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【インタビュー映像】『イン・ザ・ハイツ』リン=マニュエル・ミランダ「時代が作品に追いついた」 ─ 2008年初演作、映画版でのアップデートは

イン・ザ・ハイツ
© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

傑作ブロードウェイ・ミュージカルを映画化した『イン・ザ・ハイツ』が、2021年7月30日(金)に全国公開される。この作品における最大のキーパーソンが、原作/作詞/作曲/音楽/製作/出演という一人六役を務めたリン=マニュエル・ミランダだ。

このたび、約12分におよぶリンのインタビュー映像が到着。大学時代に本作を書き始めた当時の思い出から映画版への思い、コロナ禍の公開延期について、そして監督デビュー作『tick, tick…Boom!(原題)』にまつわるエピソードまでがたっぷりと語られている。

社会現象ともいうべき人気ミュージカル『ハミルトン』を生み出し、『モアナと伝説の海』(2016)の劇中曲を手がけ『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018)に出演。2021年8月配信のNetflixアニメ『Vivo(原題)』で音楽・声優を務め、さらにはミュージカル史に残る傑作の映画版『tick, tick…Boom!(原題)』で監督デビューを果たす。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのリン=マニュエル・ミランダの記念すべきデビュー作が、本作の原作舞台『イン・ザ・ハイツ』だった。

映画版『イン・ザ・ハイツ』は2020年の公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期を余儀なくされた。リンは「公開を一年待たざるを得なくなったのは悲しかった。2019年の夏に撮影された本作に、僕はとても誇りを感じていたから」と胸中を明かす。「ようやくワクチンが広まり、観客が映画館に戻れるタイミングで公開できて良かった。きっと、観る人が以前の生活を思い出すきっかけになると思います。多くの人がオンラインでしか触れ合えなかった1年を経て、人々がハグをして、キスをして、道端でダンスをする様子を見て、人との繋がりの大切さを思い出すはず」。

イン・ザ・ハイツ
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「作品に時代が追いついた」

19歳の時に『イン・ザ・ハイツ』の執筆を始め、2004年に脚本家のキアラ・アレグリア・ヒュデスとともに作品の強度を上げていった頃、リンは「当時住んでいたワシントンハイツに焦点を当て、マスメディアには取り上げられない、この移民の街の素晴らしさを伝えたかった」と語る。ニューヨークのワシントンハイツを舞台とする本作は、若者の夢、人々の繋がりなどを描き出す一方で、シビアな社会問題を取り扱った作品だ。2008年のブロードウェイ初演から10年以上、テーマも現代に即した形にアップデートされた。

僕は『イン・ザ・ハイツ』という作品に、やっと時代が追いついてきたように感じています。(初演当時は)未だにラテン系アメリカ人に対するネガティブな先入観が強く、評論家にも“白人化された明るいラテンの作品”と言われました。当時の観客は、犯罪やドラッグがストーリーの中心にないラテン文化の描写を素直に受け止めることができなかったんです。時が経ち、ようやく僕らが独自のストーリーを表現できる舞台が拡大していると感じます。ラテン系アメリカ人が、愛や喜びを表現する作品を受け止められる時がやっと来た、という希望を感じますね。」

「映画版では、アメリカのラテン系コミュニティで常に話題になる“ドリーマー”と呼ばれる不法移民の若者問題など、移民問題全般を強調しました。また、都市開発の影響で地元の低所得層が暮らしにくくなってしまうジェントリフィケーションの問題は、この地域だけでなく、今は世界中で起きていること。(初演の)2008年はその影響が出始めた頃でしたが、今では非常に強く実感できる。生活に苦労しながらも、力強く生きていく人々の様子に観客が共感できるよう、キアラが現代版としてアップデートして書き加えてくれました。」

イン・ザ・ハイツ
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映画版の撮影を振り返り、リンは特に印象に残っている場面として、映画の終盤に用意された、約8分間ものミュージカル・シーンを挙げた。

「『Carnaval Del Barrio』のシーンを撮影できる時間はたった1日だけだった。8分間のシーンを1日で撮りきるのはとても難しいし、現場は暑くて大変でしたね。アンソニー(・ラモス)が、数分ごとに声を張ってみんなを応援し続けてくれた。皆が結束する様子には本当に感動しましたね。そこが映画と舞台の違いだと思います。舞台は同じことを1週間に8回行う耐久性が必要で、楽に感じられる時も、大変に感じる時もある。アドレナリンの源は、初めて客席に座る観客たちなんです。たとえ疲れていても、前日のパフォーマスが失敗していいても、観客には関係ない。初めて観るお客さんのために全力を注ぐんです。一方、映画のアドレナリンは撮影する日だけに得られる。次の日にロケ現場に戻ってくることはできません。何ヶ月もの練習の成果を、撮影の瞬間だけに注ぐ緊張感は、舞台とは違ったエキサイティングな感覚ですよ。」

映画監督業にも進出、今後の展望

これまで舞台・音楽の分野での活躍がめざましかったリン=マニュエル・ミランダは、2021年秋、Netflix映画『tick, tick…Boom!(原題)』で監督デビューを果たす。リンは『イン・ザ・ハイツ』監督のジョン・M・チュウから、映画づくりの多くを学んだと語る。

「『ハミルトン』の成功後に映画に携わることができたおかげで、映像制作を独学できました。3歳の時からミュージカル映画を作るのが夢だったんです。『メリー・ポピンズ リターンズ』のロブ・マーシャル監督、『フォッシー&ヴァードン ~ブロードウェイに輝く生涯』(2019)のトーマス・ケイル監督、そして本作でジョンが監督する様子を観察できたのは、3年間、映画&テレビの専門学校に通ったようなもの。使える技術は全部盗んで、映像作りの極意を学びましたし、知識は『tick, tick…Boom!』に役立てましたね。一緒に仕事をした監督たちは、僕のクイックダイアルに登録されていて、今でも質問に答えてくれます。僕は創作のすべてにおいて“生徒”の立場から取り組んでいるから楽しいし、学ぶことも多いんですよ。」

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リンは「僕自身の夢は、すでに多くが叶いました」と語る。「大学時代に書いた一幕のミュージカルが映画化されるなんて夢にも思わなかった。とても感激しているし、作品が発展したと同時に、自分も成長したと感じています。この作品が若者にインスピレーションを与えていることもうれしい」。

さらなる飛躍にも期待が集まるリンは、「僕はこれからも、ひたすらに作品を創りつづけるだけ」と言い切る。「ヒットする・しないは関係なく、ただ制作に没頭するだけです。無名のラテン系脚本家2人が書いた作品が、ブロードウェイ・デビューを果たしたという奇跡は昔の出来事。僕のキャリアの最大の転機だった。この作品がきっかけで業界に新しい波が起き、映画版が完成したことがうれしいんです。だから、これからもコツコツと創作を続けるだけですよ」。

映画『イン・ザ・ハイツ』は2021年7月30日(金) 全国ロードショー

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THE RIVER編集部THE RIVER

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