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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』VFXスタッフはいかに物語の秘密を守ったか?

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)は、劇場公開から数ヶ月が経過した現在(2018年8月)こそ内容が語られやすい状況となったが、公開直後は“空前のネタバレ禁止令”が発令されていた作品である。なにせマーベル・スタジオはストーリーが外部に漏れないよう、その全貌を一部の関係者にしか知らせず、出演者にも偽の脚本を配ったほどだったのだ。

では、ヒーロー映画になくてはならないVFXの制作スタッフに対して、マーベル・スタジオはどのような対策を採ったのだろうか? 米ScreenRantのインタビューでは、その制作システムが明らかになっている。

シーンごとに制作会社を分割

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でVFXスーパーバイザーを務めたダン・デリーウ氏は、制作スタッフの中でも数少ない“映画の全貌を知っていた人物”だ。ダン氏はストーリーの秘密を守り抜くため、多くの制作会社が携わった本作の作業においては、あるルールを決めておいたという。

「いろいろな(VFXの)制作会社が関わる際には、秘密を守るため、(本編の)シーンにもとづいて作業をすることにしていました。それぞれの制作会社は自分たちの担当するシーンで何が起こるかを知っていましたが、ほかのシーンで何が起こるのかは必ずしもわかっていなかったんです。」

この作り方は、俳優たちが自らの出演シーン以外をほとんど把握していなかった(スパイダーマン役のトム・ホランドに至っては自分の出演シーンすらはっきり把握していなかった)のと同じ発想だろう。それぞれが十分なパフォーマンスを発揮できるだけの情報を与えることで、映画全体のクオリティは落とさず、しかしストーリーの秘密は守ることができるのである。

「Framestore(編注:英国の制作会社)は、ニューヨークの戦闘でスパイダーマンやマーク・ラファロ(ブルース・バナー)、アイアンマン、エボニー・モー、カル・オブシディアンがどうなるかを知っていました。でもそのほかの場面で何が起こるのかは全く知らなかったんです。(情報は)知る必要に応じて、ですから。
でも、ヴォーミアのシーンを作ったDigital Domain(編注:米国の制作会社)は、ヴォーミアでガモーラに何が起こるかをちゃんと知ってましたよ。彼らはラストのソーのシーンも少しだけ作業していますしね。」

ひとつの制作会社がヴォーミアのシーンやラストシーンを担当したという証言からは、本編のカギを握る重要なシーンはあえて必要以上に分散させず、ひとつの制作会社に任せるというスタンスがうかがえる。工夫を凝らした分業制によって、“ネタバレ厳禁”の物語が外部に漏れることは防がれたのだ。おそらく『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に携わった制作会社は、2018年8月現在、同じ方法をもって『アベンジャーズ/エンドゲーム(邦題未定、原題:Avengers: Endgame)』のVFXに関わっているとみられる。さて、次はどんな秘密が……?

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』MovieNEXは2018年9月5日発売。『アベンジャーズ/エンドゲーム(邦題未定、原題:Avengers: Endgame)』は2019年4月26日(金)公開予定だ。

Source: SR

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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