『アベンジャーズ』監督、「2時間の映画」の終了を宣言 ─ マーベル映画以降、本当に有効なストーリーとは

アイアンマン、ハルク、キャプテン・アメリカ、ソー、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー、アントマン、ドクター・ストレンジ、ブラックパンサー、スパイダーマン、そしてアベンジャーズ。
これらはマーベル・コミックに登場するヒーローやチームの名前であり、そして、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)という、いまやハリウッドきっての巨大シリーズに内包されている映画シリーズのタイトルである。
それぞれのシリーズが独立し、同時に絡み合いながら展開するMCUの構造は、まぎれもなく「物語」なるものの形式に革命をもたらした。映画にも、テレビドラマにも、コミックにすらなかったストーリーテリングを最前線で牽引するのは、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)のアンソニー&ジョー・ルッソ監督だ。製作会社AGBOを設立し、今後も数々のプロジェクトに携わるルッソ監督は、ついに“2時間の映画という形式の終わり”を宣言する。

MCUが推し進めた「ストーリーテリングの更新」
米Business Insiderの主催するカンファレンス・イベント「IGNITION」に登壇したルッソ監督は、これまで親しまれてきた“2時間の長編映画”なるものに正面から疑問を呈した。ジョー監督はこう語る。
「100年間にわたり、2時間の映画は成功してきたわけです。ただし(今後も)成功させるのは非常に難しくなりつつあって……これからの世代が、2時間の映画をストーリーテリングの主流として捉えるかどうかはわかりません。」
ジョー監督は、問題は「サプライズの欠如」にあると指摘する。あらゆる物語があふれる現代、2時間の映画は「子どもたちでさえ、冒頭の5分を見れば結末を予想できることもある」というのだ。

そんな中、Netflixをはじめとしたストリーミング・サービスは、自社製作のドラマシリーズを一挙に配信するという手立てを講じた。10時間以上を一気見する“ビンジ視聴(一気見)”というスタイルが選択されることから、これらの作品はドラマではなく“10時間の映画”とも形容される。以前、ジョー監督はこのようにも述べていた。
「Netflixやマーベル、スター・ウォーズ。これらの目覚ましい革新は、観客がストーリーテリングの新たな形を熱望した結果です。[中略]次の10年、15年で、物語の語りかたは劇的に変化すると思います。」
今回のイベントで、ジョー監督はこんなジョークを語ったと伝えられている。「スタジオが長編映画にこだわるのは、お偉いさんたちが“みんな、ソネット(編注:詩の形式)が大好きでしょ。100年残るソネットを書こうよ”って言ってるようなものですよ」。
MCUが大ヒットを収めたのち、ハリウッドではユニバース企画の立案や、既存作品のユニバース化が相次いだ。もちろん、成功したものも、そうでないものもある。たとえばワーナー・ブラザース&DCコミックスは、『ジャスティス・リーグ』(2017)で予めヒーローたちを集合させるという方法を採用。同じくマーベル・コミック原作の『ヴェノム』(2018)や『スパイダーマン:スパイダーバース』(2019年3月8日公開)は、ソニー・ピクチャーズの指揮のもと、独自の方法でユニバースを構想している。
しかし、同じスタイルを採るにせよ、むしろ逆の方法を選ぶにせよ、すでにMCUがもたらした圧倒的な影響力から逃れることはできない。ジョー監督は「次の10年、15年で、物語の語りかたは劇的に変化する」と述べたが、すでにMCUはストーリーテリングの更新をすさまじい勢いで推し進めているのだ。

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