クエンティン・タランティーノがマーベル映画、DC映画を撮らない理由

近年、多くの映画監督や俳優のインタビューでは「スーパーヒーロー映画を監督したいか、出演したいか」がしばしば話題に上がる。ジェームズ・キャメロンはその可能性を否定し、ジュリア・ロバーツは「素晴らしいことじゃない?」と意欲を示しているが、クエンティン・タランティーノもまた否定派の一人のようだ。米Los Angeles Timesのインタビューで明かしている。
上梓したばかりの著書「Cinema Speculation(原題)」で、タランティーノは映画批評や映画論、そして自らの歴史を綴った。今回の取材にて、現在のスーパーヒーロー映画の人気については「60年代の反権力的な監督たちは、大手スタジオのミュージカル映画が支持を失ったことを嬉しがっていました。(今の映画監督も)スーパーヒーロー映画について同じことを言える日を待ちきれずにいます」と持論を述べている。
タランティーノいわく、当時のミュージカル映画と、現在のスーパーヒーロー映画は、業界を「同じような技で押さえ込んでいる」。だからこそ同じことが同じことが起こるはずだ、というのだ。
また、なぜこれまでマーベル映画やDC映画の監督として名乗り上げなかったのかとインタビュアーが尋ねると、「(スーパーヒーロー映画を撮るには)雇われの身にならなければいけないでしょう」と一言。「私は雇われの身ではありません。仕事を探しているわけではないのです」と自身のスタンスを強調した。
ちなみに、そんなタランティーノも14歳で『スター・ウォーズ』に魅せられた過去がある。ただし、「Cinema Speculation」には『スター・ウォーズ』に言及されている箇所はほとんどないそうだ。
「もちろん『スター・ウォーズ』は好きでしたよ。好きじゃない人なんていないでしょう? [中略](けれども)あの作品は、私が大好きなタイプの映画ではないのです。結局のところ、私は『未知との遭遇』のほうが好み。よりアイデアが大きいし、スピルバーグはシネフィルではなく普通の人が理解できるような壮大な物語を創り出しました。『未知との遭遇』のようなクライマックスはそれまでにほとんどありませんでした。それが観客を本当に感動させたんです。」
初の長編映画『レザボア・ドッグス』(1992)以来、革新的なストーリーテリングや魅力的なキャスティング、そして映画愛に溢れる傑出した作品群を世に送り出してきたタランティーノ。かねてより長編映画の10作目で映画監督を引退すると公言しており、大ヒットを博した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)は9作目だ。企画が上がっていた『スター・トレック』新作映画の監督も離脱したことを公表しているため、引退作はもう少し先となるものと見られている。
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Source: Los Angeles Times