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「サプライズやマルチバースだけで観客の興味は続かない」『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の「スーパーヒーロー映画疲れ」克服戦略とは

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
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映画スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースは、アカデミー賞に輝いた『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)の待望の続編。しかし、この5年間で映画界は大きく変わった。前作当時は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)などスーパーヒーロー映画の絶頂期だったが、今ではしばしば「スーパーヒーロー映画疲れ」の声が聞かれる。

おまけに、「マルチバース」というコンセプトも(5年前とは異なり)おなじみとなった。マーベル・シネマティック・ユニバースは“マルチバース・サーガ”に突入し、A24製作のマルチバース映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)はアカデミー賞の作品賞ほか7部門を受賞。日本では本作と同じ6月16日(金)に公開されるDC映画『ザ・フラッシュ』もマルチバース映画だ。

では、製作陣はこの状況にどう挑んだのか。脚本・製作のフィル・ロード&クリス・ミラーは、米Rolling Stoneにて自身の現状認識を語った。ロードは、「(スーパーヒーロー映画の)イースターエッグやサプライズ、あるいは巨大でクレイジーなマルチバースの仕掛けでさえ、観客に興味を持たせ続けられない」と言い切る。同じく、ミラーも「現時点では(観客に)“マルチバースって面白いよね”と思われる状況にはない」と述べた。

ミラー「どれだけうわべを飾ったところで、結局大切なのは、親しみを持てるエモーショナルなストーリーです。特に重要なのが人間関係。だからこそ、“世界が複数あることなんて誰も気にかけない。リアルで人間味のある作品をつくらなければ”ということに集中しました。それから、“僕たちのマルチバースを、他の作品とは異なるように感じてもらうにはどうすれば?”と。」

そこで『アクロス・ザ・スパイダーバース』では、劇中のユニバースごとにアニメーションのスタイルやルックを変える手法を取り入れた。ミラーは「これこそ他のマルチバース作品にはできないこと。マルチバースのコンセプト自体ではなく、いかに新しいか、いかに驚かせるかが重要」と力を込める。

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
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スーパーヒーロー映画があふれる昨今、ロード&ミラーが絶賛するのが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズだ。ロードはジェームズ・ガン監督が“人間関係”を描く手腕に長けていることを称え、「(同作では)はみ出し者たちが家族を見つけるのを感じられる。だから愛されているんです」と話した。「観客が関心を抱くのは、たとえばロケット・ラクーンとグルートのような“人間関係”。この映画(『アクロス・ザ・スパイダーバース』)も、マイルス・モラレスと両親の物語に深く根ざしています」。

ロード&ミラーの戦略は見事に功を奏した。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は2023年6月2日の米国公開後、週末3日間で興行収入1億2,050万ドルという大ヒット。初日興収は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を抜いて2023年最高記録となった。世界累計興収は2億4.771万ドル(※6月7日時点)、観客の「スーパーヒーロー映画疲れ」をまるで感じさせないスタートとなっている。

現在、ミラーは「“スーパーヒーロー疲れ”があるとは思わない。“何回も見たことのある映画疲れ”はあると思う」と述べている。「過去の映画やテレビと同じ物語構造やスタイル、トーン、雰囲気をまた使っているとしたら、ジャンルが問題なのではありません。それでは観客も退屈するでしょう」

業界きっての気鋭、ロード&ミラーは今度の映画でいったいどんな物語と驚きを、どんな映画体験をもたらしてくれるのか。映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は2023年6月16日(金)公開

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Source: Rolling Stone

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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