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【ネタバレ】『トップガン マーヴェリック』の敵が曖昧なのは理由がある

(C) 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

この記事には、『トップガン マーヴェリック』のネタバレが含まれています。

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『トップガン マーヴェリック』なぜ、敵国がどこかを明言しないのか?

『トップガン マーヴェリック』はアメリカ海軍の物語だ。架空の宇宙戦争を描くSF映画ではない。よって、トップガン・パイロットが何かと戦うこととなれば、それは必ず現実に根ざした敵対勢力が相手になるはずである。

しかし『トップガン マーヴェリック』は劇中で、敵国についての詳細を決して掘り下げない。どの国であるかは明言されないし、それが特定できるような国旗が敵機にプリントされているわけでもない。敵パイロットの顔が映ることもない。マーヴェリックたちはただ、「NATO条例に違反した敵国の核兵器プラントを破壊する」というミッションに挑むのみで、そこに政治的な意図をにじませない作りになっている。

敵が危険で邪悪な存在であることを示しておけば、観客が英雄側に感情移入しやすくなるという利点が生まれる。ところが『トップガン マーヴェリック』は敵を見せない。これには確たる理由がある。監督のジョセフ・コシンスキーPodcast番組で、その真意を話している。

「この映画は、競争(コンペティション)映画です。構成としては、どちらかというとスポーツ映画に近いですね。友情や奉仕についての物語なので、地政学のお話ではないんです。

コシンスキー監督は、敵の詳細を明かさない構成は1作目の『トップガン』でも同じだったと振り返る。「1作目は80年代の最中に作られましたが、その時の敵だって、顔も名前も伏せられていましたよね。我々も、マーヴェリックと周囲の関係性を描く、キャラクター中心の物語に集中したかったんですよ」。

物語を「名前も顔もわからない力」との戦いにできたことを、監督は「良かった」と考える。「なぜなら、世界情勢は毎年変化するからです。この映画は2018年に撮影していたのですが、今の世界情勢を予測することなんて出来ませんでした」。

僕はこの映画を、10年後や20年後に観ても変わらずに楽しめる作品にしたかったんです。“2020年代初頭に作られた作品だな”とは感じて欲しくない」と語る監督。『トップガン』がそうであったように、『トップガン マーヴェリック』も、どの時代に鑑賞しても成立する普遍的な物語として描きたかったのだ。

『トップガン マーヴェリック』が公開されたことで、36年前の前作を初めて鑑賞したという若い世代のファンも多いことだろう。これからまた36年後の若者が『トップガン マーヴェリック』を初めて観たとしても、きっと胸を打たれるはずだ。あくまでも時事的な地政学の概念を取り外し、キャラクター重視の物語にしたことも、この映画が“ベスト・オブ・ベスト”になった理由の一つなのだろう。

Source:The Big Picture

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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