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マーベル・スタジオ幹部の退社、VFX過酷労働が背景か

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『アイアンマン』(2008)以来マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を率いてきたマーベル・スタジオの重鎮幹部、ヴィクトリア・アロンソ退社したことについて、米Vatieryは不穏な内部情報を伝えている。

アロンソはマーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長にとって右腕的な存在で、退社の影響は決して少なくない。VFX業界の出身であるアロンソは2023年3月17日の退社までにMCU作品のポストプロダクション、VFXやアニメーションを含む製作部門の代表を務めた。

退社の理由は明らかにされておらず、業界最大手媒体のVarietyにして確たる情報を掴めていない。しかしながら情報によると、アロンソの退社は自主的なものではなく、ディズニー首脳陣らによる意向によるもの、つまり解雇だったという。ケヴィン・ファイギも介入できぬほどの天空からの通達だったそうだ。数多くの関係者からの証言として、リリースしなくてはならない作品数の多さによるプレッシャーや、マーベル・スタジオで相次ぐVFX部門の重労働が背景にあるという仮説が唱えられている。

MCU作品はディズニープラスの登場以来、従来の映画作品に加えてドラマ作品も製作されることとなり、それらのVFXはいずれも映画並みの品質が求められた。映画、ドラマ、短編を合わせると、2021年には8本、2022年には9本もの実写作品がリリースされている。

それまで無敵かのように見えたマーベル・スタジオだったが、作品数の急増に伴って“ひずみ”が生じ始めた。2022年頃からは、同スタジオのVFX製作に携わる複数人がネット掲示板で過酷な労働環境を次々と告発。致命的なリソース不足に伴う慢性的な残業や休日出勤などの実態が指摘され、マーベル・スタジオがいかに無茶難題を押し付けてくるクライアントであるかが語られるようになった。

『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では、これらの問題がある種決定的なものになった。同作の製作チームは「週80時間労働、デスクの下で仮眠」という日々を余儀なくされていたという。新たな関係者がVarietyに証言したところによると、スタジオは撮影を公開1年以上前に終えていたものの、「マーベルが事前に何も考えていない」ためVFX製作現場にしわ寄せが生じ、結果として映画が公開されるとCGのチープさが批判される事態に。興行収入は『アントマン』シリーズ最低となり、MCU新章「フェーズ5」の開幕作としては心許ないものとなった。

これらの製作を統括していたのがアロンソだ。一般には、VFX現場から不満が噴出していることが、アロンソの退社理由と紐づけて考えられている。Varietyでは、「アロンソは現場では“絶対権力者”であり、彼女の機嫌を損ねたアーティストはブラックリスト入りになった」との圧政ぶりを証言する声もあれば、逆に「アロンソは現場ではサポート役でしかなかった」との反対証言も伝えられた。

アロンソ退任報道から1ヶ月前、マーベル・スタジオは作品の発表ペースを落とす意向であることが報じられていた。親会社ディズニーのボブ・アイガーCEOも製作コスト急騰に伴い、製作予算やコンテンツ数を見直す方針を発表している。大ベテランだったアロンソの後任は「1人では賄いきれない」と伝えられているが、これを機に制作環境の課題改善がいよいよ本格的に求められることとなりそうだ。

アロンソの今後は不明。2023年5月には自伝本『Possibility Is Your Superpower(原題)』の出版も予定されている。なお、この退社によって5月公開の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』に響く要素はないという。

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Source:Vatiery

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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