『最後のジェダイ』はここまで自由に作られた!監督自身が明かす『スター・ウォーズ』創作の秘密

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は、劇場公開されるやいなや全世界でファンからのさまざまな反応を呼んだ。その挑戦的なストーリーを熱狂的に絶賛する者があれば、「これをスター・ウォーズとして認めるわけにはいかない」と言わんばかりにシリーズの正史から外すよう求める者まで現れたのだ。
なににせよ確かなことは、脚本・監督を務めたライアン・ジョンソンが、創作の自由をきちんと確保された上で映画製作にあたっていたことだろう。では『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)に始まった新3部作は、どこまでストーリーをあらかじめ決定されているのだろうか? そして、監督はどこまで自由に創作を許されたのだろう?
米Deadlineのインタビューで、監督自らがその製作プロセスを明らかにした。自身の欲求とルーカスフィルムのスタイル、そして監督によるジョージ・ルーカス作品の分析まで、その発言からは『最後のジェダイ』に秘められた監督の志が見えてくる。

監督が語る『最後のジェダイ』メイキング
「最高のスター・ウォーズを作りたい」
2016~2017年にかけて、映画ファンはルーカスフィルムの奇妙な……いや、いささか乱暴な動きを見つめてきた。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)のギャレス・エドワーズ監督に要求された大量の再撮影、トニー・ギルロイの途中参加による再編集。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年6月29日公開)を大部分撮り終えていたフィル・ロード&クリス・ミラー監督の降板、そしてロン・ハワード監督による引き継ぎ。極めつけは『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の脚本・監督を務める予定だったコリン・トレボロウの離脱、J・J・エイブラムスの登板だ。
こうした動きの中、なぜか思わぬスムーズさで『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を作り上げたのがライアン・ジョンソン監督である。次々起用される若手のうち、なぜライアンだけがこんな所業をやってのけられたのか……。彼は「スタジオと戦うことはなかった」と言い切って、ルーカスフィルムとの良好な関係を明言している。
「一番最初から、ルーカスフィルムやディズニーは僕の作りたい映画を作ることを許してくれましたし、(スター・ウォーズに)個人的なものを見つけるよう積極的に仕向けてくれました。」
「個人的なもの」とはいえ、それは自分と父親の関係を作品に見出すようなことではないと監督は説明する。それは自分自身の方法、自分自身が深い関心を抱けるものを指しているのだ。
「とにかく死力を尽くして戦う、そんな戦争の物語を描ければと願いました。それから、最高の『スター・ウォーズ』を作りたかった。そこに狙いを定めたんです。“よし、革新的なことをやろう”なんて言いませんでした。素晴らしい『スター・ウォーズ』を作りたいと思ったんです。」
監督の覚悟、ルーカスフィルムのバックアップ
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は、新3部作の第2作という、やや立ち位置の難しい作品となっている。『フォースの覚醒』のラストから直結したストーリーを、いかに『エピソード9(仮題)』に繋げるのか、そんなバトンタッチの役割を担っているはずだと考えるのが自然だろう。
しかし驚くべきことに、ルーカスフィルムは『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を作るための要素をライアン監督に何も要求しなかったのだという。「殺したいキャラクターを殺せた」とうそぶく監督は、脚本執筆のプロセスをこう説明するのだ。
「ストーリーテリングの作業は本当に良かったですよ。確かに、3部作のストーリーではあるんです。1作目が紹介、2作目が特訓…ですから、登場人物への挑戦ですね。3作目では全員が集まって、すべて解決されなければならない。
それでも、本当に縛られるものなく、いわゆる大筋にも沿わずに脚本を書くことができました。『フォースの覚醒』で感じたことや、自分が見たいと思ったものに反応して、この映画を個人的な作品として作れたと思います。自分が正しいと感じたところ、一番面白いと思ったところへ登場人物を連れていくこともできました。この映画で、登場人物が予想外の方向へ向かうと感じられるのは、そんな自由さがあったからだと思います。もしもすべてが計画されて、事前に書かれていたとしたら、もう少し予測できるものになっていたかもしれませんね。」
もちろん、「最高の『スター・ウォーズ』を作りたかった」と語っているように、ライアン監督は自由な創作の中でも、この作品を「スター・ウォーズらしくしたい」と考えていたようだ。「ミレニアム・ファルコンを紫に塗ったら笑えるんじゃない?とか、そんなアプローチじゃなかったわけです」と話す彼は、“スター・ウォーズらしさ”と“自身の作家性”の狭間にて、「リスクを背負うことも選んだ」と言い切っているのである。
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