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『スパイダーマン』監督、MCU版『ファンタスティック・フォー』降板理由は「燃え尽きていた」から ─ 「なにかを間違えれば、本当に人が死ぬかもしれなかったから」

ジョン・ワッツ
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/28545872452

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』で監督を務める予定だった『スパイダーマン』シリーズのジョン・ワッツが、やむなく降板に至った理由を明かした。

MCU版『ファンタスティック・フォー』は2020年12月に製作が正式発表され、ワッツ監督の就任が決定していた。ところが、2022年4月に「スーパーヒーロー・ジャンルからいったん距離を置くため」という理由で離脱。創造性の違いや製作トラブルではなく、あくまでも友好的な離脱だと伝えられた。

2025年6月26日、マルタ地中海映画祭に登場したワッツ監督は、当時の自分自身が「燃え尽きていた」ことを明かしている。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)をコロナ禍で製作したことが最大の理由だ。

「本当に大変でした。あの経験の困難さは誰もが覚えています。私たちは幸い、多くの人が働いてくれましたが、コロナ対策を徹底しながらクリエイティブな作品を創り、かつキャストとスタッフの安全を確保しなければならないことの精神的重圧はとても大きかったんです。なにかを間違えれば、本当に人が死ぬかもしれなかったから。」

また、ポストプロダクション(撮影後作業)も過酷をきわめたという。大作スーパーヒーロー映画のVFX作業には世界の制作会社が関わるが、コロナ禍のために通常通りの連携がとれず、「従来と同じやりかたで完成させるのが本当に困難だった」というのだ。

しかも『ファンタスティック・フォー』の準備は、さらにそれ以前の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)が完成したあとから動き出していたという。『ノー・ウェイ・ホーム』の完成後、すぐにワッツは『ファンタスティック・フォー』の脚本作業に参加しなければならなかったが、そこで自分が「燃え尽きて」いることを自覚したそうだ。

「大作映画を手がけるうえ、コロナ禍の影響があったので、その映画(『ファンタスティック・フォー』)を素晴らしい作品にするためのエネルギーが僕にはありませんでした。とにかく力尽きていたので、回復の時間を取らなければいけなかったんです。マーベルの皆さんはよく理解してくださいました。同じ経験をしていたので、どれだけ過酷で、人を消耗させるものかを知っていたんです。」

こうしてワッツはスーパーヒーロー映画を離れ、ブラッド・ピット&ジョージ・クルーニー主演『ウルフズ』(2024)を手がけた。自身の判断について、「最終的にはとても満足しています。最高の映画を作るのに必要な状態でいられないのなら、やらない方が良いと思うから」と語っている。

その後、マーベル・スタジオは新監督に「ワンダヴィジョン」(2021)のマット・シャックマンを迎え、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』を完成させた。ワッツは映画を観ておらず、具体的な内容は知らないというが、「僕たちが最初に考えたストーリーにかなり近いと思う」と明かしている。

「もちろん映画は長い時間をかけて進化し、発展していくものですが、メインヴィランや基本的な流れ、テーマ、60年代風のルックもそう。シド・ミードのレトロ・フューチャリズム的な『ファンタスティック・フォー』は最高だろうと思っていました。だから、そこが残っていて本当にうれしいです。」

今は、完成版を観るのを「楽しみにしている」というワッツ。「あの映画を観るのは、とても不思議な体験になると思いますね」と語った。

映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は2025年7月25日(金)日米同時公開。

Source: The Hollywood Reporter, Chris Gardner

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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