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【ネタバレ】『ジョーカー』エンディング解説、アーサーの年齢問題も ─ トッド・フィリップス監督とホアキン・フェニックスが語る

ジョーカー
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

この記事には、映画『ジョーカー』の重大なネタバレが含まれています。必ず本編の鑑賞後にお読みください。


『ジョーカー』ラストシーンが意味するもの

主人公アーサー・フレックは、職場を解雇され、出生に秘められた秘密を知り、隣人の女性と交際していることが自身の妄想の産物だったことを悟り、次々に社会における居場所を失っていく。自分を陥れた元同僚を殺害したアーサーは、憧れのコメディアンであるマレー・フランクリンの番組にゲスト出演するも、マレーにすら嘲笑の対象として扱われている事実を前に、「失うものがない男を怒らせたらどうなるのかを思い知らせてやる」と、スーツに隠していた銃でマレーの額を撃ち抜くのだ。

生放送中に起こった殺人事件のあと、アーサーはパトカーで暴動の起こる街を移動する。暴徒の運転する救急車がパトカーに突っ込み、気を失ったアーサーを、ピエロのマスクを被った男たちが担ぎ出すと、ついにアーサーはジョーカーとして“覚醒”するのだった。炎の上がる街を見つめながら、ジョーカーは一人きりで踊ってきたダンスを、ゆるやかに踊り始める。

しかし場面が変われば、そこはアーカム州立病院。精神医、あるいはソーシャルワーカーらしき女性と話をするアーサー/ジョーカーは、ひとつのジョークを思いついたようだ。瞬間、映像が切り替わり、そこには倒れている両親の間に立つ少年ブルース・ウェインの姿。「どんなジョークかって? 君には分からない」。部屋から出てきたジョーカーは血の足跡をべっとりと残しながら、歩き、踊り、そして病院の職員から逃げ回る。凄惨なクライマックスから一転し、ラストシーンは“コメディ”らしい風景だ。

ジョーカー
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

ところが、こうしてラストシーンの意味がひとまず通じるように展開を記してみても、これが『ジョーカー』のクライマックスからエンディングの一部始終と言っていいのかは定かでない。なぜならラストシーンにおいて、なぜアーサーがアーカムにいるのかは判然としないからだ。人気コメディアンを殺害し、暴動を煽ったためだろうか。あるいは、アーサーはなにか別の理由で入院していて、描かれてきた物語のすべては、彼が思い描いた(あるいは語った)ジョークのひとつにすぎないのだろうか。それとも、物語には事実とジョークとが混在していると考えるべきなのか……。

Los Angeles Timesにて、フィリップス監督は、アーサーがなぜアーカムにいるのか、その理由さえも明らかにしようとしていない。

「僕とスコット(・シルバー、共同脚本)、ホアキンは、アーサーが何を抱えているのかという話を一度もしたことがないんです。僕は“アーサーはナルシストでね、これで、こうで”なんて絶対に言いたくなかったし、ホアキンに俳優としてそういうことを調べてほしくもなかった。ただ、“彼は狂っているのだ”と言うだけでした。精神を病んでいるのかどうかさえ分かりません。」

謎めいたアーカム州立病院について、フィリップス監督はほとんど何も明かさない構えだが、ひとつだけ確かなことがあるという。それは、最後にジョークを思いついたアーサーの身体に現れる反応だ。

あのシーンだけが、彼が唯一純粋に笑っている場面です。この映画には、いくつかの笑い方が登場します。アーサーの苦しみから生まれる笑い、彼が大勢の一員になろうとするときの偽物の笑い――これが僕のお気に入りなんです――、そして最後にアーカム州立病院の部屋で見せるのが、唯一、彼の心からの笑いなんですよ。」

ジョーカー
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics

アーサー・フレックの年齢問題、解けない謎の数々

ところで『バットマン』ファンなら気になるのは、のちにバットマンとなるはずのブルース・ウェインとアーサー・フレックの年齢差だろう。多くのコミックや従来の映画において、バットマンとジョーカーの年齢は近いものとして設定されることが多いが、『ジョーカー』の2人には親子ほどの年齢差がある。ならば、アーサーの年齢設定はどうなっているのか。この問いかけに対し、やはりフィリップス監督は「一度もきちんと考えたことがありません」と質問者を煙に巻いている。

この“年齢問題”は、『ジョーカー』の物語がどこまで事実として起きたことなのかを確定できないのと同じく、また異なる仮説を本作にもたらした。つまり、バットマンとジョーカーの年齢に差がありすぎるため、アーサー自身はジョーカーではなく、のちにジョーカーとなる人間を覚醒させた人物ではないかというのだ。私たちのよく知る“本物のジョーカー”は、たとえばトーマス・ウェイン夫婦を射殺した男など、暴徒と化した人々の中にいたのではないかと……。

つまるところ、『ジョーカー』は謎だらけなのである。そして言うまでもなく、これはフィリップス監督らが完全に狙って仕掛けたもの。試写の段階から、関係者や友人たちの間でもあらゆる仮説が出ていたそうで、監督は「映画の内容はすべてアーサーのジョークにすぎない説」も、「アーサーは本物のジョーカーじゃない説」も早いうちから把握していたという。米Colliderにて、監督はこう述べた。

「この映画を観て、“あっ、分かった”という人がたくさんいますよね。僕は彼らが正しいかどうかは言いませんけど。“分かった、彼はジョーカーじゃなくて、ジョーカーに影響を与えた男なんだ”と言われれば、“その見方は面白いですねえ”と。そしたら“どうして?”って思われるんですが、(アーサーとブルースの)年齢差とか、そのほかにもいろいろ、僕からすると“面白いですねえ”ですよ。」

ジョーカー
ホアキン・フェニックス&トッド・フィリップス監督 © 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & © DC Comics”

ちなみに監督は、こうしたファンの仮説について「自分では調べないようにしています、答えを言いたくなってしまうから」と言いつつ、「あらゆる見方ができるのが良いところなんです」話している。主演のホアキン・フェニックスも、これと全く同じことを語ったのだった。

「今回の脚本やみなさんの反応で面白いのは、みんなが別々の感覚を抱くところ。あるものが何を意味していて、どこが現実でどこがそうでないのか、みなさんが全く違うことを考えるところです。だから、もし僕自身の意見があったにせよ、それをお話しするつもりはありません。普通の映画にはない形で観客を作品に参加させることが、この映画の面白さのひとつだと思っていますから。映画に参加して、どれが現実でどれがそうでないのかを判断するのが楽しいんですよ。」

とはいえフィリップス監督は、いずれ『ジョーカー』で描いた謎の答えをすべて明らかにするつもりだという。

いずれ、僕たちが何を考えていて、執筆時に何を意図していたのかをお話しすることにします。それは大切なことだと思っていますが、ただし今じゃない。[中略]この映画を振り返るのが楽しくなるほど、遠い未来のことになるでしょう。なぜなら、みなさんの体験を邪魔したくないから。これから出てくるかもしれない仮説の妨げになりたくないからです。それこそがこの映画を面白いものにしてくれるんだと思いますしね。」

映画『ジョーカー』は2019年10月4日(金)より全国公開中。

Sources: Los Angeles Times, Collider, Entertainment Tonight, Cinema Blend

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。国内舞台作品の執筆・創作にも携わっています。ビリー・アイリッシュのライブに行きたい。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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