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【インタビュー】ウィレム・デフォーと役者の真髄 ─ 『永遠の門 ゴッホの見た未来』における役の宿し方

『永遠の門 ゴッホの見た未来』 インタビュー
© THE RIVER

2人は仲がいい。写真撮影時、先にやってきたジュリアン・シュナーベル監督がソファに腰掛け、「ここにウィレムが来る」と“エアー肩組み”する姿を見せた。やがてウィレム・デフォーも到着すると、その通りに肩を組み合い、そのまましばらく談笑したのだった。

『永遠の門 ゴッホの見た未来』 インタビュー
© THE RIVER

フィンセント・ファン・ゴッホの晩年を、ウィレム・デフォー主演で描く永遠の門 ゴッホの見た未来のため、THE RIVERはこの2人へのインタビューに挑んだ。画家出身の映画監督ジュリアン・シュナーベルは、これまで『バスキア』(1996)『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)といった繊細かつ芸術的な作品を手掛けている。主演に抜擢されたウィレム・デフォーは本作で第75回ヴェネチア国際映画祭で男優賞に輝き、さらにアカデミー賞主演男優賞に初ノミネートを果たした。

ジュリアンは、ルームウェアのようなゆるいパープルのシャツに、ポップなグリーンのストライプがあしらわれた薄手のガウンを羽織っている。キャンディ・ショップのオーナーの休日のようにも見えるが、ガウンには飛び散った絵の具の後が見られ、彼が画家であることを知らせている。ウィレムは黒いシャツにダークネイビーのジャケットを合わせている。ひとたびカメラを向けると、遠くを見つめ、次にレンズを睨む、役者としてのオーラをもう一枚羽織っているようだ。

インタビュー用の部屋に移動するや、「ドナルド・トランプが弾劾されるといいのに」とつぶやきながら腰掛けたシュナーベル監督に、ウィレムは「誰も笑ってないですよ」とツッコミを入れる。ひとたびインタビューが始まると、2人は自身の深い部分に潜るようにしながら、『永遠の門 ゴッホの見た未来』を通した信条の様々を、思慮深く語った。

『永遠の門 ゴッホの見た未来』 インタビュー
© THE RIVER

『永遠の門 ゴッホの見た未来』における絵画の役割

──ウィレム、あなたはこの映画で絵の描き方をジュリアン監督から学んだと聞きます。また、ゴッホについて相当なリサーチをされたでしょう。演じる上で核になったものはなんですか?

ウィレム・デフォー:この映画では、絵を描くということが、まず非常に重要な要素です。ゴッホ自身が言うところの、「私自身が絵画である」というものですね。これは、私たちが綴るストーリーの文脈にとっても言えることです。絵を描く、ということが始まりなのです。

それから、創造的な脚本的に導かれていく。ゴッホの口にするセリフには、私たちが生み出したものもあり、実際の書簡から引用したもの、その両方がありました。

私はその中で、もがきながら絵を描いた。そうしながら、自然の中に身を置いて、思いを巡らせました。ゴッホは何を感じていたのだろうか、と。彼が見たものと同じ風景を望む。確かに、(時を経て)色々なことが変わったかもしれません。でも、景色というものは変わらないはずです。

──絵を描く経験は、あなたにとってどのようなものでしたか?

ウィレム:私には、素晴らしい師がいる(ジュリアン監督を見て笑う)。多くを学びました。絵画のことだけではなく、物の見方について。物の作り方について。つまり、絵を描く技法だけではなく、物をどう見るのか……、しいては、人生をどう見るか、ということまでを学んだのです。

『永遠の門 ゴッホの見た未来』 インタビュー
© THE RIVER

──ジュリアン監督、ゴッホの晩年を映画化するにあたって、描ききれなかったエピソードはありますか?

ジュリアン・シュナーベル監督:ない。それよりも、ウィレムに聞いた質問について答えたい。

(絵を描くシーンについて)どうやったのか、何をしていたのかを聞くことはできますね。それを彼が答えてくれたのは良い。しかし、彼がどういう人物であるのか、ということを疎かにしていたら、この映画は出来ませんでした。つまり、彼がどうやって絵を描いたのかと聞いてもらうのは良いが、私が彼を選んだ理由は、彼が人間の深みを知る人だからです。人生の叡智がある。プログラムされた演じ方ではない表現力も持っている。だから、彼しかいないだろうと思ったんです。

彼は台詞を覚えるだけでなく、本物の画家らしく絵を描いてみせる必要もありました。実際に撮影しながら、生で描くからです。画家と同じようにブラシを握り、他の共演者ともやりとりをする。自分に語りかける共演者に向けて、自分でカメラを構える場面もありました。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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