【インタビュー】『ジョジョ・ラビット』ユダヤ人少女役トーマシン・マッケンジー、撮影中ジョジョ役ローマン君の「命を救ったんです」

第二次世界大戦下のドイツを舞台に、空想上の友達であるヒトラーに背中を押されながら立派な兵士を夢見て日々奮闘する10歳の少年ジョジョを描く、タイカ・ワイティティ監督最新作『ジョジョ・ラビット』が公開中だ。
第44回トロント国際映画祭にて最高賞<観客賞>に輝き、第92回アカデミー賞では作品賞含む6部門にノミネートされている世界大注目の作品は、2020年1月17日(金)より日本でも公開がスタート。1月26日(日)までの10日間で累計興収は1億7,000万円を突破し、日本中で大ヒットを記録している。
「ユダヤ人=悪」と教えられてきたジョジョの前に突如現れたユダヤ人少女エルサをユーモアたっぷりに演じたのは、ニュージーランド出身の女優トーマシン・マッケンジー。2018年出演作『足跡はかき消して』では、同年の放送映画批評家協会賞の若手女優賞にノミネートされ、ティモシー・シャラメ主演のNetflixオリジナル映画『キング』(2019)では、ヘンリー五世に扮するティモシーの妹フィリッパを演じるなど、現在19歳にしてハリウッドが今最も注目する若手女優のひとりだ。

THE RIVERでは、トーマシンに電話インタビューを行い、『ジョジョ・ラビット』の撮影秘話や、役作りに関するエピソード、今後の展望について聞くことができた。
「私、ローマンの命を救ったんです」ほっこり撮影秘話
──まず始めに、「エルサ」というキャラクターについてお聞きしますね。隠し扉に匿われたユダヤ人の少女ということで難しい役どころだったと思いますが、エルサを演じてみていかがでしたか?
とっても大変でした。「エルサ」という役柄自体がこれまでの歴史を背負っていて、この役柄を通して物語を伝えることに、とても大きな責任があると感じたんです。できる限りのリサーチをして、全力でこの役を演じきることができれば、と思いました。演じていて難しい役ではありましたが、過去の残虐な行為を世界全体が忘れないように何度も繰り返して伝えることが大切だと思ったので、「エルサ」という役を演じる機会に恵まれてとても幸運でした。

──エルサと同じユダヤ人の少女、アンネ・フランクの物語『アンネの日記』は日本でもとても有名で、エルサを見てアンネの姿を思い起こした観客もいると思います。実際は役作りをする上で、何か意識したことはありますか?
この役の話を頂いてすぐに、それこそ『アンネの日記』やアンネのような経験をされた方々が執筆した物語を読みました。第二次世界大戦やホロコーストなどの歴史についても、何度も何度も学び直しましたね。でも、役作りのなかで一番重要だったのは、プラハ(映画の撮影地)に着いてすぐにユダヤ人地区やユダヤ教の礼拝堂、プラハのはずれにあった強制収容所を訪れたことです。役作りにおいては、多くの歴史を持つ場所に、物理的に身を置くことが一番重要なことだと思います。
──主人公ジョジョを演じたローマン君にとっては、本作が映画初出演のお仕事だったと伺いました。ある意味ローマン君との共演で、ご自身のキャリアの始まりを思い出したのではないでしょうか。懐かしい気分になりましたか?
そうですね…少しだけかな。ローマンは私が最初に映画出演した時よりもずっと感情的に大人でしたね(笑)。演技も私より上手で…。私は映画に初めて出演したのが9歳なんですけど、かなり楽しんでいた記憶があります。ローマンみたいな大人っぽさ、責任感はなかったですね(笑)。
──撮影中、ローマン君とのエピソードで印象に残っていることはありますか?
これ、あんまり話していないんですけど、私、ローマンの命を救ったんですよ!
──えっ、命を救ったんですか?
そうなんです!撮影最終日のことなんですけど、スタジオでローマンのお母さん、カミラさんとおしゃべりしていたんです。その時、誰かが咳をしているのが聞こえて。なんだか息を詰まらせているような声がしたんです!ふたりでローマンじゃない?って彼の部屋に駆けつけてみたら、そこで喉に何か詰まらせているローマンがいて…。なんとか吐き出させてローマンは無事だったんですけどね。あの子、魚の骨を喉に詰まらせていたんですよ(笑)。これがローマンとの一番の思い出かもしれませんね。
──劇中には暗い部分もありましたが、撮影中に何かほっこりする場面はありましたか?
ローマンにはずっとほっこりさせられっぱなしでしたよ。とても素晴らしい機会に恵まれて、美しい仕事ぶりで。彼の美しい演技を観ていることが大好きでしたね。

