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【ネタバレ特集】『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ミステリオ、監督&脚本家が完全解説 ─ ジェイク・ギレンホールはいかに演じたか

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
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この記事には、映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のネタバレが含まれています。すでに作品を鑑賞された方向けの内容となりますのでご注意下さい。なお、このページをSNSにてシェア頂く際は、記事内容に触れないようお願い致します。

ジェイク・ギレンホール、ミステリオを演じる

ここまで長々と整理してきたのは、いかにクエンティン・ベック/ミステリオというキャラクターが複雑怪奇な人物であるかということだ。トニー・スターク亡き今、トニーへの憎しみを抱えながら、虚構を真実として信じさせてまで、新たなヒーローになろうと画策する。異次元からやってきたヒーローだと自分を偽り、最新技術によってクリーチャーとの戦いを演じる。そればかりか、舞台裏では悩める高校生の先輩としても振る舞う…。俳優ジェイク・ギレンホールは、この難役を巧みに乗りこなしてみせた。

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ワッツ監督は、CBR.comにて「ミステリオに二面性が必要だと分かった時、すぐにジェイクの名前が思い浮かびました」と語っている。

「(兄貴分と悪役の)二面性を、説得力をもって演じられる俳優はごく限られているものです。マーベル・ユニバースの新たな主演俳優かもしれないと思えますよね。つまり、きちんとした映画スターの演じるキャラクターは、ピーターの師匠かもしれないし、狂ったヴィランなのかもしれない。ジェイク・ギレンホールの振り切れた二つの面を、ひとつの役柄で観ていただくわけです。僕も観ていて本当に楽しかったですよ。」

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

では実際のところ、ジェイク自身はベックという人間をどのように捉えていたのか。Entertainment Weeklyにて、ジェイクは「魅力的な役柄には、常に光と闇の両面があると思います。それがマーベル映画を素晴らしいものにしているんです」と述べた。

「ベックの意志を常にはっきりさせておきたいと思いました。実際のところ、彼は悪事を働きたいわけではないと思います。彼の目的は後継者になること。かつて決断を下していた人物(トニー)は無責任だったと思っているがゆえです。だから絵に描いたような悪党ではなく、きちんと現実に根ざした人物にしたかった。コメディのトーンのおかげで、そういうことはやりやすかったですね。[中略]ベックの意志はとても純粋。そういう部分が僕は大好きなんです。」

ここで興味深い役づくりのエピソードをひとつ添えておこう。米Yahoo! Entertainmentによると、ジェイクは長ゼリフを一人で語るシーンで、アイアンマン役ロバート・ダウニー・Jr.を意識し、その演技を参考にしていたというのだ。ジェイク自身はこれを認めつつ、それがどの場面だったのかは具体的に明かしていない。しかしベックの長ゼリフといえば、やはりバーで事の真相をまくしたてるシーンではないだろうか。トニーを憎んでいるはずのベックが、なぜかトニーのごとく振る舞うという役づくりには、人物のコンプレックスという深い心理面の構築がうかがえる。

ちなみに、ミステリオについて「絵に描いたような悪党ではない」と言うジェイクは、ピーター・パーカーとの関係性を演じる上で、あることを常に忘れないよう心がけていたという。

「これはピーター・パーカーの物語なんだ、ということを意識していました。じゃあ、クエンティン・ベックがピーターに授けられる知恵とは何なのかと。ベックは、ただピーターが戦わなくてはいけない相手ではないし、そんなふうには演じたくなかった。ピーターに教訓を残せる人物として演じたいと思ったんです。今回の場合、ピーターは、“ベックのことは好きだったのに、彼がすべての元凶だった。どういうことなんだ”という思いを抱えたまま別れることになる。それが良いと思ったんです。」

ただしベックは、ただスパイダーマンに倒されるだけの人物ではない。脚本家コンビが当初から意図していたように、彼は最後の仕掛けを成功させ、ピーター・パーカーがスパイダーマンであることを世間に明らかにし、さらにスパイダーマンは悪人だという嘘を暴露するのだ。ミステリオの放った渾身の一撃は、スパイダーマンの物語をさらなる展開へと導いていく。

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映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は2019年6月28日(金)より世界最速公開中

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』公式サイト:http://www.spiderman-movie.jp/

Sources: SR, Fandango, Comicbook.com, CBR, IW, EW, Yahoo!

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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