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THE RIVER編集部メンバーの2023年べスト3作、「本当に良かった」作品を本音で厳選

2023年に日本で公開・配信された洋画や海外ドラマの中から、THE RIVER編集部メンバーが「本当に良かった」私的3作を本音で選出。コメントともに紹介する。

※掲載順はランキング形式ではありません。

稲垣貴俊が選ぶ 2023年ベスト3作

映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
(c) Marvel Studios 2023

THE RIVER向けに「今年の3本」を考えるなら、ジェームズ・ガンのマーベル・シネマティック・ユニバースへの置き土産である本作をまずは選ぶほかありません。世界中で愛された人気シリーズの完結編を、エンターテインメントとして大いに盛り上げ、これ以上ありえないほど見事な結末に導いただけでなく、監督としての原点に回帰するような暴力描写とユーモアを織り交ぜることで、この世界の美しさと汚さを「ならず者たちの物語」ならではのやり方で肯定してみせた手腕は圧倒的でした。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』も同様にすばらしい作品だったので悩みましたが、後編『ビヨンド・ザ・スパイダーバース』を観るまではいったん保留です。

映画『バビロン』

バビロン
(C) 2022 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

2022年製作ですが、日本公開は2023年2月なので今年のベストに選びました。『セッション』(2014)『ラ・ラ・ランド』(2016)のデイミアン・チャゼル監督、ブラッド・ピット&マーゴット・ロビー主演とあって大いに期待され、しかし本国ではかなり不評でしたが、独自の解釈と想像力をもって私見の映画史をスクリーンに叩きつける蛮勇、どこへ連れて行かれるかわからないジェットコースターぶり(終着点もすごい)、狂騒と静寂のコントラスト、そして主演ふたりの名演など、個人的には忘れられない一本になりました。ジャスティン・ハーウィッツの音楽もすこぶる良い……のですが、やはりチャゼル作品の核心は「静けさ」なのだと再認識した作品でもあります。

映画『search/#サーチ2』

search/#サーチ2

3本目は「意外と忘れられていそうな名作」にしたく、『search/#サーチ2』を選びました。「全編PC画面」というコンセプトを前作以上に洗練した、抜群のリアリティとストーリーテリングによる極上のサスペンス。画面と台詞の両方にすさまじい情報量を詰め込み、現代ならではのスピード感あふれる(速すぎるほどの)映像感覚で一気に見せていく脚本・演出・編集で、前作を軽く超える完成度でした。
そのほか、今年はFBIの尋問記録を完全再現した『リアリティ』、日本では配信スルーの実話映画『ブラックベリー』なども印象深かったです。アジア映画も良い作品が多い年でした。正直に言うと、今年のベスト1は『オッペンハイマー』ですが、これは1年後のベストに入れるつもりです。日本公開、ご期待ください!

SAWADYが選ぶ 2023年ベスト3作

映画『マエストロ: その音楽と愛と』

『アリー/スター誕生』(2018)のブラッドリー・クーパー監督、主演、共同脚本。ユダヤ系アメリカ人の指揮者レナード・バーンスタイン激動の半生を綴った1作だ。老年期のレナードによる回想を通じて、病により先立った妻・フェリシアとの波乱に満ちたラブストーリーが描かれる。“レス・イズ・モア”が極められた物語は、モノクロとカラーの使い分けを駆使しながら、諸行無常な愛を映し出す。特筆すべきは、劇中後半に訪れるフェリシア役キャリー・マリガンによる迫真の演技。レナードの同性愛指向を察しながらも寡黙に愛し続けたフェリシアの力強さは、マリガンにしか引き出せないものだったのではないか。また、僅か6分間の指揮を6年間練習したというレナード役のクーパーの力強いパフォーマンスも圧倒的。自由自在なカメラワークも秀逸だ。可能な限り没入できる環境での鑑賞をおすすめしたい。

映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース (パート1)
©2021 CTMG. © & ™ 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

マイルズ・モラレスを主人公とする映画『スパイダーバース』シリーズ第2章。前作で叔父を失ったマイルズは、「大いなる力には大いなる責任が伴う」状況に再び直面していくことなる。劇中では計280人以上のスパイダーマンが大集合。ミゲル・オハラ/スパイダーマン2099が創設した「スパイダー・ソサエティ」での追いかけっこは、最高のスペクタクルだ。「アニメーションの新境地を開拓し続ける」という製作陣の気概はシーン一つひとつに散りばめられ、思いがけない実写パートも登場。物語は「ここで終わるのはあまりにも酷」と思わざる得ない“ズルい”クリフハンガーで締め括られた。とにかく続編『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』が待ちきれない。

