J・J・エイブラムス『スター・ウォーズ』新作の監督を断りかけていた ─ 突然のオファーと脚本家起用、怒涛の展開を振り返る

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』として語られてきた、シリーズ最新作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(原題:Star Wars: The Rise of Skywalker)』の“これまで”を、監督のJ・J・エイブラムスが米Fast Companyのロングインタビューにて振り返った。
新3部作の始まりとなった『フォースの覚醒』(2015)を手がけたJ・Jは、創造主ジョージ・ルーカスを除いて、『スター・ウォーズ』で複数回メガホンを取る初めてのフィルムメーカーだ。しかし、彼が『スカイウォーカーの夜明け』の監督に就任したのは2017年9月のこと。米国公開予定日の2019年12月20日は約2年後に迫っていた。
前監督の降板、突然の監督オファー
「本来は僕がやるはずじゃなかった、僕は監督じゃなかったんです。わかりますよね?」。
まだタイトルが発表されていなかった当時、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の監督として発表されていたのは、『ジュラシック・ワールド』(2015)のコリン・トレボロウ。しかし脚本をめぐってルーカスフィルムと折り合いがつかなかったコリンは、そのまま企画を離脱している。後任者には『最後のジェダイ』(2017)のライアン・ジョンソン監督も検討されたともいわれるが、最終的にライアンは新3部作を手がけることとなり、J・Jに白羽の矢が立てられたのである。
「(当時)僕は別の仕事をしていて、うまくいけばそちらが次のプロジェクトになるはずでした。そしたらキャシー(キャスリーン)・ケネディから、“本気で、真剣に参加を考えてもらえませんか”と電話があって。始まってしまえば、すべてはあっという間でした。とにかく信じて賭ける、という感じでしたね。だけど実際は、“ノー、やりません”と言いかけていたんですよ。」
J・Jが『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を断りかけたのは、彼が『スター・ウォーズ』を愛してやまなかったからだ。「自分が大好きなものに近づきすぎるのは危険だ」と考えている彼は、『フォースの覚醒』について「なんとか新しいキャラクターを登場させ、どうにか物語をしかるべき形で続けることができた」と話している。個人的にも『スター・ウォーズ』への愛情を失うことなく、満足する形で仕事を終えることができたと……。
そんな彼の意志を動かしたのは、妻であり、J・Jの製作会社バッド・ロボット・プロダクションズを共同経営するケイティ・マクグラスだった。
「もう一度、というお話をもらった時、これは危ないぞと思いました。つまり、なぜもう一度やるのかと。どうにか(前作を)完成させたのに、何を考えてるんだって。だから実際に“ノー”と言っていたんですが、ケイティが“やるべきだよ”と言ってくれて。最初、彼女はもう(関係者の)誰かに会ったのかなと思いましたね。だけどそのあと、彼女はいつも正しいことを言うからなぁ、って。ケイティはそう言った時、これは自分たちで始めて、続けてきた物語を終える機会になると思ったんでしょう。」
ところが、こうして再登板を引き受けたJ・Jの前に立ちはだかっていたのは、「脚本はない、しかし公開日は決まっている」という状況だった。前任者コリンの脚本は採用されず、スカイウォーカー・サーガの完結編はJ・Jにまるごと託されたのだ。まさに“助けてJ・J、あなただけが頼りです”状態である。
共同脚本家クリス・テリオの起用
J・Jが参加した当時、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は「ストーリーはない、キャストは決まってない、デザイナーも美術もまだない」状況だったという。「スタッフがいて、僕らが参加する前のバージョン(コリン・トレボロウ版)のためのものはありましたが、ここからやり直しだったんです」。
タイトなスケジュールで『スター・ウォーズ』を完成させるため、J・Jは「少なくとも、脚本家がもう一人必要だと思いました」と述べる。そこで起用されたのが、『アルゴ』(2012)や『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)を執筆したクリス・テリオだった。
「誰が一緒に書いてくれるのか全然わからなかったので、まずは長年尊敬していた脚本家、クリス・テリオに連絡したんです。僕もよく知っている人ではなかったんですが、“僕と一緒に『スター・ウォーズ』を書いてみたくはないですか?”と聞いたら、絶叫が返ってきましたね。」
J・Jいわく、クリスの「『スター・ウォーズ』を手がけることへの興奮と恐怖が両方入った」絶叫は、彼にひとつの気づきを与えたという。それは、自分自身が『スター・ウォーズ』の新作を手がけることへのプレッシャーをもはや感じていなかったということだ。
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