ギレルモ・デル・トロ、配信への想い語る「劇場体験はいつまでもなくならないでほしい」 ─「携帯で映画は観ない」とジェーン・カンピオン

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021)にてヴェネツィア国際映画祭・銀獅子賞に輝き、世界中の映画賞を総なめにしている映画監督ジェーン・カンピオン。『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)に続く待望の監督最新作、『ナイトメア・アリー』が米国公開されたばかりの映画監督ギレルモ・デル・トロ。この度、Varietyにてふたりの鬼才監督が対談を果たし、失われつつある劇場体験について持論を展開した。
映画は現在、コロナ禍の影響により自宅で鑑賞する人々が増えており、劇場に足を運ぶ人々は減少傾向にある。また、Netflix&Amazonだけでなく、ディズニーやワーナー・ブラザースなどのスタジオが独自の配信媒体を持つようになったことにより、米国では劇場公開と同日に配信、あるいは劇場公開から数週間程度で配信となるのが主流となりつつあるのだ。国や作品の規模によって状況は様々だが、果たして、劇場体験を重視する監督たちはどのように考えているのだろうか。
「iPadで何かを観たりはします。ただ、携帯で映画を観ることはありません」と話すジェーン・カンピオン。劇場以外での映画鑑賞に対して完全に否定的というわけではなさそうだが、「それが限界です。特別な映画監督の作品であれば、劇場まで足を運びます」と続けている。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は劇場での先行公開を経て、Netflixにて現在独占配信中だ。壮観な大地を捉えた映像美と心揺さぶられる音楽が響き渡る本作。監督としては自身の作品が小さい画面ではなく、劇場で多く観られることを願っているに違いない。
ギレルモ・デル・トロもまた、「美しく感動的な劇場体験は、いつまでもなくならないでほしい。衰えることもあれば、盛り返すこともあるでしょう」と切実な想いを打ち明けている。もっともデル・トロは、Netflixのおかげで企画始動した作品があるのだという。「個人的な話ですが、撮影さえ出来なかったであろう企画の多くが、(ストリーミングサービスの)おかげで資金を調達することができました」。Netflixにて企画・製作されている、ストップモーション・ミュージカル・アニメ映画『Pinocchio(原題)』がそのひとつである。配信での映画体験、劇場での映画体験、ふたつが上手く共存していくことが望ましいだろう。
ちなみに、『インターステラー』(2014)『TENET テネット』(2020)などのクリストファー・ノーラン監督は以前、劇場体験を重視しながらも、決して携帯での視聴に否定的な訳ではないことを明かしていた。「私が問題視しない理由は、大きな劇場で公開することが前提になっているからです」。一方、劇場での映画体験に重きを置く人物として有名な監督クエンティン・タランティーノは、『ヘイトフル・エイト』(2015)をiPhoneで公開するよう製作側から提案されて、激怒したことがあったのだという。
Source: Variety