【レポート】ウィル・スミス来日、自分の吹替を観て勉強していた ─ 『ジェミニマン』、台風被害の復旧祈る

時折、小雨の降る六本木の夜に、ウィル・スミスの白い歯が眩しい。映画『ジェミニマン』では、最新技術を駆使して全身フルCGで再現された「23歳の自分」と対峙したウィルは、本作のジャパンプレミアに詰めかけた600人、舞台挨拶に集まった500人のファンに陽気に手を降っていた。(記事最後にギャラリーあり)
『アラジン』ジーニー役以来、2019年は2度目のカムバック来日。「たぶん、日本に来るのはこれで10回目くらい」とご機嫌だ。隣には、ハリウッドで最も影響力のあるプロデューサーのひとりであるジェリー・ブラッカイマーと、本作の監督を手掛けたアン・リー監督も並んでいる。この大物3人が揃って来日するのは非常に貴重な機会だ。

『ジェミニマン』プレミアと舞台挨拶
「デジタルで作られた自分の姿を見るまでは、(撮影から)8ヶ月も後のことでした。」大きな口でとびきりの笑顔を見せながらステージに上がったウィルは説明する。語った内容を通訳が日本語で伝えようとすると、通常は背後に立つことになっている通訳を自分より前に「どうぞ」と進ませる気配り。
自分自身と対峙する若い時代の自分を見るのは「すごく変な感じでした。自分が行ってもいないような場所に、自分が行っているんだから」と振り返る。監督のアン・リーは『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012)で、トラをCGで描き出していた。「今回は人間を、年齢を変えて、しかもスーパースターであるウィル・スミスを使ってやる。観客にどう受け取られるのかが分からず、とても難しい挑戦でした」と語った。その製作は「500人のアーティストで2年がかりだった」と、気の遠くなるようなものだった。

大物プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーは、「こんばんは、東京」と日本語で挨拶。まずは、このイベントの前週末に日本に大きな被害をもたらした台風19号の状況を思いやった。「台風の悲劇的な被害にあわれました方々へ。私たちの心と祈りは、皆さまと共にあります。痛ましく思います。皆さまが無事であることを祈っています。」
アン・リーも「私も台湾出身ですので、どんな気持ちかお察しいたします。私の心は皆さまと共にあります。ご無事を祈り、一刻も早い復旧を願います。この映画が、少しでも皆さまの慰めになれば幸いです」との言葉を贈った。

「技術が追いついた」ウィル・スミスが2人
若きウィルは、表情こそウィル・スミスの演技がベースになっているものの、『ライオンキング』のライオン同様に全身をCGで描いている。ウィルは若き自分を演じるにあたって「当時の無垢な感じを出すのが難しかった」と振り返るが、アン・リーに言わせれば苦労のポイントは「今のウィルの方が、当時のウィルよりもよっぽど演技が上達しているので」、再現には一苦労だったとか。「ウィル・スミス1人との仕事は楽しい。でもウィル・スミスが2人もいると、しんどい(笑)。」

この企画は数年前から温めていたものらしく、ブラッカイマーは「当時は技術が追いついていなかったので、実現できませんでした」と説明する。「だから企画を棚上げしていたんです。技術が追いついて、アン・リーのような監督がウィル・スミスを説得してくれるのを待たなくてはいけませんでした。」手短に答えたブラッカイマーだが、実はこの直前に答えたアン・リーの回答が少し長かったため、「次答える時はもっと短くしてね」とウィルがからかう一幕があったためだ。ブラッカイマーには「グッドアンサー!」と、アンには「次答える時はこれを見習うんだよ」と陽気に投げかける。
ウィル・スミス、吹替版を観て勉強していた?
特別ゲストとして、劇中で現在のウィル・スミスの声を吹き替えた声優の江原正士、23歳の若きウィルの声を演じた山寺宏一、そしてヒロインのメアリー・エリザベス・ウィンステッド役でハリウッド映画吹替初挑戦となった女優の菅野美穂が登場。ウィルは江原・山寺と熱いハグを交わす。
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