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『アントマン&ワスプ:クアントマニア』脚本のお手本は「スパイダーマン」 ─ コメディからシリアスへ、大胆な作風チェンジの秘密

アントマン&ワスプ:クアントマニア
(c)Marvel Studios 2023

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では、小さな世界の犯罪コメディだった前2作から一転、量子世界を舞台とするシリアスなSFファンタジーへと作風の大胆な転換が見られる。製作チームは『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)からの影響を認めているが、もうひとりの重要なスーパーヒーローがいた。“親愛なる隣人”スパイダーマンだ。

英SFX Magazineにて、脚本家のジェフ・ラブネスは影響を受けた作品を明かしている。当初、監督のペイトン・リードとは、シリーズ3作目であることから「今回は『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003)にしたら?」と冗談のように話していたというのだ。

もっとも二人は、このアイデアがあながち的外れではないと考えるようになっていった。「もしもアントマンが、いきなり『ロード・オブ・ザ・リング』のような巨大な世界に放り込まれたら?」と。それこそが、本作を『アベンジャーズ』のようなスケールにすることを決めたきっかけになった。そして、シリーズの作風を思い切って変化させるきっかけにもなったのだ。

「マンダロリアン シーズン3」「アソーカ」解説

『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)を観ていた時、楽しいコメディから滅亡の危機へ、作品のトーンがあっという間に変わることに感銘を受けたんです。時に僕たちは映画を縛りつけようとして、ひとつのことしかできなくなってしまう。けれど僕にとっては、そういう変化こそが昔の冒険映画の魅力でした。そして、子どもの頃に読んでいたマーベル・コミックスの楽しさでもあったんです。」

ラブネスがひらめいたのが、昔から読んでいたスパイダーマンの存在だった。スパイダーマン/ピーター・パーカーのキャラクター性が、アントマン/スコット・ラングにも通じるところがあると考えたのだ。

(スパイダーマンは)個人的な問題を抱えているし、本当にひどいことが降りかかってくる。それでも基本的には、いつだって明るく、楽しく、キャラクターもチャーミング。だから、誰でも彼と一緒に問題を乗り越えていけるんです。そのことをお手本にしながら、(シリアスとコメディの)バランスが取れていた、子どもの頃のコミックを脚本の形にしていきました。」

そしてラブネスは、そんな役柄を見事に体現したポール・ラッドの演技を「素晴らしかった」と称える。「征服者カーンが現れ、スコットが自分の相手を認識すると、この映画は急旋回を始めます。スコットはふざけたがりのおバカさんですが、刑務所に2度入り、アベンジャーズとともに戦ったこともある。だから、ゆっくりと目が変わっていくんです。“前回とは違う、本物の危険だ。キャプテン・アメリカもソーもいない、僕と家族だけだ。これは手に負えないぞ”とわかっていく」。

もっとも本作でも、少なくとも映画の冒頭は、おなじみの『アントマン』らしさを期待してもよさそうだ。「楽しくてふざけたアドベンチャーから、思いがけない対決に変化する。それがアントマンとカーンを宿敵同士にする面白さです」

映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』は2023年2月17日(金)全国公開。

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Source: SFX Magazine 2023 February

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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