Menu
(0)

Search

マーベル・エンターテインメント トム・ブリーヴォート氏インタビュー ─「失敗は未来への燃料」時代が変わっても、コミックが持ち続ける魂とは?

マーベル 副社長 トム・ブリーヴォート

マーベル展」にもありますが、初期のマーベルは失敗ばかりでした。「ハルク」なんて6号目で打ち切りに遭うくらい不人気でした。でも、スタン・リーやジャック・カービーがハルクを「アベンジャーズ」や「ファンタスティック・フォー」に登場させたり、スパイダーマンと戦わせたりして、次第に知名度を得ていきました。そうしてまた単独シリーズが作られるようになり、今や大人気キャラクターになったんです。「X-MEN」も9年の連載の後に頓挫していますが、後のクリエイターが新たなアプローチを試して大きく成功したのです。「アントマン」なんて最初は大失敗でしたよ(笑)。3~4年前、「アントマン」を映画化するという話になったとき、マーベル社内でも疑問の声が挙がったくらいです。

このように、例えある時点でうまくいかなくたって、それは将来に成功するための”燃料”だと捉えています。ある日時代が追いついて、失敗だと思われていたものが重要なものになったりするんですよ。これらはすべて巡るプロセスの一環です。

ローカルコンテンツもさらに強化

中谷日本にローカライズを施すという点において、マーベルはアニメ『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』を制作されましたね。良い意味でとても日本的だなと思いました。他の国における事例をお聞かせ頂けますか?

トム氏日本でTVアニメ『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』を作ったように、他の国でも独自のコンテンツを制作しました。韓国では『WEBTOON』と呼ばれる、スマホやタブレットをスクロールして読めるWebコミックを展開しました。また、ヨーロッパや南アメリカ、ブラジルでは現地ならではのエピソードを作りました。また、新しいアベンジャーズのアニメーションも制作していて、2017年の夏に日本で放送開始予定です。マーベルの持つ精神の部分は踏襲しながら、世界各国の方たちに楽しんでいただけるよう、様々な取り組みを行っています。

そして、私たちは世界各国のクリエイターを採用しています。「マーベル展」でも、彼らが手がけたカバー・アートをご覧いただくことができます。アメリカで出版された作品たちですが、日本の漫画家さん含め世界中のアーティストに手がけて頂いたものです。

中谷日本の皆さんにも、マーベルに”繋がり”を感じてもらいたいと考えています。でも、なんだか日本人はいつもヤクザとして登場している気がするんですが(笑)。

トム氏アハハハハ(笑)。

言い訳するわけではないんですが…。クリエイターとは自分の知っている世界を描くわけですが、かつてはその”知っている世界”というのが非常に限定的でした。日本に限らず、他国においてステレオタイプが存在していました。世界が近くなり、その国々のことをより正しく知ることができるようになって、正しい表現も可能になっていきました。

中谷では今後、日本出身のヒーローが更に出てくるご予定は?

トム氏:実は新しい「アベンジャーズ」のアニメーションを準備中で、そこでは日本人の新キャラクターも登場する予定です。マーベルも、もっと日本のキャラクターを持ちたいと思っています。よりリアルなものを作るために、日本人のクリエイターが求められているんですよ。なので、そのような(ヘンテコ日本についての)疑問は、まさに我々が改善のために努力を重ねているものです。(注:日本オリジナルTVアニメ「マーベル フューチャー・アベンジャーズ」Dlifeで今夏放送開始、のこと)

中谷日本の業界側からは、何をすべきなのでしょうか?

トム氏一朝一夕に解決するようなものでは無いと思いますが、私たちも状況を打開できるよう努めています。マーベル・コミックの話になりますが、私たちは毎月数多くの試行錯誤を重ねています。その中でも上手くいくものとそうでないものがありますが、上手くいきそうなものは更に進めていっているのです。そのようにして、多くの方に受け入れられるものを作れるように精一杯努力しています。ですから、数年後にまたこうしてお話することがありましたら、「ずいぶん良くなったよね!」と言ってくださいね(笑)。


トム・ブリーヴォート氏は、一つ一つの質問に対し、わかりやすく、確実に答えて下さるところが印象的だった。マーベル・コミックのあらゆる歴史が頭の中に蓄積されており、興味深いエピソードを沢山聞き出すことができた。

トム氏のTwitterアカウントは@TomBrevoort。ちなみに、インタビュー終了のタイミングで、ちょうどスタッフさんが修理を終えた眼鏡を持って現れたのだった。

『マーベル展 時代が創造したヒーローの世界』は、2017年4月7日(金)〜6月25日(日)、六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー(六本木ヒルズ 森タワー52階)にて開催。会期中無休、10時〜22時(最終入場:21時30分)。入場料は一般¥1,800、高校生・大学生¥1,200、4歳〜中学生¥600、シニア(65歳以上)¥1,500。※展望台(屋上スカイデッキは別料金)、森美術館入館料を含む。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly