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征服者カーンって何者?マーベル新ヴィランを全部予習

アントマン&ワスプ:クアントマニア
(c)Marvel Studios 2023

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では、サノスに代わるMCUラスボス級ヴィラン、征服者カーンが登場する。『クアントマニア』に備えて、カーンについての事前情報、コミックでの設定、今後予想される展開や、演じるジョナサン・メジャースの凄み、裏エピソードを解説しよう。

MCUの新しいヴィランとなる征服者カーンの基本概要について、「マルチバースのあらゆる時空に絶えず存在し、別世界の自分自身と戦い続けているヴィラン」と説明すると、「何だかややこしそうだ」と構えてしまう方も多いだろう。実際、コミックでの設定や歴史はなかなかややこしいのだが、MCU版ではどう描かれるか。これを読み解くヒントとなるのは、ドラマ「ロキ」シーズン1の第6話『とわに時を いつでも』に登場した“在り続ける者”による解説だ。

「ロキ」“在り続ける者”の説明 ポイント整理

ロキ
(C)2021 Marvel

「ロキ」に登場した“在り続ける者”は事実上、征服者カーンの変異体だ。このエピソードでは、征服者カーンとその変異体たちがどのように存在していたか、そしてどのように登場するかについて、基本的な説明がなされた。以下のように整理しよう。

  • “在り続ける者”は時間の流れの全てを把握しており、(自分が知る時間軸の範囲内においては)相手の動きが読める。
  • “在り続ける者”は別次元の自分自身を恐れいている。
  • 31世紀の別世界に生きていた科学者としての“在り続ける者”(の変異体)がマルチバースを発見する。しばらくは変異体同士で協力し、互いの宇宙を発展させ合っていたが、やがて征服欲に駆られた邪悪な個体が出現し、マルチバース間での全面戦争が勃発した(多元宇宙間戦争)。
  • “存り続ける者”は時空を食い尽くすクリーチャー、アライオスを発見。この力を武器として活用し、多元宇宙間戦争を終結させた。
  • “存り続ける者”は自身の時間軸(神聖時間軸)だけを切り離し、時間の流れを管理して、これ以上多元宇宙が発生するのを防いでいた(TVA)。
  • “在り続ける者”は、多元宇宙の混沌から時間軸を守るためには、独裁者が必要だと考えている。
  • シルヴィ(ロキの変異体)が“存り続ける者”を殺害したことで、無数のマルチバースが発生。神聖時間軸は無防備になり、征服者カーンを含む無数の変異体が解放されることとなった。

これを踏まえて、征服者カーンが原作コミックでいかに描かれたかをチェックしてみよう。MCUはしばしば原作コミックの設定を改変するが、映画に活かされそうな部分もあるので、一度確認しておくと理解が深まるはずだ。

征服者カーンとは?原作コミックでの設定紹介

コミックにおけるカーンの本名はナサニエル・リチャーズ。ファンタスティック・フォーのリーダーであるリード・リチャーズの父と同姓同名だ。

ナサニエルは繁栄した30世紀の未来に生まれた。そこは悦楽と娯楽に溢れた理想郷だったが、若きナサニエルにとっては退屈な世界だった。刺激を求めたナサニエルは過去のヒーローに憧れるようなり、やがて祖先が残したタイムトラベル技術を発見する(MCU“在り続ける者”の説明では、31世紀に暮らしていた個体がマルチバースを発見するという設定だった。これがMCU版における設定改変なのかもしれない)。

ナサニエルは古代エジプトへタイムトラベルをし、そこで「ラマ・タト」と名乗り、30世紀の技術を駆使して支配者としてのしあがる。過去の異変に気付いたファンタスティック・フォーが時空を超えてやってくると、カーンは彼らとの戦いに破れて元の時代へ逃走。しかし時間流の中で遭難し、戦争によって荒廃した40世紀の未来にたどり着いた。

そこでナサニエルは「征服者カーン」を名乗るようになり、世界を征服。あらゆる時空の支配欲に駆られたカーンは20世紀に向かうと、未来人からすれば「原始人」同然であるアベンジャーズ制圧を試みる。

ところがアベンジャーズは思わぬ戦力を発揮し、カーンは敗北。以来、カーンとアベンジャーズは何度か対決しており、状況に応じて共闘することもある。

カーンが時代の征服者になろうと躍起になって時間操作を試みるたび、それぞれの時代にカーンが生み出されるという混沌を招くこととなった。何人ものカーンが互いに大虐殺を起こすというエピソードもある(これこそがMCU“在り続ける者”が経験した多元宇宙間戦争かもしれないし、そうではないかもしれない)。

カーンは不安定で複雑なアイデンティティを持つ。何度も屈辱を与えられたアベンジャーズ打倒の執念に燃えているほか、遠い未来の自分が「イモータス」と呼ばれる堕落した存在に成り下がるという運命に抗おうとしている。また、全ての時代・次元における支配者であろうとする、極めて強烈な権力欲にも突き動かされている。

征服者カーンのエピソードについては、コミック『征服者カーン』邦訳版がShoPro Booksより発売されているので、興味のある方は手に取ってみると良いだろう。これは、1963年に初登場したカーンの長い歴史を再解釈した独自のストーリーなのだが、カーンの大まかな設計を理解する上で参考になる一書だ。

征服者カーン登場で予想する、MCU今後の展開

MCUにおける征服者カーンは、過去作や将来の作品と密接に関連する存在となり得る。時空を超えた長い歴史の中で、カーンはいくつもの異名を持っており、それらが他作品に関係を及ぼしているからだ。

ヤング・アベンジャーズ結成への布石?

