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SF超大作『デューン』監督、2部作にこだわった理由「1本限りなら引き受けなかった」 ─ 主演ティモシー・シャラメ、美しく過酷な撮影語る

ティモシー・シャラメ ドゥニ・ヴィルヌーヴ
[左]Photo by Elena Ringo http://www.elena-ringo.com [右]Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/35397143143/ Remixed by THE RIVER

2020年12月に米国公開される、SF超大作『デューン(原題:Dune)』。これまで幾度となく映像化や翻案が試みられてきた傑作小説『デューン/砂の惑星』(ハヤカワ文庫SF刊)に挑むのは、『メッセージ』(2016)『ブレードランナー 2049』(2017)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だ。自身の手で映画化するにあたり、監督は“絶対に2部作でなければならない”という姿勢をワーナー・ブラザース側に示したという。

作家フランク・ハーバートが1965年に発表した『デューン/砂の惑星』は、『スター・ウォーズ』『エイリアン』シリーズや「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011-2019)など、数多のSF/ファンタジー作品に大きな影響を与えてきた。しかし、複雑かつ難解な原作を映像化する試みは、従来にも厳しい苦難をたどってきた。1984年にデヴィッド・リンチが手がけた同名映画は批評的に苦戦し、過去にはアレハンドロ・ホドロフスキーが映画化に挑むも断念。2000年のテレビドラマ版も、映像化の決定版として歴史に刻まれるものとはなっていない。

そんな“魔の原作”に挑むため、監督が求めたのが2部作という条件だった。すなわち、最初に発表される作品は物語の前半部分にすぎないのだ。2部作構想はスタジオやクリエイターにリスクを課すものだが、それでもヴィルヌーヴは「一本だけという条件なら引き受けなかった」と米Vanity Fairにて語っている。「物語の世界は非常に複雑だし、その細部にこそ力が宿っていますからね」

舞台は、貴重なスパイス「メランジ」が唯一産出される砂漠の惑星・アラキス。貴族たちが統治をめぐって争うアラキスを治めるのは、主人公ポール・アトレイデスの父親レト公爵だ。しかしレトは敵対するハルコネン家の陰謀で命を落とし、ポールは砂漠の荒地へと逃亡する。自らをメシアと信じる民族の指導者として、ポールは帝国の転覆、アトレイデス家の再興を目指すのだ。その過程で、彼は自分に秘められた力に目覚めていく……。

この物語を、ヴィルヌーヴは単なる“宇宙冒険モノ”ではなく、一種の“預言書”として解釈している。

「地球は変化していて、我々は適応しなくてはいけません。私は20世紀に書かれた『デューン』を、石油や資本主義、過剰開発の現実を比喩的に描いたものだと捉えました。現在、状況は当時よりも悪化しています。これは成長の物語であり、若い方々に行動を呼びかける物語でもあるのです。政治や宗教、エコロジー、霊性をたくさんのキャラクターで描いた小説です。だから難しいんです。今までに手がけた中でも、ずば抜けて難しい作品だと思います。」

むろん、テーマのスケールだけでなく、世界観のスケールも段違いだ。砂漠の惑星アラキスをカメラに捉えるため、撮影チームはヨルダンやアラブ首長国連邦の首都アブダビでロケを敢行。ポール役で主演を務めるティモシー・シャラメは、ヨルダンで日が昇る時間に撮影したことを振り返り、「まるで夢みたいでした。宇宙のどこかにこんな星があるのかもとは想像するけど、まさか地球にあったなんて」とコメントしている。

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その一方、アブダビでの撮影は過酷をきわめた。ティモシーいわく「午前2時でも外の気温は37度くらい。撮影中は50度近くまで上がることもありました」。ポールや兵士たちは、劇中で“スティルスーツ”と呼ばれる装備を身につけており、これは人間の水分を保つ生命維持機能を有する設定だが、現実の猛暑でスーツを着用する俳優陣には地獄だったという。しかし過酷な環境は、『デューン』の物語を演じる説得力を高める効果もあったらしい。ティモシーは「とても現実的に、スーツを着ること、それほど疲れ切っていたことは(演技に)役立ちました」とも語っているのである。

なお本作には、ハリウッドを代表する超豪華キャストが集結。ポールの父デューク・レト役をオスカー・アイザック、母レディ・ジェシカ役をレベッカ・ファーガソン、剣士ダンカン・アイダホ役をジェイソン・モモア、老兵ガーニー・ハレック役をジョシュ・ブローリン、原住民フレーメンの族長スティルガー役をハビエル・バルデム、ハルコネン家のバロン・ウラディミール男爵をステラン・スカルスガルド、同じくハルコネン家の邪悪な甥グロス・ラバン役をデイヴ・バウティスタ、謎の女性チャニをゼンデイヤ、聖なる意志で人々を操るマザー・モヒアムをシャーロット・ランプリングが演じる。脚本は『ミュンヘン』(2005)のエリック・ロス、『ドクター・ストレンジ』(2016)のジョン・スペイツ、ヴィルヌーヴ監督が共同執筆した。

映画『デューン(原題:Dune)』は2020年12月18日に米国公開予定

登場人物の設定紹介はこちら

Source: Vanity Fair

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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