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それでもエピソード9に希望を託す理由 ─ 『最後のジェダイ』で得た「スター・ウォーズは誰のもの」の答えと、3つの不満

©Walt Disney Studios Motion Pictures ©2017 & TM Lucasfilm Ltd. 写真:ゼータ イメージ

2017年12月15日、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』鑑賞後、一緒に行った同年代(70年代後半生まれ)の友人がこの映画を「親に連れられて初めて行った時から馴染みだった大好きなレストランが、10年ぶりに営業再開したんで行ってみたら、シェフが代替わりしていたものの先代を彷彿とさせるような味で安心したので、二回目行ってみたらまたシェフが変わっていて、そのシェフが『伝統のメニューはやめます』と貼り紙して、屋号そのままにオリジナル料理をだしてる感じ」と例えました。初見を終えた段階での僕の心情に非常に重なるものがあります。

「伝統か革新か」──そんな二元論で語られることが多いであろう『最後のジェダイ』。レストランに準えるならスター・ウォーズの屋号を名乗る限り伝統の味を期待するファンは少なからずおり、彼ら(僕も含む)古くからのファンは店が再開した理由は長年に渡る自分たちのバックアップがあったからこそと考えています。あえて伝統を断絶し「革新」に走るのであれば、相応の反発は覚悟しなければなりません。

「断絶」という言葉に恣意的な響きを感じる方もいらっしゃるでしょう。タイトルも、オープニングロールも、音楽も、ライトセイバーやファルコン号も残ってる。伝統は守っているじゃないかと。ここでいう「断絶」とはそういった外観のことではなく、「世界観やストーリーの断絶」のことです。『フォースの覚醒』(2015)では前作までの物語を踏まえた上で新しい物語を古いファンと新しいファン両方に向けて始めて見せた。しかしその直接の続編であるはずのエピソード8『最後のジェダイ』では、シリーズが守ってきた世界観を変え、因果を断ち切ってしまいました。せめて「なんだか嫌な予感がする」という台詞や、回想シーンを使わないというルールくらい、今回の作品にフィットさせることはできなかったか。そういった細かい事まで、あえてことごとく踏襲しなかったからには「故意に断絶させた」と受け取られても仕方がないでしょう。それなら旧キャラなど引っ張り出さず、『フォースの覚醒』の時点でやればよかったのに。

スター・ウォーズは誰のもの

二回目の鑑賞後、改めてそんな寂しい気持ちに囚われているときに、隣に座っていた11歳の息子に感想を聞くと「結構面白かった。続きはいつやるの?」との答え。瞬間僕の脳内では名曲『玉座の間』が流れ出し、「スター・ウォーズは誰のものか」、その解答を聞いた気がしました。彼らの世代にとっては旧三部作から始まる伝統なんて殆ど関係ありません。やたら宣伝が大々的な一本の新作映画、光る剣と宇宙船が登場する善と悪の戦いの物語。「スター・ウォーズとは、フォースとは、スカイウォーカーとはこうでなくてはならない」なんてバイアスを持たず、まるで『新たなる希望』や『帝国の逆襲』を始めて観たときの僕らのように映画を評価することができる。その彼らが「面白い」と判断し続きが観たいと願い、その声が多ければ今後もスター・ウォーズは存続するでしょう。そしてエピソード9だけでなく、その先も続くというシリーズのつくり手たちを制約から解き放つ必要があったのだ、ひとまずそういうことにして納得することにしました。「伝統」におもねることなく「スター・ウォーズ」の名に恥じない時代に合わせたトップクラスのエンターテインメントを作り続けてみせる、製作陣のその心意気やよしです。

わかった、心意気はいいとして、『最後のジェダイ』がそれに値するかはまた別の話。勝手に負わせてしまった「伝統を破った罪」を抜きにしても、個人的に本作の話運びや演出には言いたいことが山ほどあります。以下、文章のトーンを普段のくだけた調子に戻しまして、特に「これさえなければ…」というポイントを3つ挙げさせて頂いて禊とし、今後は陰ながら新三部作の成功を心より応援する立場に戻る所存です。

注意

ここからは、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のネタバレ内容が含まれています。

©Walt Disney Studios Motion Pictures ©2017 & TM Lucasfilm Ltd. 写真:ゼータ イメージ

1.レイア宇宙を飛ぶ

「フォースはそんなことできないよ!」なんて言うつもりはもうありません。江田島平八みたいなことができてもいいです。おそらく『帝国の逆襲』、惑星ダコバでヨーダが沼の中からX-WINGをフォースで持ち上げた感動的な場面と似た効果を狙ったんだと推測しますが、絵面がちょっとギャグっぽくなっちゃってましたよね。目をつぶって手を伸ばしている姿は、あるある探検隊が来ちゃうんじゃないか心配になりました。まあ、それは意地悪な穿った見方だとしても、今年(2017年)同じディズニー・フランチャイズの大作映画で、生身で大気圏外に出て、あっという間に命を落としてしまったキャラクターがいたせいで、より可笑しみが出てしまったような気もします。僕の中では、あのキャラとレイアでメリー・ポピンズ選手権2017を争うことになりそうです。

2.アクバー提督の最期

こればっかりは懐古厨と罵られようがなんだろうが、絶対に許せません。殺したことさえ許せないのに、なんだあの扱いは。言ってる人が多いですが、ローラ・ダーン演じるホルド提督、新登場となるあのキャラクター必要ですか?使い捨てるのに?あそこはアクバーでしょう?

本来主戦派であるはずのアクバー提督が消極策をとって、普段提督を信頼しているポーたちが動揺、ところがアクバーには自らを犠牲にする策があり、残念ながらその策を実行しなければならなくなって、「私は将としてたくさんの兵を死なせた。贖罪の時が来たのだ、フォースと共にあらんことを」で特攻というのなら、もうこちとら涙腺崩壊、しかも『最後のジェダイ』の「世代交代」というテーマにもこの上なくマッチした名場面になったと思うんですがね。

3.ローズとフィンのキスシーン

いらんかったなあ。考えてもみてくださいよ。フィンとローズって出会ってから1日か2日くらいしか経ってないんですよ?愛とか急に言われても困ります。あの場面、ローズを助け起こしながらフィンが「なんでこんなことしたんだ?」(この台詞もよく考えると変ですよね。何言わそうとしてんだか)と問いかけたら、「馬鹿ね、あんたは死んじゃいけないのよ。あんたは私たちの英雄なんだから」って感じにすれば、フィンとローズの出会いの場面と対になるし、観客としても劇中まるっきり無駄な動きをしていたこの二人の、勇気だけは讃える気になったのに。

以上です。でも、これから好きになれそうなところも多かった。ケアテイカーはかわいかったし、ルーク対AT-ATは震えました。何より、新三部作の核となるカイロ・レンが良かった。孤独を選んだ彼の絶望の行く末を2019年13歳になっているであろう息子と見届ける、そう考えるだけで、エピソード9を楽しみに待てるような気がします。

Writer

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アクトンボーイ

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたいと願う今日この頃。

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