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『キャプテン・マーベル』はMCU新展開の前触れか ─ 「シークレット・インベージョン」の可能性が示唆される

東京コミコン2018 キャプテン・マーベル
©THE RIVER

映画『キャプテン・マーベル』の予告編では、ブリー・ラーソン演じる主人公キャロル・ダンバース/キャプテン・マーベルが老婆を全力で殴り飛ばす。しかしこの老婆、めちゃくちゃ強い。本編でどのように登場するかは不明だが、これはほぼ間違いなくスクラル人が変身した姿だろう。別人の容姿や記憶などをコピーする能力を持つスクラル人は、『キャプテン・マーベル』でひっそりと地球侵略を計画しているのだ……。

コミックファンによく知られた、有名なクロスオーバー・タイトルがある。2008年に展開された「シークレット・インベージョン」だ。スクラル人が地球に潜入し、数年間にわたってヒーローに成り代わっており、水面下で侵略を進行させていたという物語である。1995年を舞台とする『キャプテン・マーベル』でスクラル人が地球に入り込んでいるのなら、もしやおなじみのキャラクターにはスクラル人が紛れ込んでいたのではないか……。

『キャプテン・マーベル』で製作総指揮を務めるジョナサン・シュワルツ氏は、本作のストーリーを考案する上で「シークレット・インベージョン」を検討したことを認め、将来的な可能性を示唆している。

「『シークレット・インベージョン』については話し合いました。この映画では“どのヒーローがスクラル人でしょうか?”というところには踏み込みません。なぜなら、キャロル(・ダンバース)こそ初めて地球に現れたスーパーヒーローなのだといっていいからです。将来の映画のために種を蒔いてるんじゃないですか、って? それはいつものことですよ。」

『アイアンマン』(2008)に始まったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の物語は、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(4月26日公開)でひとつの区切りを迎える。その直前作である『キャプテン・マーベル』に、その後のストーリーを構築する要素が含まれているのは決して不思議なことではないだろう。これまでのMCUがそうだったように、マーベル・スタジオは長期的にストーリーを計画しているにちがいない。

『キャプテン・マーベル』はコミックをいかに翻案するか

シュワルツ氏によれば、『キャプテン・マーベル』ではクリー人とスクラル人の戦争に焦点が当てられているとのこと。両民族の対立や衝突は本作の物語の核となっているそうだ。ただしこちらに関しても、コミックの展開がそのまま映画化されているわけではないらしい。

「クリーとスクラルの戦争は、いわゆる物語の背景や、映画の神話的基盤というものよりは強く描かれています。ただし『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)のように、物語のプロットをそのまま移植してはいません。」

この視点は、「シークレット・インベージョン」の要素をMCUがいかに扱うかを想像する上でも役立つものだ。製作チームは『キャプテン・マーベル』のストーリーを検討する上で、スクラル人が地球に紛れ込んでいるという「シークレット・インベージョン」の設定や展開をそのまま導入することは避けたという。

“スクラル人が地球に紛れ込んでいるのではないか、良からぬことが起こっているのではないか”。人々が疑心暗鬼になっていく展開は、他者への不寛容や緊張が高まっている現代の社会状況にも重ねられるものだ。しかしシュワルツ氏は、コミックがはらんでいた社会性をそのまま映画の社会性に置き換えてはいないことも強調している。「(映画の政治的要素は)特定のストーリーラインに描かれているものとは少し異なります。誰がスクラル人でもおかしくない、というものとは違いますね」

いずれにせよ『キャプテン・マーベル』に登場する新要素は、キャプテン・マーベル本人にせよ、他者に成り代わる能力をもつスクラル人にせよ、今後のMCUに多大なる影響を与えることになるだろう。新しいヒーロー映画の第1作にすぎないと思うなかれ、それ以上の重要性が秘められていることは間違いないのだ。

映画『キャプテン・マーベル』は2019年3月15日(金)全国ロードショー
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/captain-marvel.html

Sources: Collider, Comicbook.com

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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