米ワーナー、DC映画の規模縮小か ― 事実上の人員削減、新体制で再出発「ディズニーと同じことはできない」

映画『ジャスティス・リーグ』の興行的不振は、どうやら米ワーナー・ブラザースにとって相当の打撃だったようだ。合計で約3億ドルに達していたという製作費に対して、全世界興行収入は約6億5,400万ドル(Box Ofiice Mojo調べ)。採算分岐点は約9億ドルといわれていたため、これが事実なら、ワーナーは「スーパーヒーローのクロスオーバー」という一大チャンスで大きな赤字を背負ってしまったことになる。
そして現在、ワーナーはDC映画ユニバースの規模縮小を視野に入れているようなのだ。ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ幹部の配置転換、DC映画製作陣のリニューアルが意味するものとは……。米The Wrap誌の取材で、ワーナーCEOのケビン辻原氏から衝撃的な発言が飛び出している。
「私たちにディズニーと同じことはできない」
2018年1月9日、米ワーナー・ブラザース・エンターテインメントの映画製作・配給部門にあたるワーナー・ブラザース・ピクチャーズは、首脳陣の配置転換を告知した。これまで全世界での配給・マーケティングを担当していたスー・クロール氏が職を離れ、その職務を担う人物として、トビー・エメリック氏が「会長」なる新たなポストに就いたのだ。トビー氏は映画の製作から配給に至るまで、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズの統括を担当することになる。
また時をほぼ同じくして、ワーナーはDC映画ユニバースを指揮する人物を入れ替えてもいる。プロデューサーのジョン・バーグ氏が離脱し、後任者として『死霊館』シリーズや『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)などのウォルター・ハマダ氏が就任したのだ(DCコミックスのジェフ・ジョンズ氏は現職に留まったが、今後はアドバイザー的な方向にシフトしていくともいわれている)。
この配置転換が行われる以前、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズでは、創作面をトビー氏が、配給・マーケティング面をスー氏が統括していた。このたびトビー氏が全体の采配を一手に引き受けることは、ある意味では人員削減にほかならない。
しかしThe Wrap誌の取材によると、あるワーナー関係者は、この配置転換について「キッチンからシェフが減ることは、映画を作る上では必ずしも良い決断とはいえないが、マーケティングの面ではそうではない」と述べたという。スー氏による『ジャスティス・リーグ』の宣伝は――スーパーマンの姿を事前に示さなかったことも含めて――内部でも「おかしな判断」だといわれていたようなのだ。ちなみにスー氏本人は、現在も『ジャスティス・リーグ』のプロジェクト全体を支持しているという。
では、新たにワーナー・ブラザース・ピクチャーズのトップとなったトビー氏は、今後自社のヒーロー映画をどのように転がしていくのか……。ところがワーナー・ブラザース・エンターテインメントのケビン辻原CEOは、早くも「トビー氏は青信号、私は赤信号」と発言。“ワーナーのボス”として、早くもトビー氏を牽制するような言葉を口にしているのである。
「ワーナー・ブラザースはこれまで続けてきたことを継続していかねばなりません。つまり、業界で最も大きな規模、最も多様な映画を作るということです。それこそが我々を成功に導いてきたのであって、私たちにディズニーと同じことはできないんです。彼らは非常に、非常に良い仕事をしていますが、それは私たちの仕事ではない。あらゆる種類の、あらゆるジャンルの映画を、バランスよく作り続けなくてはなりません。」
現在、DC映画ユニバースは『ワンダーウーマン2(仮題)』や『シャザム!(原題:Shazam!)』、『スーサイド・スクワッド2(仮題)』などが待機中。かねてより製作がアナウンスされていた『ザ・バットマン(仮題)』はスローペースで準備が進められているほか、『グリーン・ランタン・コァ(原題:Green Lantern Corps)』は企画継続中ながら今後は不透明だという。ワーナー幹部、そしてDC映画幹部による新体制のもと、今後のラインナップには再検討が行われているようだ。
Sources: https://www.thewrap.com/warner-bros-shake-up-dc-films-fewer-cooks-justice-league-wonder-woman/
http://variety.com/2018/film/news/warner-bros-shakeup-toby-emmerich-sue-kroll-1202658430/
http://www.boxofficemojo.com/movies/?id=dcfilm1117.htm
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