──撮影はチェコのプラハで行われたと聞きました。観光など、滞在中は何か楽しいことをしましたか?
『ジョジョ・ラビット』の撮影中に、ロンドンに行ってきました。というのも、同じ期間にNetflixオリジナル映画『キング』の撮影があって、ロンドンの郊外に滞在していたんです。その間は旅行したり、街を散策したりしました。それから、プラハの近くにある国際映画祭が開かれる「カルロビ・バリ」という都市に行きました。カルロビ・バリまで田舎道をドライブして楽しみましたね。『ジョジョ・ラビット』の撮影中は遠出は許されていなかったので、思うようには旅行はできなかったです…。
タイカ・ワイティティ監督の『ジョジョ・ラビット』への熱い想い
──エルサの存在を知る唯一の人物であり、ジョジョの母親でもあるロージーを演じたスカーレット・ヨハンソンとの共演はいかがでしたか?
スカーレットとの撮影はとっても楽しかったです。ずっと尊敬していた女優だったので、一緒にお仕事ができてワクワクしましたね!彼女って、とても愛くるしくて愉快な人なんです。一緒にいてとても刺激になりましたし、今も仲良くさせてもらっています。
──タイカ・ワイティティ監督とはいかがでしょうか。そういえばトーマシンさんもタイカ監督もニュージーランド出身ですけど、『ジョジョ・ラビット』で共演する前からお互いに知っていたんですか?
タイカはニュージーランドではかなりの有名人でしたし、成功者でもありました。しかも、一風変わってるけどカッコいい映画をたくさん世に出していたので、ずっと尊敬していました。けど、『ジョジョ・ラビット』以前は会ったことはなかったんです。初めて面会したのはスカイプを通して。『ジョジョ・ラビット』の2回目のオーディションだったんですけど、タイカは「ザ・良い人」って感じで、面白くてユーモアのある方でした。同時にこの作品に対してはかなりの情熱を注いでいたので、彼にとって意味のある作品なんだと思います。たくさんのアイディアを盛り込んでいましたし。タイカのようなレジェンドの作品に携われてとても光栄でした。
──タイカ監督は『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)でも監督をしていて、スカーレット・ヨハンソンもブラックウィドウを演じていますよね。ずばりマーベル映画に出演してみたいですか?
そうですね。マーベル・ユニバースのスーパーヒーローのー員になれたらとっても楽しいでしょうね。あのグループの中に加われたらすごくカッコいいですよ。だってスーパーパワーを持って、しかもヒーローになることができたら、地球上の誰にとっても願ったり叶ったりでしょ?

いつかエイリアン役を演じたい?
──映画全体を通して素晴らしかったところはありますか?
プロダクション・デザインですね。小道具など何から何まで素敵でした。プロダクション・デザイナーのラ・ヴィンセントという方がチームを率いてくれました。彼が手掛けてきた作品が何度も映画賞でノミネートされていて、今回も(2020年第92回)アカデミー賞美術賞にもノミネートされていました。※とにかく、そんな環境で働くことがとても大好きでした!
※ラ・ヴィンセントは本作で、アカデミー賞美術賞ほか、英国アカデミー賞美術賞、美術監督組合賞長編映画賞にもノミネートされている。
──今後も出演作が続くとお聞きしました。将来、どのような役を演じてみたいですか?
私は、何か特定のジャンルという風に自分を縛りたくないので、どんな役でも来るもの拒まず、まずは脚本を読むようにしています。それから人と会って、作品に携わってワクワクするかどうかを確かめてみたいんです。こんな機会に恵まれて私はとてもラッキーなんだと思います。そういえば、ずっと前から言っていることなのですが、エイリアンとかエルフとか、非現実的なキャラクターを演じてみたいんです!だから、そういうオファーが来たら嬉しいですね(笑)。

ハローキティやジブリが大好き
──好きな映画監督は誰ですか?
(しばらく考え込んで)…そうですね、良い質問だなぁ。今までにご一緒した監督はみんな尊敬しています。それぞれ視野が広く、ユニークですし、彼らの作品はどれも美しくて。『ピアノ・レッスン』(1993)のジェーン・カンピオン監督(NZ出身)とは是非ご一緒したいですね。ケン・ローチ監督の作品も好きです。ご一緒したい素晴らしい監督がたくさんいるので、絞るのが難しいです…。
──では、好きな俳優は誰でしょう?
ミシェル・ウィリアムズの大ファンなんです。とても素晴らしい女優さんですよね!あとは先日『ずっとあなたを愛してる』(2008)という映画を観たんですけど、主演のクリスティン・スコット・トーマスの演技がとても美しかったですね。それから『メランコリア』(2011)のキルスティン・ダンストも素敵でした。他には、ベン・フォスター、ヴィオラ・デイビス、ウィレム・デフォーかな。
──80〜90年代など、古い映画は何か観ますか?
昨年(2019年)、『Last night in Soho(原題)』(2020年9月米公開予定)という作品の撮影をしたんですけど、この役作りのためにも1950年代以降の映画を観ました。『風と共に去りぬ』(1939)や『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)、『雨に唄えば』(1952)とか、とても古い映画です。それから、宮崎駿監督の作品も全部好きなんです!『となりのトトロ』、『千と千尋の神隠し』、『ハウルの動く城』も大好きですね。
──最後に、日本のファンもトーマシンに会いたがっていて、是非来日してほしいと願っています。来日の予定はありますか(笑)?
実は12歳の時に親友と日本を訪れたことがあるんです!とっても楽しかったです。いままで見たことないテクノロジーが発達しているような印象でしたね。それから私、小さいものに夢中で、ハローキティが好きなんです。トーマシンも近々日本を訪れますよ。

時折、一人称に「トーマシン」と自分の名前を織り交ぜながら、とても気さくに話してくれたトーマシン。インタビュー中に言及された『Last night in Soho(原題)』とは、『ベイビー・ドライバー』(2017)のエドガー・ライト監督による本格スリラー作だ。トーマシンはこの作品で、アニヤ・テイラー=ジョイとダブル主演を務める。『ジョジョ・ラビット』では難しい役どころを魅力たっぷりに演じ上げた彼女の、今後の更なる活躍に期待しよう。
映画『ジョジョ・ラビット』は2020年1月17日(金)より公開中。
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