【ネタバレ】『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ポストクレジットシーン解説

この記事には、映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』のネタバレが含まれています。

歴史やコミックとの関係性
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でトゥーサン/ティ・チャラ2世を演じたのは、本作が俳優デビューとみられるディヴァイン・ラブ・コナドゥ=サン(Divine Love Konadu-Sun)。今後のMCU作品に再び登場するかは不明だが、本作のワールド・プレミアにもきちんと出席していた。
コミックにも「ティ・チャラに息子がいる」という設定は存在し、マルチバースの“アース10943”には、ティ・チャラとストームの息子・アザリ(Azari)が登場。両親の能力を受け継ぎ、ネクスト・アベンジャーズの一員として活躍している。ただし本作のトゥーサン/ティ・チャラ2世とコミックのアザリは明らかに別人であり、今後の展開は未知数。MCUのフェイズ4には、本作のアイアンハート/リリ・ウィリアムズを含む新世代のヒーローが多数登場しているが、トゥーサン/ティ・チャラ2世をその中にカウントするのは時期尚早だろう。
映画『ブラックパンサー』シリーズの文脈や、ライアン・クーグラー監督の問題意識を鑑みるなら、むしろ「トゥーサン」という名前に注目すべきかもしれない。ハイチという土地、トゥーサンという名前の組み合わせから浮かび上がるのは、18~19世紀に起こったハイチ革命の指導者であるトゥーサン・ルーベルチュール。自身も黒人奴隷だったが、仲間を率いて蜂起し、フランスによる植民地支配から土地と人民を解放することに成功。1804年にハイチは黒人初の共和国国家として独立している。
クーグラーと共同脚本のジョー・ロバート・コールが、ティ・チャラ2世の別名に、このトゥーサン・ルーベルチュールと同じ名前を与えた理由はまだわからない。しかし、彼がいずれ人々を率いるリーダーとなることを示唆するには十分な名前だろう。“植民地支配と解放”というテーマは、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で描かれたネイモアやタロカンのルーツにも重なっている。

ポストクレジットシーンに込められた思い
本作のポストクレジットシーンは、ここ最近のMCU作品の中ではかなり特殊だ。少なくない作品がエンドクレジットのあとにも別のシーンを用意しているが、今回はトゥーサン/ティ・チャラ2世が登場するミッドクレジットシーンだけ。また、『エターナルズ』(2021)『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)『ソー:ラブ&サンダー』(2022)ではコミックから新たなキャラクターが登場していたが、トゥーサン/ティ・チャラ2世の初登場はそれらとは一線を画している。
プロデューサーのネイト・ムーアは、にわかにささやかれる「当初はもうひとつのポストクレジットシーンが存在していた」との説を否定。「独特な映画であり、独特な作風です。非常に詩的な結末なので、そこに“クレジット後のお楽しみはこれ!”というようなシーンを入れるのは不誠実だと思いました。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)と同様、この映画には必要なかったのです」とも語っている。「特典を加えることなく、構想した通りの物語を描きたかった」と。
なお、トゥーサン/ティ・チャラ2世の登場は、チャドウィックの生前に執筆された脚本初稿の時点から存在していたとのこと。ムーアによると、チャドウィックの逝去を受けて本編上の意味合いを変更し、この場面をミッドクレジットシーンとすることが決まったという。「逆境を乗り越えての再生なのだ、と感じてもらえればうれしいです」。
ところでエンドクレジットの後には、「ブラックパンサーは帰ってくる(BLACK PANTHER WILL RETURN)」のひとことが映し出される。現時点で『ブラックパンサー』第3作の製作は決まっていないが、いずれ必ず、ブラックパンサーはふたたび私たちの前に現れるのだ。
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は2022年11月11日(金)より公開中。
▼ 『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』の記事
Sources: The Hollywood Reporter, Variety, Collider, Comicbook.com