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『DUNE/デューン』IMAXと4DXダブル鑑賞レビュー、それぞれが魅せる究極の映像体験

DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

2021年も残り3ヶ月を切ったところ。パンデミックに苦しめられる世界は依然として出口の見えないトンネルを突き進んでいるが、そんな暗闇に覆われた時代に希望の光を与えるSF超大作がついにやってくる。『メッセージ』(2016)『ブレードランナー 2049』(2017)など、圧巻の映像美で独自の世界観を生み出してきたカナダ出身の巨匠、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による『DUNE/デューン 砂の惑星』だ。

フランク・ハーバートのSFクラシック『デューン/砂の惑星』(ハヤカワ文庫SF)を原作に、名家の後継者として国を治めていくことになる少年ポール・アトレイデスの成長譚を描く『DUNE/デューン』は、アラキスと呼ばれる巨大な砂の惑星が舞台。水不足の危機に直面している地球の未来と言わんばかりの姿をした惑星で繰り広げられる陰謀や壮絶な戦いが描かれる。

公開に先がけて、ありがたいことに筆者は、2D、IMAX、4DXの3パターンで『DUNE/デューン』を鑑賞するという機会をいただいた。1980年代に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が人々の暮らしに変化を与え、世紀末に『マトリックス』が映像革命を起こしたように、こと向かい風の2021年の映画業界に『DUNE/デューン』は新時代をもたらすと言っても過言ではない

日本の宣伝では「未来型シネマ・エクスペリエンス」と謳われ、筆者自身も最速レビューで「究極の映画体験」と評させていただいた『DUNE/デューン』の世界。これらの表現は決して大げさなものではなく、観客一人ひとりが体感することになる事実なのだ。そして本作は、上映フォーマットごとに違う新しさを与えてくれる映画でもある。IMAXと4DX、この2つのフォーマットの鑑賞レビューを通して、いよいよ開幕となる『DUNE/デューン』の魅力を最大限に伝えたい。

画面との境界を取り払う、IMAXの進化に驚愕せよ

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

冒頭にて筆者は大胆にも、『DUNE/デューン』が“映画業界に新時代をもたらす”と記したが、それは決して根拠を持たないままに思ったことではない。約50年前に誕生したIMAXは2021年、この『DUNE/デューン』から鑑賞環境における進化を遂げるのだ。それは「Filmed For IMAX®」という名で呼ばれる。

「Filmed For IMAX®」とは、作り手(=フィルムメーカー)が意図したクオリティの映像と音響が、劇場で変換なしに再現することが可能になるという新システム。これには、米IMAX社も全面協力している。そして『DUNE/デューン』は、「Filmed For IMAX®」作品として世界で初めて認定された映画なのである。

もっとも、どれだけの映画ファンが日頃からIMAXに親しんでいるかどうかは定かでない。なぜなら日本全国500以上ある映画館のうち、IMAXシアターを備えている映画館は40ほどしかないからだ。IMAXを体験したことが無い方にも、『DUNE/デューン』を1つの好機としてデビューを飾ってほしいと思う。

IMAXで『DUNE/デューン』を観た感覚を例えるならば、空を飛んでいる時のよう。とはいえ人間は空を飛べないので、限りなく近い体験を挙げるとすれば、東京ディズニーランドにあるアトラクション「ソアリン:ファンタスティック・フライト」だ。ソアリンとは、空飛ぶ乗り物“ドリームフライヤー”に乗り込み、世界各地の広大な自然や世界遺産を上空から見渡せるアトラクションだが、『DUNE/デューン』のIMAX上映でも、座席に座ったままにもかかわらず、同様の“爽快感”と“高さ”を覚えるのだ。

これには、ヴィルヌーヴ監督と初めてタッグを組んだ撮影監督、グリーグ・フレイザーの貢献が大きい。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)や「マンダロリアン」(2019-)などをフィルモグラフィーに持つフレイザー。広大な『DUNE/デューン』の世界を容赦なく真上から垂直に映し出す“スーパー”ハイアングルショットを効果的に挿入したり、あるいは視線の高さから斜め上にめがけてローアングルを仕掛けたり、そのカメラワークは変幻自在だ。

『DUNE/デューン 砂の惑星』
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

『DUNE/デューン』では、オーニソプターと呼ばれるトンボ型飛行機が登場するが、その滑空時は、振動の先導によって運ばれてくる“アラキスの風”を感じることができる。また、上昇するオーニソプターをカメラが追いかけるシーンでは、アトラクションに乗っている時みたいに無意識に身体を左右に揺らしている自分に気づく。

