まだまだ人気!『ジャングル・ブック』ネタバレありレビュー リピーター続出の理由は動物が可愛いだけじゃなかった!
ディズニー映画『ジャングルブック』、少年以外はフルCGで、ジャングルの木や葉、滝、川などの風景や動物の皮膚感や毛並み、動き、表情(特に目)が細やかで本物みたいだと話題になっていますね。
オオカミの子どもがカワイすぎ。ラクシャに抱きつきたい!バギーラに惚れました!
モーグリの赤ん坊の頃もカワイイ!あの子だれなのでしょう?まさかモーグリの縮小版CGだったり??
走る。走る。走るー!
冒頭からスピード感のあるシーンに惹き込まれます。
しばらく緊迫感が漂う音楽が続き、ストーリーを引き立てています。
歌うシーンが2箇所ありましたが、ミュージカルではありませんので、突然セリフを歌い出すことはなく、自然で違和感を覚えません。
・エンドロールの音楽の2曲目は、本作でヘビの声を担当しているスカーレト・ヨハンソンが歌っている『Trust in Me 』です。
まるで『007』シリーズの冒頭か最後に流れるミステリアスな女性ヴォーカルのようで、聴き入ってしまいます。
大人が「動物目線」で観て、それぞれのキャラの心情を想像してみると見えてくるものがあります。
なぜバギーラは何度も「ジャングルの掟」を守れと教えるのか
オオカミに育てられたからといって、人間がオオカミになれるわけではありません。
ジャングルという共同体の中で動物たちと上手くやっていくには、掟を守らせることはモーグリを守ることでもあったのです。
普通にしていても、人間というだけで恐れられているのですから。
「郷に入れば郷に従え」ですね。
だから水飲み場で道具を使ったことをたしなめたんです。あれは、ちょっとした“ズル”。
モーグリは、どうしてジャングルの掟が大切なのか理解できません。
でも、バギーラはモーグリを愛するが故に厳しく導いているのです。

バギーラが威厳のある父親の代わりなら、無償の愛を注ぐラクシャは母そのもの。
眼差しが柔らかく、モーグリを優しく受け入れ心配しています。
これは人間と同じで、両親としてバランスがとれていると思うのです。

バルーとの出会い
ジャングルの奥で迷い、ヘビのカーの甘い罠にはまりそうになるモーグリ。
ハスキーで艶めかしいスカーレット・ヨハンソンの声。
「私を信じて」
瞳の奥に宿る不思議な力。
人間にもいますね、こういう美しく妖艶な女性。
世の中の男性は見かけや言葉にだまされないで下さいね。

それを助けたのがクマのバルーです。
荒い鼻息だけを聴かせ、その後鼻のドアップが現れた演出には、思わず吹き出してしまいました。
ここからガラッと楽しい音楽に変わります。

「ジャングルの掟に縛られるなんて、考えの押しつけだよ!」と指摘します。
怠け者で楽天的で、自由な発想の持ち主のバルーは、モーグリに少しずつ影響を与えていきます。
エンドロールでは、ドクター・ジョンが歌っています。
https://youtu.be/WQ2C68Ji1d8
シア・カーン

過去に赤い花(火)によって人間に傷つけられました。
それを恨み、復讐心から同じ人間であるモーグリを殺そうとします。
私は、残忍ですが人間から“恐れ”を植え付けられた彼を悪役としてみることができませんでした。
むしろ同情します。
人間にとって火は上手く使えば恐ろしいものではありません。
ジャングルの動物にとって火は一番恐れるもので、特にシア・カーンにとっては目だけではなく、プライド(心)も傷つけられた痛みと恐れの象徴なのです。
そう考えるとシア・カーンは本作では見方によっては魅力的なキャラでした。
人間も、恐れから攻撃的になる人もいますよね。
キング・ルーイ

赤い花を手に入れて、ジャングルを支配できると思っている権力・野心の塊。
人間のずる賢い“傲慢さというエゴ”のシンボルです。
キング・ルーイの声はクリストファー・ウォーケンですね。
彼が歌っている『I wanna Be Like You』(君のようになりたい)は味わい深い歌声で、ここぞというシーンで使われ、心情がよく現れていて上手い演出でした。
2つの伏線と回収
ゾウ
バギーラから「ゾウは創造主(神)だから、お辞儀をして崇拝しないといけない」と教えられます。
その時、子どものゾウがチラッとモーグリを見るのです。
後に人間の道具を使ってこの子どものゾウを助けたモーグリ。
掟に従ったからではなく「ただ救いたかった」という本能的なもの、思いやりから動いたんですね。
これがまたラストにつながってきます。
死んだ木
冒頭、腐って折れそうな枝のことだとバギーラから教えられ、最後のシア・カーンとの戦いで活かされます。
モーグリの選択は?
ジャングルから出て村に戻ろうとしていましたが、アキーラが殺されたことを知ってシア・カーンと対決しようとするモーグリ。
赤い花を捨て、信念と自分の意志で戦おうとするモーグリの周りには仲間たちが集まってきます。
「ジャングルの掟は青空のように青い真実。掟を守るオオカミは栄え、破れば死あるのみ。
木に巻きつく蔓(つる)のように掟はゆきわたる。群れの結束はオオカミの力。オオカミの結束は群れの力。」
名シーンですね。
オオカミのようにトラに向かっていくモーグリに「人間として戦え!」とバギーラは言います。
モーグリはジャングルの掟の大切さを理解し、その上でバルーのような柔軟な考え方も学び、キング・ルーイの傲慢さも知りました。
この作品は、オオカミらしくでも人間らしくでもない、このジャングルという共同体の中で、自分が自分であること、「自分の生き方」を見つける旅路と成長の物語でした。
人間も、「女らしく」とか「男らしく」など「~らしく」などとよく言いますが、あまり意味がないのではないでしょうか。
人は生まれつき持っているものに加えて、赤ん坊から大人になるまでの間に、育った環境や出会った人から様々な考え方や価値観を刷り込まれます。
そんな“鎧”を脱ぎ捨て、本当の自分とは何か、どんな自分でありたいか、を探していくことが「生きる」ということなのかもしれませんね。
「出会いと経験は宝」だと改めて気づかされた作品でした。
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