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【ネタバレ】『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』ローズの削除シーン判明 ─ 出演めぐる議論勃発、『クレイジー・リッチ!』監督がスピンオフ立候補

The Walt Disney Company/Image Group LA https://www.flickr.com/photos/disneyabc/48613112328/

この記事には、映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のネタバレが含まれています。すでに作品を鑑賞された方向けの内容となりますのでご注意下さい。なお、このページをSNSにてシェア頂く際は、記事内容に触れないようお願い致します。

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け
© 2019 ILM and Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

ローズの登場時間、わずか76秒

『最後のジェダイ』でシリーズに参戦したローズ・ティコはレジスタンスのメカニックで、『最後のジェダイ』の冒頭で姉のペイジ・ティコを失う。劇中では逃げだそうとしたフィンを捕らえたのち、レジスタンスがファースト・オーダーの追跡を受けるさなか、敵艦の内部にある装置を止めるための作戦に参加するのだ。

ローズ役を演じたのは、ベトナム人の両親を持つ女優ケリー・マリー・トラン。有色人種の、またアジア系のルーツを持つ女優が主要人物のひとりを演じるのは、『スター・ウォーズ』シリーズ史上はじめてとなった。ところが映画の公開後、ローズというキャラクターと、ケリー本人には激しい批判が寄せられた。SNS上では作品の内容のみならず、ケリーのアイデンティティや容姿に対する差別発言や攻撃が繰り返され、ケリーはInstagramの投稿をすべて削除し、使用を中止するに至っている。

では、こうした出来事を受けて、『スカイウォーカーの夜明け』ではローズをどのように扱ったか。結論から言えば、『最後のジェダイ』での役割とはうってかわって、本作では完全なる脇役の一人となっている。映画冒頭ではフィンに言葉を交わすものの、そこでは今回のミッションには参加しないことが語られ、その後はレジスタンスの基地の場面やクライマックスの戦闘に登場するのみなのだ。

Slateの調査によれば、『スカイウォーカーの夜明け』(本編2時間22分)におけるローズの登場時間はおよそ76秒。『最後のジェダイ』(本編2時間32分)では約10分53秒だったというから、出番の激減ぶりは一目瞭然だろう。なにしろ、『最後のジェダイ』冒頭だけに登場した姉ペイジ・ティコの出番とほぼ変わらないというのである。

ケリー・マリー・トラン ライアン・ジョンソン
Disney/Image Group LA https://www.flickr.com/photos/disneyabc/35559685240/

『スカイウォーカーの夜明け』におけるローズの扱いは、現地メディアでは“ローズの不在”と語られた。たとえば米Nerdistは、同じくファンの批判を受けたキャラクターの名を挙げて「『エピソード2/クローンの攻撃』(2002)でジャー・ジャー・ビンクスが受けた以上の敬意なき扱い」と記している。脚本・監督のJ・J・エイブラムスは、『最後のジェダイ』のローズを「とても素晴らしかった」と称賛したが、その言葉と実際の扱いは釣り合わなかった。

もちろん劇映画の場合、必要なストーリーに応じてキャラクターの出番が調整されるのが常であり、『スカイウォーカーの夜明け』におけるローズの出番はそれに即していたとも言えよう。しかし『スター・ウォーズ』をはじめとするハリウッドの超大作映画は、それが全世界で公開されるという規模の大きさ、また商業性と芸術性の両立という面において、全世界の観客にいかなるメッセージを発信するかという観点を抜きには語れない。そういう意味で、ローズの出番激減には「ケリーへの差別発言や攻撃を事実上正当化してしまった」という問題が生じてくる。

また、公開前に行われた米Entertainment Weeklyのインタビューからは、ローズの登場シーンがカットされたことも判明している。おそらくレジスタンスの基地でだろう、レイとローズが言葉を交わすシーンが撮影されていたというのだ。ソフト化の暁には、その様子も観ることができるのだろうか……。

「(今回は)みんなで共演できたのが本当に良かったと思います。『最後のジェダイ』ではみんなが同じシーンに出ることはなかったから。セットに女性のエネルギーが満ちていたのもすごく良かったですよ。もっと言えればいいんですが…(ローズとレイが)関わるところを見てもらえるのがとても楽しみなんです。彼女たちには同じ目的があって、信じるもの、愛するもののために戦っていますから。」

なお、こうした状況を受けて、ひとりの映画監督がローズ・ティコのスピンオフ製作に名乗りをあげている。『クレイジー・リッチ!』(2018)が米国で大ヒットを記録したジョン・M・チュウだ。「よし、Disney+。僕にコーチをやらせてください、このシリーズを実現しましょう」とのメッセージには、「ローズ・ティコはもっと良い扱いをされていい」とのハッシュタグが添えられた。

チュウ監督は現在、最新作となるミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』(2020年夏)の仕上げ作業まっただなか。『クレイジー・リッチ!』大ヒットの後押しや、原作舞台の人気もあってだろうか、同作は米国で2020年の注目作として早くも熱い視線を注がれている。ともあれチュウ監督がローズのスピンオフを手がければ、きっと見ごたえのあるシリーズになるはず。さて、ディズニー/ルーカスフィルムはローズの物語を『スカイウォーカーの夜明け』で終わらせるのか、それとも。

映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は2019年12月20日(金)より公開中

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Sources: Slate, Entertainment Weekly, Nerdist, Jon M. Chu, IndieWire

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。