20世紀にタイムトラベルした若きナサニエル・リチャーズは、未来の自分が強大なヴィランになるという運命を拒絶し、カーンに対抗するヒーローチーム「ヤング・アベンジャーズ」を結成。自らはアイアンラッドと名乗る。

「ヤング・アベンジャーズ」といえば、MCUでも(作品内で公言されたことはまだないものの)着々と結成準備が進んでいる若手ヒーローチームだ。その候補となるスピード、ウィッカン、ケイト・ビショップ、パトリオット、キッド・ロキ、アメリカ・チャベス、ミズ・マーベルといったメンバーが登場済みで、『クアントマニア』に登場するキャシー・ラングも「スタチュア」の名で加わる可能性がある。

予想できる展開はこうだ。『クアントマニア』でカーンの強大さと危険性が示唆され、続く作品でその脅威がいよいよ本格化すると、アベンジャーズは何らかの理由で機能不全に陥る。これに代わって、別の時空からやってきたナサニエルが「ヤング・アベンジャーズ」結成を呼びかけるという流れだ。

ちなみにアイアンラッドのスーツは、「未来版アイアンマン」のようなデザインと機能性を持っている。もしも実写化されれば、アイアンマンの影響を感じさせる描写になるだろう。

ムーンナイト合流への布石?

征服者カーンの登場は、別のMCU作品との接点がほとんどなかったドラマ「ムーンナイト」が他ヒーローと合流する布石となるかもしれない。カーンが古代エジプトで「ラマ・タト」と名乗っていた頃、月の神コンスと出会っているからだ。

ムーンナイト
©Marvel Studios 2022. All Rights Reserved.

コンスといえば、「ムーンナイト」の主人公スティーヴン・グラント/マーク・スペクターに力を与えた存在。MCU版でカーンの古代エジプト時代が描かれれば、そこでの出来事がムーンナイトに何らかの影響を与える可能性はあるだろう。

注目は2025年5月公開予定の『アベンジャーズ/ザ・カーン・ダイナスティ』。この副題は「カーン王朝」の意味だから、カーンが古代エジプト文明を支配した時代に何か関係があるのかもしれない。

『ファンタスティック・フォー』に繋がる?

原作コミックにおいて征服者カーンはファンタスティック・フォーと戦っている。今後のMCUでカーンは、『ザ・カーン・ダイナスティ』で大暴れすることが予想されるが、その直前(2025年2月)にMCU版『ファンタスティック・フォー』が公開予定であることは、単なる偶然ではないだろう。ここで描かれた出来事が、『ザ・カーン・ダイナスティ』のビッグバトルに繋がっていく展開も予想できる。

対カーン最終決戦では全時空のヒーローが集結するかも?

MCU「インフィニティ・サーガ」では、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)で全ヒーローが集結して戦うという壮大なラスボス戦が描かれた。全世界累計興収およそ28億ドルを記録したこの大成功作を超えるため、マーベル・スタジオはさらなる「夢のヒーロー大集合」の図を思い描いていることだろう。

『エンドゲーム』ではアベンジャーズがサノスを倒すために過去に戻ったり、魔術を通じて全ヒーローが一ヶ所に集まったりするクライマックスだったが、カーンとの最終決戦では時間も次元も横断した戦いになりそうだ。コミックでは、様々な時代のヒーローたちが力を合わせ、赤子のカーンをさらうという作戦もある。

例えば、あのシリーズや、あんな作品からヒーローたちが登場したとしたら?現在・未来・過去に別次元を掛け合わせれば無限の可能性が生じるわけで、死亡/引退したヒーローや、別シリーズのヒーローが登場する展開も決してあり得なくはない。逆に言うならば、カーンを倒すためには、例え掟破りになろうとも、たくさんの特殊な協力者が不可欠になりかねないということだ。

アントマン&ワスプ:クアントマニア
(c)Marvel Studios 2023

征服者カーン、サノスとどう違う? 

ヒーローたちが多大な犠牲を払いながら、やっとの思いで倒したサノス。これに代わってMCUの新たなる巨大ヴィランとなる征服者カーンは、いかなる点でサノスと異なっているのか?

「違いといえば人間性です」と説明するのは、『クアントマニア』と『アベンジャーズ/ザ・カーン・ダイナスティ』の脚本を手がけるジェフ・ラブネスだ。「もちろんサノスは偉大で象徴的なヴィランですが、でもデッカい紫のCG野郎でもあった。宇宙からやってきたエイリアンだったわけです。カーンでは、彼が人間である、ということをきちんと押し出したかったんです」。

ラブネスはカーンを「非常に孤独なキャラクター」と言い表す。「これから先、様々な形で、様々なカーンを見る事になりますが、そこでは彼の人間性や、脆弱性もきちんと紹介していきたい」との説明はなるほど納得だが、ラブネスは続けてこんな恐ろしい展開も付け加えた。「彼が黙示録的な、アベンジャーズ級の大きさになるまでね」

やはりカーンがMCUの次期ラスボスとして強大な存在感を放つことは間違いなさそう。コミックのように、増殖しまくったカーンたちが殺し合いを始めたり、あるいは結託して全ユニバースを征服してしまうかもしれない。「カーンはトップクラスの、Aリストのアベンジャーズ・ヴィラン。こんなやつに勝てないぞという時、どうするのか?」と、ラブネスはアベンジャーズが今後対面する危機を予告している。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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