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【詳報】ディズニー、ボブ・アイガー氏のCEO復帰で組織再編へ ─ 電撃交代の背景、従業員へのメッセージほか

ボブ・アイガー
Photo by Thomas Hawk https://www.flickr.com/photos/thomashawk/20667236976/ Remixed by THE RIVER

交代劇の背景

チャペック氏のCEO退任、アイガー氏の即日就任は、ハリウッドのみならず世界的に大きな衝撃をもたらした。しかしディズニーの取締役会は、チャペック氏の処遇について、過去数ヶ月間にわたり意見を戦わせてきたと報じられている。

ディズニーの発表によると、2022年7月~9月期の収益はアナリストの予想を下回り、とりわけディズニープラスなどに代表される配信事業(ダイレクト・トゥ・コンシューマー:DTC)部門の損失は予測を大幅に上回る約15億ドルに達していた(前年の2倍以上)。ディズニープラスは契約者数を伸ばしているものの、コストの肥大化ゆえにうまく収益に繋がらないまま。当時、チャペック氏は2024年初頭の黒字化を見込んでいると説明していたのだ。

一方、テーマパーク事業は好調であり、チャペック氏は「過去最高の年」と強調していたが、その利益が価格の値上げや有料オプションによることも指摘されている。一部のアナリストの間で、この戦略は中流のファミリー層をパークから遠ざけるものであり、長期的に見れば損失を生む可能性があると危惧されていたことも事実だ。

業界の関係者によれば、チャペック氏の退任は、11月8日(米国時間)に開催された収支報告会での振る舞いが最大の決め手になったという。説明会ではあくまでもコスト削減の必要があることを示唆するだけにとどめたが、後日、社内には雇用の凍結やレイオフ(一時解雇)を含むコスト削減案が提示されたとのこと。アイガー氏の復帰はこの1週間で決められたもので、一部の幹部しか発表を知らされていなかったといわれる。

ともあれ、アイガー氏のCEO復帰を投資家たちは暖かく迎え入れた。就任翌日の11月21日(米国時間)、ウォルト・ディズニー・カンパニーの株価は6.3%上昇している。

なお報道によると、アイガー氏の報酬は年間で最大2700万ドルに達する見込み。基本給が年俸100万ドル、インセンティブが年100万ドル、さらに経営状態やアイガー氏の取り組みなどに応じて、最大2500万ドルの賞与が支払われる可能性があるという。最終的な報酬金額は、あくまでも自身の采配ひとつで決まるというわけだ。

ディズニーの公式発表

11月20日(米国時間)、ディズニーはアイガー氏のCEO復帰を正式に発表していた。

取締役会の会長であるスーザン・アーノルド氏は、声明の中で、前CEOのチャペック氏に「パンデミックという未曾有の危機下で企業を率いるなど、長年のキャリアと尽力に感謝します」との謝意を述べ、「取締役会では、業界がますます変化していく複雑な時代に乗り出すにあたり、ボブ・アイガーこそがこの企業を率いる役目に適任だと結論づけました」と記した。アイガー氏が会長職の退任まで幹部陣とも密接な仕事を続けてきたこと、また世界中の従業員に尊敬されていることが、シームレスな体制の変化を可能にするものと信頼を寄せている。

なお復帰の発表にあたり、アイガー氏本人は、以下の声明文を公開している。

「私はこの素晴らしい会社の将来を心から前向きに捉えていますし、CEOへの復帰を打診されたことに感激しました。ディズニーと、他に類を見ないブランド&フランチャイズは、世界中の人々にとって特別なものとなっています。この会社に身を捧げてきた従業員のみなさんにとっては特にそうでしょうし、その使命こそが刺激を与えてくれます。圧倒的かつ大胆なストーリーテリングを通し、あらゆる世代に刺激をもたらすという明確なミッションのもと、優れた創造性に焦点を合わせ、この卓越したチームを再び指揮できることを心から光栄に思います。」

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Sources: Disney, Deadline(1, 2, 3), Variety(1, 2), The Hollywood Reporter

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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