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『スパイダーマン』マーベルとソニーの和解、トム・ホランドの説得で実現していた ─ 対立報道時、和解の可能性は「100%なかった」

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
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『スパイダーマン』シリーズの次回作をめぐって、ウォルト・ディズニー&マーベル・スタジオとソニー・ピクチャーズが対立していた問題で、ピーター・パーカー役のトム・ホランドが双方を説得していたという。米The Hollywood Reporterが報じた。

2019年8月20日(米国時間)、ディズニー&マーベルとソニーが『スパイダーマン』次回作の契約条件をめぐって対立し、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)からスパイダーマンが離脱する可能性があるとの報道が全世界を駆け巡った。『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)が世界的ヒットを収めたほか、ピーター・パーカーの物語は衝撃の幕切れを迎えていただけに、ファンのショックは極めて大きく、署名活動が乱立する事態ともなっていたのだ。

今回の報道によれば、この第一報が伝えられた時点で、ディズニー&マーベルとソニーが和解する可能性は100%なかったという。当時、交渉は進行中との証言も伝えられていたが、このとき両者は長らく交渉を続けた後だったのだ。当初、ディズニーは『スパイダーマン』第3作の費用の50%を出資し、利益の50%を受け取るという条件を提案したが、これをソニーは拒否。2019年1月、ディズニーは「25%を出資し、利益の25%を受け取る」との条件で再交渉に臨んだが、その後6ヶ月間、ソニーはこの条件にも応じなかった。これを受け、2019年6月にウォルト・ディズニー・スタジオズのアラン・ホルン会長は交渉を終了。すなわち『ファー・フロム・ホーム』が大ヒットするさなか、両社の関係は極めて悪い状態だったことになる。

対立報道の直後、ディズニーの大型イベント「D23 Expo 2019」に登場したトム・ホランドは、ステージ上からファンに向けて「大変な一週間でしたが、みなさんのことを心から愛しています。3,000回愛してる(I love you 3000.)」と発言。その後、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長と同じタイミングで取材に応じ、報道について自身の見解を示している。

トム・ホランドによる初めてのコメントはこちら

トムがディズニーとソニーの双方に対する働きかけを開始したのは、2019年8月25日(米国時間)にD23 Expoが終了した後のこと。ソニーのトム・ロスマン会長にはディズニーとの再交渉をお願いし、ディズニー・カンパニーのボブ・アイガーCEOにも面会して頼み込んだというのだ(トムはソニー製作『アンチャーテッド(原題:Uncharted)』にも出演が決まっているため、ソニーには交渉しやすかったとされている)。トムによる説得は複数回にわたり、最終的には、トムがファンの熱烈な声を双方に示したことが再交渉のきっかけになったという。

こうして『スパイダーマン』第3作はマーベル&ソニーの共同製作で実現することになった。最大の争点であった契約条件は「ディズニーが25%を出資し、利益の25%を受け取る」との内容で合意。一時は頑として応じなかった条件をソニーが呑んだのは、トムの説得が功を奏したところが大きいだろう。ピーター・パーカー/スパイダーマンは『スパイダーマン』第3作のほかにも1作品に登場する契約で、ファイギ社長によれば「複数のシネマティック・ユニバースを横断する唯一のヒーロー」になったとのこと。今後、スパイダーマンはMCUのみならず、ソニー主導の『スパイダーマン』ユニバースにも登場するとみられる。

『スパイダーマン』第3作は2021年7月16日に米国公開予定で、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長と、『スパイダーマン』シリーズのエイミー・パスカル氏がプロデューサーとして続投する。ピーター・パーカー/スパイダーマン役のトム・ホランドが主演を務め、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のジョン・ワッツ監督も契約交渉に入っているという。

ほとんど分裂しかけた両者をスパイダーマンの糸が引き留めた…という言い方もできそうだが、ここはあえて「子はかすがい」だったのだと言ってみたい。「かすがい」とは材木同士を繋ぐための大きな釘のことで、「子はかすがい」とは、たとえ夫婦の仲が悪くとも、子供への愛情ゆえに二人の縁が保たれるという意味。トム・ホランドはファンの間で“世界の孫”ともいわれるだけに、いうなれば「孫はかすがい」だ。それにしてもディズニーとソニーという世界のトップ企業を再交渉のテーブルまで連れていく孫力(まごりょく)、もはやスーパーパワーの域である。

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Source: THR

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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