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【ネタバレ考察】『ワンダーウーマン 1984』に見るディストピア小説『1984年』─ マックスへのビッグブラザー投影、結末分かつダイアナの存在

ワンダーウーマン 1984
(c) 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

DC映画『ワンダーウーマン 1984』は、タイトルにある通り1984年のアメリカを描いた1作。“1984”という数字から想起させられるものとして挙げられるのが、21世紀に入って再び読み直されているディストピア小説『1984年』だ。同書は1949年、『カタロニア讃歌』(1938)『動物農場』(1945)などの傑作を生み出した英国出身の作家ジョージ・オーウェルが、結核に苦しみながら完成させた遺作として知られている。

本作のタイトルが発表された2018年以降、数々のメディア(特に欧米圏)が、副題にある“1984”とオーウェルの『1984年』の関連性を予想してきた。実際に作品を観ると、同書で描かれる内容や同書内のキャラクターを彷彿とさせる描写が確かに見られる。中でも、『1984年』に登場する悪役ビッグブラザーと、ビッグブラザーが社会を支配するために用いるテレビ兼監視デバイス「テレスクリーン」を思わせる描写を捉えたシーンが本作に登場するのだ。

この記事には、映画『ワンダーウーマン 1984』のネタバレが含まれています。

ワンダーウーマン 1984
(c) 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

その場面とは本編終盤、願いを口にすれば“代償”と引き換えに夢が叶う「夢の石(ドリーム・ストーン)」と一体化したマックスが、放送局を占拠し、全世界の人間に「夢を唱えよ」と促すシーンだ。1949年のオーウェルが、テレビのようなスクリーン・デバイスの発達を1984年の世界にどこまで予想していたのかは、まさに“オーウェルのみぞ知る”だが、この場面では世界中の家々に備えられたテレビを通して、マックスの姿と命令が同時かつ瞬時に流される。

この無数に存在するテレビと暴走したマックスの描写こそ、社会を統制するためのテレスクリーンと一党独裁社会を築きあげるビッグブラザーを彷彿とさせるのだ。テレスクリーンには、「二分間憎悪」と呼ばれるチャンネルが存在する。“洗脳”によって、ビッグブラザーにとっての敵として描かれる反体制分子エマニュエル・ゴールドスタインへの憎悪の感情を、人民に起こさせる目的で放送されているものだ。

劇中ではマックスにそそのかされた世界中の人間が、自我を失ったかのような、洗脳されたような姿で夢を口にする。最終的に、マックスが“願いを取り消す”と撤回したことで、夢の石は効力を失い、世界中の人々は悪夢から目を覚ますのだが…。こうして、ワンダーウーマンの存在によって世界は“支配”から救われることになる。

かたや『1984年』では、ワンダーウーマンほどヒーロー然でないこそあれ、悪に満ちた世界に抗おうとする主人公の男ウィンストンが、拷問によってその信念を打ち砕かれてしまう。ここが、『ワンダーウーマン 1984』と『1984年』の結末に関する決定的な違いなのだが、仮にマックスがあのまま暴走していたら…?ワンダーウーマンの行動が一歩でも間違っていたら…?と考えると、この2つの作品は紙一重なのだろう。

映画『ワンダーウーマン 1984』は2020年12月18日(金)より全国公開中。

Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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