『DUNE/デューン』IMAXと4DXダブル鑑賞レビュー、それぞれが魅せる究極の映像体験

2021年も残り3ヶ月を切ったところ。パンデミックに苦しめられる世界は依然として出口の見えないトンネルを突き進んでいるが、そんな暗闇に覆われた時代に希望の光を与えるSF超大作がついにやってくる。『メッセージ』(2016)『ブレードランナー 2049』(2017)など、圧巻の映像美で独自の世界観を生み出してきたカナダ出身の巨匠、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による『DUNE/デューン 砂の惑星』だ。
フランク・ハーバートのSFクラシック『デューン/砂の惑星』(ハヤカワ文庫SF)を原作に、名家の後継者として国を治めていくことになる少年ポール・アトレイデスの成長譚を描く『DUNE/デューン』は、アラキスと呼ばれる巨大な砂の惑星が舞台。水不足の危機に直面している地球の未来と言わんばかりの姿をした惑星で繰り広げられる陰謀や壮絶な戦いが描かれる。
公開に先がけて、ありがたいことに筆者は、2D、IMAX、4DXの3パターンで『DUNE/デューン』を鑑賞するという機会をいただいた。1980年代に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が人々の暮らしに変化を与え、世紀末に『マトリックス』が映像革命を起こしたように、こと向かい風の2021年の映画業界に『DUNE/デューン』は新時代をもたらすと言っても過言ではない。
日本の宣伝では「未来型シネマ・エクスペリエンス」と謳われ、筆者自身も最速レビューで「究極の映画体験」と評させていただいた『DUNE/デューン』の世界。これらの表現は決して大げさなものではなく、観客一人ひとりが体感することになる事実なのだ。そして本作は、上映フォーマットごとに違う新しさを与えてくれる映画でもある。IMAXと4DX、この2つのフォーマットの鑑賞レビューを通して、いよいよ開幕となる『DUNE/デューン』の魅力を最大限に伝えたい。
画面との境界を取り払う、IMAXの進化に驚愕せよ

冒頭にて筆者は大胆にも、『DUNE/デューン』が“映画業界に新時代をもたらす”と記したが、それは決して根拠を持たないままに思ったことではない。約50年前に誕生したIMAXは2021年、この『DUNE/デューン』から鑑賞環境における進化を遂げるのだ。それは「Filmed For IMAX®」という名で呼ばれる。
「Filmed For IMAX®」とは、作り手(=フィルムメーカー)が意図したクオリティの映像と音響が、劇場で変換なしに再現することが可能になるという新システム。これには、米IMAX社も全面協力している。そして『DUNE/デューン』は、「Filmed For IMAX®」作品として世界で初めて認定された映画なのである。
もっとも、どれだけの映画ファンが日頃からIMAXに親しんでいるかどうかは定かでない。なぜなら日本全国500以上ある映画館のうち、IMAXシアターを備えている映画館は40ほどしかないからだ。IMAXを体験したことが無い方にも、『DUNE/デューン』を1つの好機としてデビューを飾ってほしいと思う。
IMAXで『DUNE/デューン』を観た感覚を例えるならば、空を飛んでいる時のよう。とはいえ人間は空を飛べないので、限りなく近い体験を挙げるとすれば、東京ディズニーランドにあるアトラクション「ソアリン:ファンタスティック・フライト」だ。ソアリンとは、空飛ぶ乗り物“ドリームフライヤー”に乗り込み、世界各地の広大な自然や世界遺産を上空から見渡せるアトラクションだが、『DUNE/デューン』のIMAX上映でも、座席に座ったままにもかかわらず、同様の“爽快感”と“高さ”を覚えるのだ。
これには、ヴィルヌーヴ監督と初めてタッグを組んだ撮影監督、グリーグ・フレイザーの貢献が大きい。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)や「マンダロリアン」(2019-)などをフィルモグラフィーに持つフレイザー。広大な『DUNE/デューン』の世界を容赦なく真上から垂直に映し出す“スーパー”ハイアングルショットを効果的に挿入したり、あるいは視線の高さから斜め上にめがけてローアングルを仕掛けたり、そのカメラワークは変幻自在だ。
