ジェームズ・キャメロン、Netflixを痛烈批判 ─ 「劇場体験の深みは誰にも否定できない」「アカデミー賞は乗っ取られている」

『アバター』シリーズや『タイタニック』(1997)などの巨匠監督ジェームズ・キャメロンが、Netflixの劇場公開に対する姿勢を痛烈に批判した。
2025年12月5日、Netflixがワーナー・ブラザース・ディスカバリーのスタジオ&ストリーミング部門を買収する契約を締結したことを正式に発表。Netflixは公式の声明にて、「ワーナーによる現在の事業を維持し、映画の劇場公開を含む強みを強化」するとの方針を示した。
もっとも、Netflixのテッド・サランドスCEOは映画の劇場公開モデルを「時代遅れ」と語り、2023年に映画館で大ヒットした『バービー』と『オッペンハイマー』についても「Netflixでも同じくらいヒットしただろう」と発言した人物である。こうした経緯ゆえ、映画業界ではNetflixへの反発が大きくなっているのも現実だ。
キャメロン監督もそのひとりである。米The New York Timesでは、「映画館のように、自分でコントロールできない空間における体験の深みは誰にも否定できるものではない」と述べ、劇場体験への見解を語った。
「(映画館は)リモコンもなく、一時停止もできません。家族がトイレに行ったりピザを注文したりするために一時停止することはできないし、次の夜に続きを見ることもできません。そんなことをしてしまえば、人生で経験するさまざまな体験──つまり、一日中スクロールを続けるような体験と同じく、(映画鑑賞も)断片的で分断された体験になってしまいます。」
以前から「劇場に行くことは、マルチタスクをしないという決断。自分と芸術作品が、全神経を集中させるという契約を結ぶことです」と強調してきたキャメロン。Netflixによるワーナー買収が発表される以前、ポッドキャスト「The Town with Matt Belloni」では、劇場体験を軽んじるNetflixと、これに迎合するアカデミー賞の姿勢を批判していた。
「映画を1週間や10日間上映すれば、アカデミー賞の候補になるだなんて根本的に腐っている。映画は劇場公開のために作られるべきで、劇場を大切にしないアカデミー賞は私にとっては何の意味もない。彼ら(アカデミー賞)は乗っ取られていると思うし、ひどい。Netflixがオスカーを争うべきではないと思います。」
このときキャメロンは、Netflixを買収するのはパラマウント・ピクチャーズが「ベスト」であり、Netflixでは「大惨事になる」と語った。「ワーナー・ブラザースが単なるストリーマーとなり、劇場用大作を失い、雪崩のように衰退を加速させるだけになる」と。
「ストリーミング企業は、彼ら(映画スタジオ)が築き上げた芸術的な基盤のもとに足場を築いてきました。Netflixだけでなく、すべての企業が莫大な資金を投じて一流の才能を集め、その足元をすくったのです。おかげで、(映画製作の)今の予算は『デューン』や『ウィキッド』『アバター』などの映画の半分から3分の1になっています。そして配信からも、大手スタジオの劇場部門からもゴーサインが出なくなるのです。」
キャメロンは、Netflixでオリジナル作品を手がけ、うまくいかないクリエイターが出ている現状について、「それは彼ら(Netflix)の仕事ではないから」だと述べた。「歴史的にはディズニーやパラマウント、ワーナーの仕事だった。ワーナーは『デューン』を見事に成功させました。彼らには、あのレベルの仕事ができるのです」。
▼ ジェームズ・キャメロンの記事
Source: The New York Times, The Town with Matt Belloni



























