【解説】『ブラックパンサー』第1弾予告編は物語の伏線だらけ!ライアン・クーグラー監督&マーベル社長が語る

2017年6月10日(日本時間)、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第18作となる映画『ブラックパンサー』の第1弾予告編(ティザー・トレーラー)がアメリカにて公開された。
まだ全貌はわからない映像ながら、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』『マイティ・ソー バトルロイヤル』のSF/ファンタジー色の強い世界観や『ドクター・ストレンジ』の魔術を前面に押し出した映像演出、『スパイダーマン:ホームカミング』の“市民の日常”に根ざしたリアリズムのいずれとも異なるタッチや、もはや「マーベルらしからぬ」ほどユーモアを排したシリアスなトーンは、MCU作品を追いかけてきたファンにこそ新鮮な印象を与えたことだろう。
今回の予告編解禁にともなって、本作を監督したライアン・クーグラー(『クリード チャンプを継ぐ男』)、そしてマーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギは、エンターテインメント・ウィークリー誌に予告編に含まれる要素をたっぷりと語っている。映像には一瞬しか映らないあれこれも、今のうちからきちんと予習しておけば今後の楽しみがきっと増えることだろう。ぜひ予告編を何度も見直しながら、『ブラックパンサー』への期待をたくさん膨らませておいてほしい。
ワカンダを知る一人の男
『ブラックパンサー』のティザー・トレーラーは、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に登場した武器商人ユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)を、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』に登場したCIAエージェント、エヴェレット・K・ロス(マーティン・フリーマン)が取り調べる場面から始まる。
しかしクロウがロスに「ワカンダの何を知っている?」と問うと、ロスは「後進国だ。科学技術や宗教、クールな服もね」と答える。それを聞いたクロウは「すべて偽りだ」と一蹴。「探検家たちはエル・ドラドと呼ばれる土地を求めてきた。みんな、それは南アメリカにあると考えてきた。でも、それはずっとアフリカにあったんだよ。俺はそれを見た唯一の人間だ」と話すのだった。
クルーガー監督は、この取り調べのシーンについてこう語っている。
「ひとりはワカンダをよく知っている。もうひとりはよく知っていると思っているが、実はそうじゃない。ワカンダの真実を見てきた人間から始めるのは面白いと思ったんだ」
なお、この取り調べが行われているのは韓国に設置された隠し部屋という設定。窓越しに取り調べの様子を見つめるのは、ワカンダの新たな王であるティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)と、その親衛隊「ドーラ・ミラージュ」のリーダーであるオコイエ(ダナイ・グリラ)だ。
王の相談役、そして“スピリチュアル”
おなじみマーベル・スタジオのロゴの後には、ティ・チャラが治めるワカンダの様子が映し出される。高度な科学技術を誇るワカンダは、キャプテン・アメリカが使う盾の素材であるヴィブラニウムの産出国だ。
映像の00:27頃に映し出されるのは、我が国に帰ってきたらしいティ・チャラを大勢の人々が迎えるシーンである。この場面でティ・チャラの正面にたたずんでいる人物、そして映像の01:07に登場する人物が、フォレスト・ウィテカー扮するズリだ。彼はシャーマンであり、また国王の相談役でもある。このキャラクターについて、クーグラー監督はこのように述べている。
「ズリは宗教的な、スピリチュアルな人物なんだ。スピリチュアリティはコミックのワカンダにも存在するし、映画にも取り入れたいと思ったのさ。なによりもフォレストが演じる人物は、ティ・チャラの父(先代の国王ティ・チャカ。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で死亡)と深く繋がっている。ズリは(ティ・チャラを)導く人物なんだよ」
またファイギ社長は、映像の1:08に映っている子どもたちの存在をこう説明している。
「コミックの読者は、ハート・シェイプド・ハーブやその儀式を思い出すでしょうね。ある程度スピリチュアルなものですが、僕たちは魔法とは呼びたくないんです。しかし数千年にわたってヴィブラニウムが土壌や土地に混ざっているんですから、そこには別のものもありますよ」
ハート・シェイプド・ハーブとは“自然に植生する超人血清”ともいわれるもので、ブラックパンサーがそのパワーや能力を引き出すために使用しているもの。しかし誰もがその恩恵を受けられるわけではなく、クーグラー監督いわく「ブラックパンサーが代々使っているもので、一度その肩書きを手に入れれば強靭な身体能力を得られる」ということのようだ……。