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『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』監督、有毒ファンダム問題にコメント「僕もSWの全てを愛してはいない」 ─ 『最後のジェダイ』監督も回顧

ライアン・ジョンソン J・J・エイブラムス
[左]Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/19679067265/ [右]Photo by Dick Thomas Johnson https://www.flickr.com/photos/31029865@N06/25070402198/ Remixed by THE RIVER

「『スター・ウォーズ』ファンが『スター・ウォーズ』を破壊した1年」。2018年12月、米Esquireはいささか挑発的な見出しの記事を掲載した。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)の公開後、オンラインにあふれたヘイトや攻撃の数々に厳しい目線を向ける内容だった。

激しい賛否両論を呼んだ『最後のジェダイ』には、公開直後から「正史から外せ」「エピソード8を作り直せ」との声が上がり、ライアン・ジョンソン監督やローズ役のケリー・マリー・トランにはバッシングや差別発言、脅迫の言葉が寄せられた。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018)ロン・ハワード監督にさえ、「抗議のために『ハン・ソロ』は観ません」とのコメントが送られる始末。『最後のジェダイ』をめぐる罵詈雑言があふれ、ケリーがInstagramから去った1年間について、マット・ミラー記者は「荒らしが勝利した1年」と記した。

J・J・エイブラムス、「有毒ファンダム」どう捉える

それから約1年が経過した今、最新作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の公開を控えて、ミラー記者はJ・J・エイブラムス監督へのインタビューを実施。「オリジナル3部作やプリクエル3部作の当時と現在で、『スター・ウォーズ』に対するファンの反応が変わっていることをどう捉えていますか」と率直に尋ねた。これに対し、J・Jは「僕自身は、“なにがすべてを変えたのか”がより大きな問題だと思います」と答えている。

「『スター・ウォーズ』への反応には、攻撃やネガティブなものが増えました。彼ら自身が“ファンダム・メナス”と呼ぶものです。けれども、これは決して『スター・ウォーズ』特有のものではありません。」

『エピソード1/ファントム・メナス』(1999)というタイトルは日本語で「見えざる脅威」の意。“ファンダム・メナス”とは、ファンの攻撃やアクションを「ファンダムの脅威」としてもじったものだ。またJ・Jの言うように、『最後のジェダイ』に端を発した有毒ファンダム(toxic fandom)問題は、いまやマーベル映画「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011-2019)などの人気作にしばしば付いて回っている。

「自分が対立の種を蒔いていないか、負のクリック稼ぎをやっていないか、時にはゲームを遊ぶような感覚でいやしないか。そんな時代を僕たちは生きていると思います。僕が『スター・ウォーズ』を愛しているのは、作品に広い心があるから。プリクエルにせよオリジナルにせよ、僕がすべての作品の出来事をすべて信頼していて、すべてが好みなのかと言われれば、ノー。だけど、『スター・ウォーズ』を愛しているかと言われればイエスです

単純な考えなのは分かっていますが、僕は、もっと余裕があったころに戻れることを願っています。愛するもののすべてを気に入らなくてもいい。夫や妻、パートナー、友人がいる人は、相手のことや相手の行動をすべて愛していて、すべてに賛成なのでしょうか? 違いを認め、受け入れることに戻るべきだと思うのです。『スター・ウォーズ』ファンの一人として、僕がそれぞれの作品のすべてを愛しているかと言われれば、そんなことはありません。だけど『スター・ウォーズ』を愛しているかと言われれば、もちろん愛しています。大好きですよ。」

『最後のジェダイ』ライアン・ジョンソンの2年間

一方、『最後のジェダイ』で批判の矢面に立ったライアン・ジョンソン監督は、時には荒らしとの対話を試みたり、時には煽り返したりと、その後もTwitterでのコミュニケーションを継続中。米Deadlineにて、ライアンは「今でもTwitterをやっているみなさんの幸運を祈ります。(Twitterには)大変なこともあれば、素晴らしいこともある。だから僕たちは続けているんだと思います」と述べた。“鋼の心”としか言いようのないメンタリティの持ち主であるライアンは、SNSでヘイトにさらされた数年間について「とても良いことだった」とさえ言っている。

「『最後のジェダイ』を作る以前は、インターネットで誰かに憎まれることなんてありませんでした。1年に1回、ネガティブなツイートが届いただけでパニックになっていたんです。“大変だ、僕を嫌ってる人がいる。なんとかしなきゃ”と。だけど今では本当に感謝しているんですよ。それってつまり、自分の自尊心が、オンラインでみんなに好かれることに関係していたってことだから。サバイバルを経験して、そういうものを(自尊心から)切り離すことができたんです。」

もっとも、ライアン・ジョンソンはタダでは転んでいない。ダニエル・クレイグ&クリス・エヴァンスら出演の最新作『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2020年1月31日公開)には、『最後のジェダイ』公開後の経験を大いに活かしたというのである。

「オンライン・カルチャーの現状を(作品に)組み込んでいます。そこでは『スター・ウォーズ』を作ろうが、料理番組を作ろうが、何をしようが怒鳴り散らされる。誰もが笑えるであろう形で、そのことを映画にしようと思いました」。

映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は2019年12月20日(金)日米同時公開。ちなみに『ナイブズ・アウト』は、米Rotten Tomatoesにて批評家スコア96%、観客スコア93%という高評価を獲得している(12月2日現在)。

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Sources: Esquire(1, 2), Cinema Blend, Deadline

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。