身体が揺さぶられるのは、ビジュアルによってだけではない。耳を通しても、その世界観が入り込んでくる。音楽を担当するのは『インターステラー』『ダンケルク』など、生み出した傑作数多(あまた)のハンス・ジマーだ。アラキスの世界観を表現する上で、ジマーは太鼓やバグパイプといった文化色強い楽器を使用している。その異色さゆえに、観客は無自覚なまま耳を澄ませることになるだろう。そこにIMAXの360度音響が相まって、極上の追体験空間を生み出している。それはまるで、スクリーンのすぐ裏側でジマーが指揮棒片手にオーケストラを率いているのではないかと思うほど。リアルな音が劇場に響き渡るのだ。

そして何より、IMAX最大の魅力はアスペクト比1.43:1のIMAXフルサイズが『DUNE/デューン』の真の姿を映し出していることだ。このフルサイズでは、2Dや4DXで使用されるスクリーンから可視範囲が40%拡大される。これが本編で約40分間分も存在するのだ。暗闇に包まれた劇場では通常、横長に縁取られたスクリーンのシルエットが浮かびあがっているはず。しかし、IMAXフルサイズの場合、可視範囲が上は天井から下は座席と同じ高さまで拡大されることにより、スクリーンが視界に収まらないほどの大きさに形を変えるのだ。これにより、スクリーンとの距離感覚が失われ、空間上の境界もわからなくなる。それが40分も続くと、その場が劇場ではなく、砂漠であるかのような錯覚を覚えるのである。

ここまで絶賛続きのIMAXフルサイズに、難点が無いわけではない。このフルサイズ上映に仕掛けられたとある工夫が賛否を呼ぶかもしれないという懸念が筆者にはある。それは、瞬時的に切り替わる画面サイズだ。通常スクリーンのアスペクト比2.35:1からフルサイズの1.43:1に急に切り替わったかと思えば、再び2.35:1に戻るといった画面サイズの切り替わりが、結構な頻度でやってくるのである。もっとも、画面サイズをシーンごとに切り替えるという演出は、ヴィルヌーヴ監督のこだわりによるもの。これが映画体験の向上に繋がれば良いに越したことはないが、人によっては違和感を覚えてしまうかもしれない。

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

結果的に、このフルスクリーン体験を大いに楽しんだ筆者には、鑑賞前から心待ちにしていたシーンがある。全長400メートルにも及ぶとされる巨大生物サンドワームの登場シーンだ。(この瞬間は予告編でも見られる。)本編では、砂の中からサンドワームが現れ出る、『DUNE/デューン』最大の見せ場が訪れる。その巨大さゆえに、通常上映時はサンドワームがスクリーンをはみ出していたことが強く印象に残っていたが、果たして40%増のスクリーンではどのように映るのか。スクリーンに収まりきるのか。それとも、サンドワームの大きさが勝つのだろうか。IMAX鑑賞前から、この答えを絶対に手にして帰るぞ、と意気込んでいた筆者だったが、いざ登場シーンが訪れるとそんなことは忘れてしまい、轟音を立てながらスクリーンいっぱいに現れたサンドワームに口をぽっかり開けて見惚れてしまっていた。

ギリギリ我に返った筆者の目視によれば、軍配はサンドワームにあがっていたはずだ。40%増のスクリーンでさえ、収めきることができなかったサンドワームのスケール。これには言葉も見つからない。とにかく、最大限に映し出されたその姿は通常スクリーンでは味わえないことだけは確かだ。カメラワークと音、そして最大限のスクリーンを通して伝えられたIMAX上映は、通常上映よりも格段に凄まじい体験をもたらしてくれた。それでは、匂いや動きを加えた4DXはどうだったのか。これがまたスゴいのだ。

劇場を砂漠に。4DXで旅する『DUNE/デューン』

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

4DXといえば、映像の中で見られる“動き”に、振動や匂い、風、スモッグ、フラッシュライトといった五感全てを刺激する演出によって味わえる没入感や一体感が魅力的だが、『DUNE/デューン』においてもその魅力が身体を通して伝わってくる。

繰り返しになるが、本作は砂漠を主な舞台として物語が展開されていく。砂漠というロケーション自体、馴染みのない日本人が大半だと思うが(鳥取県に住んでいる方は別として)、まさに4DX上映が劇場を砂漠に変えてくれるのだ。例えば、砂漠が一面に広がるシーンで座席が上下動する時は、砂に足を取られながら歩いたり、砂漠に沈んだりしている感覚になる。

