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米最大の映画館「AMC」に再び破産危機、年内にも現金枯渇か ─ 大作の公開延期が痛手、客足戻らず

AMC Theatre
Photo: Andreas Praefcke https://en.wikipedia.org/wiki/File:AMC_Empire_25_NYC.jpg

米国最大の映画館チェーン、AMC Theatresが破産する危険性が再び浮上している。新型コロナウイルスの影響により、AMCは2020年3月、自社経営の劇場630館を一時休業することを決定。8月20日から多くの劇場が営業を再開しているが、劇場の客足は戻らないままだ。

2020年10月13日(米国時間)、AMCは“このままの経営状況が続いた場合、2020年内、あるいは2021年初頭に現金資産を使い切る可能性がある”との公的書類を発表。専門家は、2021年1月末にも現金が枯渇するのではないかと見ている。

報道によると、全米で現在営業しているAMCの劇場598館のうち、494館において来場者が約85%減少しているとのこと。映画業界にとって最も重要な市場であるニューヨークやロサンゼルスでは営業が再開されておらず、営業中の映画館も感染対策のため入場者数に制限が生じている。こうした状況を踏まえ、『ブラック・ウィドウ』や『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『DUNE/デューン 砂の惑星』などは2021年に公開が延期され、『ムーラン』『ソウルフル・ワールド』などは劇場公開を断念した。結果として、映画館業界が最も大きなダメージを受けている状況にある。

このたび、AMCは現金資源の枯渇のリスクがあることを明らかにし、来場者数の急増や、それに代わる流動資産の増加が必要だとしている。現在、新たに債務救済を受ける、各劇場の家主・地主に対して賃借料に関する再交渉を実施する、劇場や資産を売却するといった選択肢が検討されているほか、他企業との合弁事業の可能性も模索されているとのこと。不安定な情勢が続く中、今後の経営や、経営状態の回復をめぐる予測がつかないことも課題だとされる。

コロナ禍において映画業界・映画館業界が危機に立たされる中、AMCは2020年4月の時点で破産の可能性が報じられていた。そんな中、同社は米ユニバーサル・ピクチャーズとの間で「自社系列の映画館で17日間上映したのちに配信リリース可能」との契約を締結し、新たな状況への対策を早くから立てていたのだ。しかし、新作映画がほとんど封切られない以上、こうした方法によって十分な利益を得られる状況でもない。

ハリウッドでは業界の苦境を鑑みて、映画監督80名以上が、議会による救済を求める嘆願書を提出したことが大きな話題を呼んだ。かたやヨーロッパにおいても、『ソウルフル・ワールド』の配信リリースを受けて映画館組合が抗議の声明を発表。一方、ウォルト・ディズニー・カンパニーは一連の情勢を踏まえ、配信サービスを最優先に事業を展開する方針を示している

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Sources: Variety, Deadline

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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