マーベル、映画とドラマのクロスオーバーを「いつかやる」と明言。今まで実現してこなかった2つの理由とは

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を追いかけている多くのファンが熱望するのは、2008年の『アイアンマン』に始まった映画シリーズと、各放送局・配信サービスで展開されているドラマシリーズのクロスオーバーだ。ドラマシリーズの充実化が進むごとに、“ヒーロー全員集合”を熱望する声は大きくなる一方である。
これまでマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、こうした一大クロスオーバーはタイミングが肝心だと語ってきた。その一方で、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(原題:Avengers: Infinity War)』にドラマのキャラクターが登場する可能性を示唆してもおり、ファンは完全に手のひらで踊らされている状態だ。言い換えれば、マーベルにはぐらかされ続けているのである。
しかし、ついにファイギ社長から言質を取ることに成功したメディアがある。オンライン・メディア「io9」だ。
クロスオーバー「いつかやる」と明言
io9の取材に応じたファイギ社長は、インタビュアーから「テレビに登場したキャラクターは、今後も100%映画には出ないんですか?」というド直球の質問をぶつけられている。これにファイギ社長はこう答えたのだ。
「決してそんなことはないよ。これから未来は長いからね。だから正直に言うと、僕にもそれはわからない。しかし、これまでたくさんのテレビ番組を作ってきたし、うまくいけば我々はたくさんの映画を作り続けるだろう。いつかクロスオーバーをやるつもりだよ。クロスオーバーか、再創造か、何かをね」
奇しくも先日、ファイギ社長はMCUに大きな変化が訪れることを明かしていた。このタイミングで「いつかクロスオーバーをやる」と明言するあたり、すでに何らかの構想が動いている可能性もありそうだ。
もっとも今回の発言によって、おそらく『インフィニティ・ウォー』での“ヒーロー全員集合”の望みは薄いことがうかがえる。この発言がファイギ社長の大掛かりなハッタリで、実は『インフィニティ・ウォー』でのクロスオーバーのために着々と準備が進められている可能性もゼロとは言えないが……。またファイギ社長が「再創造」と述べているあたり、ドラマのキャラクターが映画に登場する際にはリブートが行われる可能性もありそうだ。
いずれにせよマーベル・スタジオは映画とドラマのクロスオーバーを「いつかやる」という。しかし、それではなぜ今まで実現しなかったのか?
映画とドラマ、クロスオーバーできない2つの理由
前述の通り、ファイギ社長は映画とドラマのクロスオーバーにはタイミングが肝心だと話している。しかし“タイミング”とは、決して「いつやるのが面白いかな」程度のふんわりした話ではないようだ。
「映画の製作はとても早くから始まる。だから映画を作りはじめる時には、まだ(ドラマの)多くのことが決まっていないんだよ」
ファイギ社長が明かしているのは、ズバリ映画とドラマの製作スケジュールの違いである。映画を構想するタイミングではドラマの内容が決まっていない、それゆえに映画に登場させようがない、という側面があるのだ。また、映画に登場させるばかりにドラマの内容に制限が生じることもあるという。「(ドラマでやれることを)制限されるべきじゃない」とも述べられているように、ドラマチームの創造性を保障するためにクロスオーバーを避けてきたというのが実情なのかもしれない。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でソニー・ピクチャーズ製作のスパイダーマンを合流させたのとはワケが違うのだ……。
またマーベル・エンターテインメントのテレビ部門を指揮するジェフ・ローブ氏は、テレビと映画では俳優のスケジュールも異なると述べている。
「テレビの世界は恐ろしい速度で動いてるんですよ。(中略)テレビシリーズの撮影が6ヶ月や8ヶ月続くとして、マイク(・コルター/ルーク・ケイジ役)を映画に出すためにはどうすればいいんでしょう? テレビの方に彼が必要なのに」
プロジェクトが動きはじめる時期も違えば、実際の撮影で拘束される期間も違う。この2つのズレが、これまで映画とドラマのクロスオーバーが実現してこなかった大きな理由なのだろう。映画とドラマがお互い内容に干渉しない(もしくは干渉しても問題ない)タイミングで、出演する俳優のスケジュールをきちんと確保できるかどうか……。ファイギ社長の言う“タイミング”とは、実はとても現実的な問題なのである。
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