ドラマ「一流シェフのファミリーレストラン」シーズン2

一流シェフのファミリーレストラン
© 2023 Disney and its related entities

兄の突然の死により、レストランを継ぐことになった一流シェフの奮闘を描くコメディシリーズ。レストランの運営どころではない厨房裏でのドタバタを切り取ったシーズン1のアドレナリン量を、シーズン2は優に超えてきた。美味しいご飯をただ作りたいだけなのに、次から次へと問題が発生。厨房はストレスの掃き溜めと化し、料理も全然楽しくなんかない。それでも続けるのはなぜなのか。あまりの滑稽さに物語は喜劇として昇華されている部分もあるが、実世界の核心を突いてもいるドラマだ。疲労困憊という時にこそ全身を委ねて観たくなる1作。シーズン2のほとんどがレストランの建て直しで終わったが、主演のジェレミー・アレン・ホワイトによれば、シーズン3では「機能的なキッチン」が見られるとか。心のどこかで、また何か問題が起きてくれないかと期待してしまう自分を抑えつつ、次のシーズンを楽しみに待ちたい。

中谷直登が選ぶ 2023年ベスト3作

ドラマ「スター・ウォーズ:アソーカ」

アソーカ
©2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

「マンダロリアン」に続き、スター・ウォーズ熱を再燃させてくれた良作。大型LEDスクリーン「StageCraft」を活用して撮影された、真実味ある映像が素晴らしい。
離れ離れになった旧友との再会や捜索、別の銀河への冒険を描く。「クローン・ウォーズ」や「反乱者たち」の続編でありながら、予習必須の作りにせず、誰でも楽しめるようキャラクターを描き直している。ジェダイの騎士として全盛期のアナキン・スカイウォーカーの実写登場は感涙もの。スター・ウォーズの醍醐味を思う存分描きつつ、神秘的な描写も興味深い。「マンダロリアン」とはまた違ったライトセーバー戦は映画級の迫力。イヴァンナ・ザクノが演じた若き傭兵シン・ハティは今後が最も楽しみな新キャラクターのひとりとなった。
製作のデイヴ・フィローニは本作の後にルーカスフィルムのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに昇格。彼がいれば銀河は安泰ではないか?そう確信させるほどの仕上がりとなったシリーズ。

映画『AIR/エアー』

AIR/エア
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

仕事を頑張りたい?じゃあコレ観よう。かつてナイキがいかにしてマイケル・ジョーダン家を口説いて「エア ジョーダン」を世に放ったかを描く実話モノ。スニーカーやバスケにほとんど関心はないが、池井戸潤的お仕事ドラマとして大いに勇気をもらった一作。主人公のソニーは大企業ナイキにて社内調整などにも翻弄されつつ、社内ベンチャー的な単独行動を主とする。企業人から個人事業主まであらゆる社会人が自分の仕事観を投影できる。
若きマイケル・ジョーダンというブランドにおける「決済者」である、彼のお母ちゃんに狙いを定めてソニーが単独アポなし交渉に訪れるシーンは全社会人必見だ。その場限りのお世辞ではなく、後々効いてくる時限爆弾的セールストーク!全編を通して、弱小劣勢の立場ながら相手の心を鷲掴みにしたソニーの逆転話術と交渉術は、下手なビジネス書を数冊読むより腹落ちする。仕事始めまでに鑑賞すれば、新年の業務の活力に。関連書『SHOE DOG』もオススメ。

映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

Killers of the Flower Moon
画像提供 Apple

見応えある映画とはまさにこのこと。3時間26分。“タイパ”至上主義に対して、上質な映画をじっくり鑑賞することは贅沢な悦びなのだと思い知らせる一作。石油採掘によって民族まるごと大金持ちになったオセージ族から財産をしゃぶり尽くそうとする悪い白人の興隆と凋落、その罪と罰。人類史上、類を見ない卑劣な組織的連続殺人ながら、忘れ去られていた悲劇のオモテとウラを、マーティン・スコセッシが3時間半かけてトロ火でじわじわ熱する炙り出し巨編。引き込まれるストーリーテリング、情緒的な絵作りから一転、裁判の場面に移るや否や怒涛の転調。最近は妙に哀れな男の演技が板に付いた主演レオナルド・ディカプリオの揺らぎ、黒幕ロバート・デ・ニーロの抗い難い凄み、妻モリー役リリー・グラッドストーンの森のように深奥な眼差し。ラストショットに込めたスコセッシの格別な想いを受け止めたい。


THE RIVERでは、読者のみんなで選ぶベストランキング「THE RIVER AWARD 2023」も12月31日よる7時に掲載。こちらもお楽しみに。

2024年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

THE RIVER AWARD 2023 結果発表〜!

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