アレハンドロ・ホドロフスキーってどんな監督?映画『リアリティのダンス』で紐解こう

Hoy no puedo escribir para ti porque Pascale y yo estamos colgando los 100 cuadros de nuestra exposición a 4 manos, pascALEjandro, en París pic.twitter.com/UWWGEyU1Sg
— Alejandro Jodorowsky (@alejodorowsky) 2017年4月27日
また、『ホーリー・マウンテン』や『エル・トポ』のように観る者に解釈を投げかけるような難解なストーリーではなく、『サンタ・サングレ』のように刺激の強いグロテスクな描写があるわけでもないがカオスなシーンもしばしば。全体的にポップな色合いの映像だが、そんな毒っ気のある“アレハンドロ・ホドロフスキーらしさ”も健在だ。
救済と成長の物語
『リアリティのダンス』には、時折アレハンドロ・ホドロフスキー監督自身も出演している。そしてアレハンドロ少年に言葉を投げかけるのだ。「今この世界に居場所が無いと感じていても、きっと大丈夫になる」と。祖父が孫を優しく諭すように、老人となったアレハンドロ・ホドロフスキーが自分の少年時代に向かって言葉を投げかける。『リアリティのダンス』は監督自身の、魂の救済の物語なのである。
父親との確執、母親の歪んだ愛情。それでも家族と一緒に暮らすために、ホドロフスキー少年自身も成長していく。きっとこの映画以上に、監督の幼少期は壮絶なものであっただろう。
しかしこの作品で彼は自分につらく当たった父親のことも許している。辛く混沌とした幼少時代の記憶を、詩的かつ芸術的に描き出している。自分の決して楽しかったわけではない記憶や経験も、ひとつの物語として完成させているのだ。「いろんなことがあったけれど、自分は芸術家としての人生を歩んでいる。どんなことも無駄ではなかったのだ」というように。
Como muy pronto, el 17 de febrero, voy a cumplir 88 vueltas alrededor del sol, hoy te voy a contar 5 historias de hombres muy viejos. pic.twitter.com/3tt1SDvleu
— Alejandro Jodorowsky (@alejodorowsky) 2017年2月11日
アレハンドロ・ホドロフスキー。摩訶不思議な世界観の、刺激の強い映画を撮る“カルト映画の巨匠”。自分の辛く孤独な経験も全て、ファンタジックでミステリアスな作品に変えてしまう芸術家の魂を持った人物だ。奇妙な映像が目立つ彼の作品も、自分と同じように迷いや葛藤を抱える人々を導く、希望にあふれたメッセージを持っているのかもしれない。
2017年に公開される彼の映画は、いったいどんな作品なのだろう? どんな映像とストーリーで、私たちをホドロフスキーの世界へ連れ込んでくれるのだろう? 『マイ・ライフ・ディレクテッド・バイ・ニコラス・ウェンディング・レフン』、『エンドレス・ポエトリー』が公開される前に、ぜひまずこの『リアリティのダンス』で、アレハンドロ・ホドロフスキー作品に触れてみてはいかがだろうか?