なぜ『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』1作目はヒットしたのか?6つの理由から考える

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』の公開をひかえ、第一作目の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』について振り返ってみたい。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(GOTG)は、今でこそディズニーの「マーベルツムツム」でもキャラクターとして取り上げられたり、米ディズニーランドでアトラクションも作られるなど、マーベルキャラクターでも有数の知名度を誇るが、映画一作目が公開される前はそうではなかった。
実は、GOTGはマーベル世界ではレギュラー誌が短期間だけ連載されていたようなマイナーチームであった。スターロードやロケットがメンバーとなったGOTGの発足は2008年と歴史的にも浅く、現在でこそアイアンマンなどのキャラクターもメンバーになったりしているが、当時はキャプテン・アメリカやスパイダーマンなどのメジャーキャラクターが所属したこともなかったのだ。すでに映画化されているスパイダーマンやX-メン、アベンジャーズのメンバーはいずれもレギュラー誌を長年リリースしているキャラクターゆえに、原作ファンの中には「なぜこの作品が映画化されるのか」という疑問を持った者も多かったほどである。そんなチームをフィーチャーした『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が大ヒットした理由を考えてみよう。
①公開時期、そして新シリーズであること
アメリカで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』が公開されたのは2014年の夏であった。ちょうどこの時期は、集客を奪い合うライバルとなる“家族で観られる映画”がたまたま少なく、客の流れが自然とこの映画に向いたものと推察される。アメリカ発の青春ドラマの多くで映画デートの場面が見られるように、言わずもがな映画の本場はアメリカだ。アメリカでライバル映画がないことは、ヒット作を生む手助けとなるのである。
またマーベル・シネマティック・ユニバース全体から見ても、映画『アベンジャーズ』のあと“フェイズ2”に入り、『アイアンマン3』『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』『キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー』とシリーズの続編が続いていた。新たな観客がMCU作品に入るには少し抵抗があったのも事実であろう。そこでマーベル・シネマティック・ユニバースに属していながら、独立したストーリー展開や設定をもっていた本作は新規の観客が気軽に観ることができたのではないだろうか。結果として『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は全世界で約7億7,300万ドルの収益となった。『キャプテン・アメリカ/ウインター・ソルジャー』の約7億1,400万ドルを超える成績には驚かされる。
②全編を彩る“懐かしのミュージック”
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の公開当時、日本でもCMで「ウガチャカ、ウガウガ♪」と流れていたように本作では古い時代の音楽が劇中で効果的に多用されている。映画を見た人間ならサウンドトラックを買いたくなることは間違いない。
本作で音楽は映画のストーリーに密接に関わっていた。主人公のスターロードは母親の死の間際に、母親からもらったカセットを大事にしていて、序盤のシーンを筆頭に、カセットテープとヘッドフォンを常に持ち歩いている。クライマックスでロナンを倒す場面でも“O-o-h Child”が重要な役割を果たしていた。また、エンディングの“I Want You Back”は第2作を暗示しているようでもあるだろう。このように曲のタイトルや歌詞が内容と連動するよう工夫されていた点も、観客の心を惹きつけた要因の一つだと考えられる。たとえば音楽がすべて歌詞のない劇伴音楽だったとしたら、この映画は全く異なる印象になっていたことは誰にでも想像できるはずだ。
なお余談だが、この映画でスターロードは無類の音楽好きとして描かれているが、原作のスターロードはコーヒーの愛飲家として知られている。この設定は映画には引き継がれていないが……ただコーヒーを飲んでいても、映画では地味な印象になることは容易に想像できる。
③豊かな出演者の存在感
モーション・キャプチャーやCGで描かれたロケットやグルートも声優陣は大変豪華なメンバーである。ロケットの声は人気俳優のブラッドリー・クーパーであり、グルートの声はヴィン・ディーゼルだ。
ブラッドリー・クーパーは『ハングオーバー』シリーズや『特攻野郎Aチーム』など多くの映画で主人公の一人を演じ、ヴィン・ディーゼルも『ワイルド・スピード』シリーズや『トリプルX』シリーズなどでおなじみの俳優だ。それぞれが映画で主役を張れる顔ぶれ、十分な集客力を持つ二人が声優のみを務めるとは、なんとももったいない配役である。ヴィン・ディーゼルにいたっては“I am Groot”と言いつづけるだけなんて……。