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『アバター:FAA』ヴァラン役は「喜劇王」チャールズ・チャップリン孫娘、キャメロンも知らなかった

『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』 (C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『アバター』シリーズ最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』では、ひとりの鮮烈なキャラクターが初登場を果たした。ポスタービジュアルから本作の顔となった、アッシュ族のヴァランだ。

火山の噴火によって故郷と仲間を失い、あてのない怒りと憎しみに突き動かされるヴァランは、恐ろしい暴力性と快楽の両方を身にまとった女性。劇場公開前から、ヴァランの表現や演技には批評家の絶賛が相次いだ。

アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ
(C) 2025 20th Century Studios. All Rights Reserved.

このキャラクターを演じたのは女優ウーナ・チャップリン。「喜劇王」の異名をとる、かのチャールズ・チャップリンの孫娘である。

ウーナ・チャップリンは1986年、スペインのマドリードにて生まれた。母は『ドクトル・ジバゴ』(1965)や『チャーリー』(1992)『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)などのジェラルディン・チャップリン、父はチリの撮影監督パトリシオ・カスティーリャ。「ウーナ」という名は、祖父チャールズの最後の妻である祖母ウーナ・オニールにちなんで名付けられた。

イギリス王立演劇学校を卒業したウーナは、『007/慰めの報酬』(2008)や「SHERLOCK/シャーロック」シーズン2(2012)などを経て「ゲーム・オブ・スローンズ」のタリサ・マイギア役で注目を浴びた。その後は「ブラック・ミラー」やトム・ハーディ主演「TABOO タブー」(2017)、「ザ・コミー・ルール 元FBI長官の告白」(2020)、Netflixシリーズ「裏切りの影」(2022)などに出演している。

もっともウーナは、一時は「チャップリン」という名前を改名しようと考えていたという。

The Times of Londonにて、ウーナは「(チャップリンの名を)ふさわしいと感じられるまでには長い道のりがありました。ふさわしくない、と感じることはとてもつらかった」と明かしている。「彼との関わりがなければ、きっと私には開かれなかったであろう可能性が開いていることを感じていたから」と。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Charlie_Chaplin.jpg

その後、ウーナが改名を取りやめたのは、「一生懸命に努力し、私がどんな仕事をしようと、祖父の功績にはまるで及ばないと理解した」からだった。「罪悪感が感謝に変わったのです」という。

「もしも私がこの世界を生きるうえで唯一の使命が、“ああ、チャーリー・チャップリンの孫娘なんだね”と言ってもらい、彼の名前をGoogleで検索してもらい、そして彼の映画を見てもらうことなのだとしたら、私は幸せ。彼は本物の天才ですから。」

ウーナが『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』に起用されたのは10年ほど前。監督のジェームズ・キャメロンは、ウーナの存在も、彼女がチャールズ・チャップリンであることも認識していなかったという。当時のウーナは俳優引退を考えており、キューバのジャングルに自ら建てたツリーハウスで生活していたそうだ。

ヴァラン役の候補には、ウーナのほか、3人のスター俳優が挙がっていた。しかしオーディションを経て、キャメロンはウーナを起用することを決断した。「役柄への理解、身のこなし、堂々たる度胸に驚かされました。準備万端で、7~8ページのシーンを完璧に理解していた」とキャメロンは振り返る。「セクシュアリティ、支配心、激しい怒り──ヴァランの行動と、彼女を突き動かす力にある多層性を、彼女は自在に行き来できたのです」。

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祖父チャールズはウーナが生まれる以前、1977年にこの世を去っているため、実際に顔を合わせたことはない。しかしウーナは、もしも祖父が生きていれば『アバター』シリーズに「賛同していたはず」という。「(キャメロンとチャップリンは)最先端の技術を駆使し、人間の心やあり方に焦点を当てた物語を描いていますよね」。両者には「自分の話している内容をよく理解しているからこそ、人々が耳を傾けるという共通点もある」と分析する。

ウーナは『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』の撮影後、「この2年半は母親業に専念していたので、仕事をしたいとは思わなかった」そう。しかし、ヴァラン役のおかげで再び演技を好きになれたそうだ。「偶然にも映画の公開と同じタイミングで、ようやく仕事に戻りたいと思えるようになりました。今回の役をきっかけに、もっとたくさんのお仕事ができることを願っています」。

映画『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』は公開中。

Source: The Times of London, People, The Hollywood Reporter, IndieWire

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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