『バビロン』幻の2時間版が存在する ─ 初期編集版、完成版よりも約20分短かった

ブラッド・ピット&マーゴット・ロビー主演、『ラ・ラ・ランド』(2016)のデイミアン・チャゼル監督による最新作『バビロン』は、上映時間189分に監督の映画愛がたっぷり詰め込まれた力作にして野心作だ。しかし監督のiPhoneには、完成版からおよそ1時間も短い“2時間版”が存在するという。
米Entertainment Weeklyは、チャゼル監督らが“2時間版”について語った内容を伝えている。もっとも、この“2時間版”は編集段階で作られたものではない。なんなら、映画の本編が撮影される前に作られた幻のバージョンなのだ。出演者は、マニー・トレス役を演じたディエゴ・カルバと、女性映画監督のルース・アドラー役を演じたオリヴィア・ハミルトン(チャゼル監督の妻でもある)のふたりだけだった。
「非常にタイトな全編の2時間版を、家の裏庭で、iPhoneで撮影しました」と語るのはチャゼル監督。すなわちこれは、『バビロン』という映画の全容をあらかじめ把握しておくためのリハーサル映像なのである(事実上のビデオコンテだと言うこともできるかもしれない)。カルヴァも「オリヴィアとデイミアンと僕の3人だけで、裏庭で全編をリハーサルしたんです。本当に珍しいシチュエーションでした」と振り返る。
実際の映画を観ればわかるように、完成版の『バビロン』には、家の裏庭だけでは到底実現できないスケールのシーンや、狂気的なエネルギーを感じさせる長いシークエンスや長回しなども多数存在する。それらの積み重ねが189分という上映時間になったのだ。

もっとも米Colliderでは、編集段階の興味深いエピソードが語られている。チャゼル監督と編集のトム・クロスがファーストカットを完成させた時点で、上映時間は2時間50分ほどだった。しかし、プロデューサーの意見を聞いて「必要な部分もカットしてしまったことに気づいた」とのこと。プロットには直接的に関係ないものの、キャラクターの厚みや豊かさを担保する場面を削除してしまっていたため、それらを戻すことにしたという。
監督が具体的に挙げているのは、ブラッド・ピット演じるジャック・コンラッドが初めて出演したトーキー作品の出来を編集室で確かめる場面や、終盤でビーチにて映画を撮影しているシーン。こうした場面を復活させた結果、今度は3時間40分ほどになったため、うまくバランスを取りながら編集を進めていったという。「人物に適切な厚みがありつつもテンポの良い、3時間とは感じない映画にしたいと思った」とチャゼルは語っている。
ちなみに完成版の189分という尺を、チャゼルは「この映画にはふさわしい長さだと思う」と述べている。ただし、残念ながら映画には収まらなかったものの、監督自身が気に入っていたシーンはまだあるとのこと。「未公開シーンやロングバージョンのシーンをブルーレイやDVDに入れられたらうれしい」とも言っているから、今からソフト化も楽しみにしておこう。
映画『バビロン』は2023年2月10日(金)より公開中。
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Sources: Entertainment Weekly, Collider