『ブラックパンサー』監督、チャドウィック・ボーズマンとの最後のやり取りを明かす ─ 続編の脚本は読んでいなかった?

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は当初、前作と同じくティ・チャラを主人公とする物語となるはずだった。しかし2020年8月にチャドウィック・ボーズマンが逝去したため、脚本は大幅に見直されている。監督・脚本のライアン・クーグラーは、チャドウィックの生前に“ティ・チャラ版”の脚本を完成させていたのだ。
もっともチャドウィック自身は、残念ながらティ・チャラ版の脚本を読むことなく、この世を去ってしまったという。公式ポッドキャスト「Wakanda Forever」にて、クーグラー監督はチャドウィックとの最後のやり取りを語った。
「(逝去は)僕が脚本を書き終えたばかりの頃でした。彼に電話をかけて、スタジオのチェックが入る前に脚本を読みたいかと聞いたのが最後だったんです。それが最後の会話でした。僕が執筆を終えた数週間後に亡くなったのだと思います。
僕から言えるのは、彼が疲れていたということです。僕は数日間、彼に連絡を取ろうとしていたし、デンゼル(・ワシントン)も連絡を取りたがっていました。だから、メールで“デンゼルが君を探してるよ”と送ったんです。彼が『マ・レイニーのブラックボトム』に出たばかりでしたから。
そしたら(チャドウィックから)電話がかかってきました。彼は横になっていたんですね。それで話をしたんですが、(妻の)シモーヌも一緒にいました。それで、彼がシモーヌを追い払おうとしたんです(笑)。NDA(※秘密保持契約)のトラブルに巻き込まれるような話を聞かせたくないから、と。だけど、彼女は出て行きたがらなかった。僕が“どうかしたの?”と聞いても、ふたりは冗談を言って笑っているだけでね。」
監督によると、当時のふたりは結婚式の計画を話し合っており、クーグラー監督の子どもは来てくれるのかと尋ねたという。チャドウィックは、クーグラー監督の妻の出産前、安産を祈るパーティー(ベビーシャワー)に参加できなかったことを残念がっていたそうだ。ともかく、当時のチャドウィックは『ブラックパンサー』続編の脚本を読むことを選ばなかった。
「彼はまだ(脚本を)読みたくないと言っていました。スタジオからチェックが入るかもしれないところで、自分が邪魔をしたくないからと。“後で読む方がいいと思う”と言っていましたね。だけど後から思えば、(当時の)彼には何かを読む体力がなかったんでしょう。」
当時の脚本は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で“消滅”から戻ってきたティ・チャラが、自分が不在だった失われた5年間を悲しむ内容だったという。今回のポッドキャストでも、クーグラー監督は「ティ・チャラの物語だった」「想像しうるかぎりティ・チャラを深く掘り下げるつもりだった」と語っている。「(前作を経て)チャドを俳優としても、人間としてもよりよく知ったことで、ティ・チャラをさらにうまく描けると思っていました。だから前作の完成後、すぐに執筆に入っていたのです」。
もしチャドウィックが続編の脚本を読んでいたら、監督にどんなリアクションを返していたのか。それどころか、もしもチャドウィックが続編に出演できていたら……。今となっては叶わないことだが、クーグラー監督はそのぶんの責任を背負い、チャドウィック不在の続編を完成させたのである。なお、ティ・チャラ版の脚本にあった精神性は現在のバージョンにも継承されているとのこと。チャドウィックのレガシーを劇場でしっかりと受け止めたい。
映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は2022年11月11日(金)より全国公開。
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Sources: Marvel, The Direct