公開中。

Source: The Hollywood Reporter(1, 2), Fandango

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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