『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』ハン・ソロの展開を決めたのは誰?ディズニー会長、「攻め」の映画製作を語る

映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)は、シリーズ32年ぶりの“続編”にして、『スター・ウォーズ』を追いかけてきた数多くのファンに衝撃を与えた。『スター・ウォーズ』なるものに敬意を払いながらも大胆な選択を厭わなかったストーリーは、劇場公開当時、確かに物議を醸したのである。
このたびウォルト・ディズニー・カンパニーの会長兼CEOであるボブ・アイガー氏が、米Vanity Fair誌のトークイベントにて自身の映画づくりの理念を明かした。そこでは『フォースの覚醒』にもみられた「攻め」の姿勢の理由や、決断が下された経緯も語られていたのである。
大切なのは“伝統と革新のバランス”
イベントでボブ・アイガー氏の聞き手を務めたのは、Vanity Fair誌の特派員であるニック・ビルトン氏。約30分にわたるトークの終盤で話題になったのは、ディズニー傘下で新たな道のりを歩み始めた『スター・ウォーズ』の裏側だった。
幼少期から『スター・ウォーズ』の大ファンだったというニック氏は、いまや「よく知っているキャラクターが死んでしまわないかと心配」しているという。それもそのはず、前作『フォースの覚醒』のクライマックスで、ハン・ソロ(ハリソン・フォード)は息子のカイロ・レンに刺されて暗い闇へと落ちていったのだ。
アイガー氏にとって、またウォルト・ディズニー・カンパニーにとって、『フォースの覚醒』は同社がルーカスフィルムを買収してから初めての『スター・ウォーズ』だ。製作にあたり、脚本・監督のJ.J.エイブラムスとアイガー氏らは慎重に議論を重ねたという。もちろん、ハン・ソロの運命についても……。
「ハン・ソロについてはかなり話し合いました。愛されているキャラクターですし、死ぬべきなのかどうか、殺してしまうべきなのか?って。最終的に決断を下したのはキャスリーン・ケネディ(編注:ルーカスフィルム社長)とJ.J.エイブラムスでした。私も関わっています。ストーリーの他の要素とバランスを取りつつ、インパクトを与えたかったんです。」
そうしたクリエイティブな決断について、アイガー氏は「重圧、責任を感じる」と述べている。ディズニー映画や『スター・ウォーズ』、マーベル作品を一手に担うということは、数多ある作品を愛してやまないファンからの視線をすべて受け止めるということなのだ。
「『スター・ウォーズ』やマーベル、ディズニーについては本当にたくさんのことを考えます。信じられないくらい献身的、かつ複雑なファンの基盤があるんですよ。私たちの描くストーリーの、あらゆるニュアンスに熱狂する人たちです。彼らのことを考えますね。」
こう言いながら、それでもディズニー/ルーカスフィルムはハン・ソロを死なせることにした。素直に“ファンのことを考える”なら、それほどリスキーな選択はなかったのではないだろうか……。しかしそこには、アイガー氏のディズニーという会社や作品に対する理念があったのである。
「どれくらい伝統や遺産とのバランスを取るのか、どれくらい新しいものを取り入れるのか、ということには大きく議論します。実際、社内ではそういう話し合いをたくさんしているんですよ。ディズニーの伝統はとても強い力をもっていますが、会社を前進させること、未来だけでなく現在へと向かうことを忘れてはいけません。
世界はウォルト(・ディズニー)が創業した1923年や、ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』を作った1977年の当時とはまるで別物です。だから伝統について考えなければならないんです。敬意を払うべきものですし、また期待されるものですから。でも私たちは、新しいこともやらなきゃいけないんですよ。」
たとえば人気アニメーション作品の実写化や、『スター・ウォーズ』の続編やスピンオフ、そして広がりつづけるマーベル・シネマティック・ユニバース。ディズニーの仕掛ける「攻めの姿勢」を、きっと私たちはこれからも様々な映画やテレビ、あるいはテーマパークなどを通じて感じ取ることになるだろう。
シリーズ最新作、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は2017年12月15日より全国ロードショー。
ハン・ソロが退場するほどのサプライズが待っているのか、あるいは別の形で新しい仕掛けがなされているのか。どんな“伝統と革新のバランス”を観ることができるのか、もうしばらく楽しみに待つことにしよう。
Source: http://video.vanityfair.com/watch/the-new-establishment-summit-what-took-bob-iger-and-disney-so-long-to-get-into-the-streaming-game
©Twentieth Century-Fox Film Corporation Photographer: John Jay 写真:ゼータ イメージ