舞台の大部分が砂漠ではあるものの、砂の惑星アラキスとは対照的な“暗い地”も描かれる。アトレイデス家の宿敵として登場するハルコンネン家の拠点である星、ジエディ・プライムだ。アトレイデス家を陽の存在とするなら、ハルコンネン家はまさに陰の存在。そのダークさは、彼らが身にまとう黒装束や住んでいる荒涼とした土地を通して描かれている。ここで4DXが果たしてくれる大きな役割が、“寒さ”の演出だ。

本編では太陽の日差しが降り注ぐアラキスの砂漠から一転、雨の降りしきるジエディ・プライムに切り替わるタイミングが訪れるのだが、その際、4DX劇場の天井からも水がしとしと降ってくる。ここに冷風機能も加わり、観客は肌寒さを覚えるだろう。こうした瞬時に切り替わる舞台にあわせて繰り出される演出により、無意識に身体を適応させながら浸ることのできる没入感は、通常上映やIMAXでは味わえない4DXの強みだ。

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

『DUNE/デューン』を4DXで鑑賞する上で、筆者が最も楽しみにしていたのは、砂漠で採取できる香料“メランジ”の匂いが、いかに演出されているかということ。『DUNE/デューン』の世界に身を置く上で、こと地球ではなく別の惑星だからこそ“匂い”が重要になってくる。メランジとは、アラキス由来の生物“サンドワーム”の成長過程で産出されるスパイスのことで、抗老化作用や意識の拡張作用といった効能を持つ。ある種“麻薬”的な香料の匂いなど想像もつかないわけだが、スパイスというからには、筆者は勝手にエスニックな香りを期待していた。

しかし残念ながら、いざメランジがスクリーンいっぱいに映し出された時、筆者が想像していたような香りが劇場を満たすことはなく、“メランジらしい”を匂いを嗅ぐことができなかった。そもそもこのスパイスには、匂いがないのかも……?

ここまで温度や匂いの側面について触れてきたが、『DUNE/デューン』の4DX上映で最も満足感を得られたのが、アクションシーンの演出だ。もっとも、本作は2部作構成における前編にあたるストーリーなので、本格的なアクションが登場するのは、中盤以降。そんな中、観客の気持ちを高ぶらせるであろう場面が序盤で登場する。ティモシー・シャラメ演じるポールとジョシュ・ブローリン演じる剣士ガーニイ・ハレックによる格闘シーンだ。原作小説でも有名なこの訓練のシーンでは、座席を通して伝わる振動が臨場感を演出してくれている。ポールとガーニイが繰り広げるアクションの一挙手一投足に激しくも細かな振動が加わり、まさに緊迫の瞬間を創り出しているのだ。

DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

ちなみに、2人による格闘が始まる前にも貴重な瞬間がやってくる。訓練前、ポールはマネキンを相手に一人で剣を振るっているのだが、その際座席には打撃一つひとつにあわせて強めの振動が伝わってくるのだ。つまり、観客もマネキンとなり、ポールに扮したティモシーに叩かれるという疑似体験を味わえるということである。こんな体験、なかなかない。

2つ前の段落で、本格的なアクションシーンは中盤以降と述べたように、本編も半ばを過ぎると物語に大きな展開が訪れる。この展開にあわせて、アクションにも拍車がかかり、4DXが本領を発揮していく。とりわけ、あちこちで爆発が起こる中、上空を抜けるオーニソプターをカメラが追うシーンでは、IMAXのセクションでも言及した“空を飛んでいる感覚”が最大限に出力される。これに限らず、乗り物に関連する本編シーンの4DX演出は、言うまでもなくクオリティが高い。

 DUNE/デューン 砂の惑星
©2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

なお、『DUNE/デューン』の4DX上映は、吹替版でのみ展開される。そのため今回は筆者にとって初の吹替版『DUNE/デューン』でもあったわけだが、主人公ポールの声を担当した入野自由の緻密な技術には舌を巻いた。宇宙全体を巻き込む陰謀に対峙していくことになる青年ポールの感情的成長を息遣いまで丁寧にとらえた声は、ティモシーの演技にある繊細さを見事に表現している。

以上、ここまでIMAXと4DXでの鑑賞レビューをお届けしてきたが、月から見た“地球”と火星から見た“地球”が全く違う風景であるように、2つの上映フォーマットで鑑賞する『DUNE/デューン』には、それぞれが放つ魅力というものがある。両方とも味わっていただくことが理想的ではあるものの、好みもあるだろう。ともあれ、どちらにも共通して言えることは、『DUNE/デューン』の“究極の映像体験”を最大化してくれるということだ。ぜひ劇場で、これを堪能してほしい。

映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は2021年10月15日(金)全国公開。

Writer

SAWADA
SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。

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