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【もう一度『LOGAN/ローガン』を観るために④】本作のラストはいかにして撮影されたか?ヒュー・ジャックマンが望んだ「もう一つのエンディング」とは

映画『LOGAN/ローガン』をよりディープに楽しむ特集記事「もう一度『LOGAN/ローガン』を観るために」。最終回の今回は、いよいよ本作のラスト、ローガン/ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)とローラ(ダフネ・キーン)の二人の場面に迫っていこう。

『LOGAN/ローガン』で撮影監督を務めたジョン・マシソンは、いかにして二人の場面でカメラを回したのか。そしてジェームズ・マンゴールド監督が抱く撮影へのこだわりとは……。あわせて、ヒュー・ジャックマンが望んだという「もう一つのエンディング」もご紹介したい。

【注意】

この記事には、映画『LOGAN/ローガン』『許されざる者』(1992年)のネタバレが含まれています。

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監督&撮影監督、アクションへの二人のこだわり

本作『LOGAN/ローガン』のアクションシーンは、昨今のアクション映画には珍しいほど“すべてが理解できる”ことが特徴だ。もちろんローガンやローラの攻撃はとても速いが、それでも映像は観客が混乱しないギリギリのラインを狙いながら構成されている。マシソンによると、マンゴールド監督はカメラのあり方に強いこだわりを持っているようだ。

「ジェームズ(・マンゴールド監督)はカメラの狙いを常に知りたがるのさ。“なぜここにこのカメラがあるんだ? なぜ画を動かすんだ?”ってね。それに彼は、被写体を画面の外へむやみに出したがらない。すごく具体的なんだよ、“これがあっちに繋がって、さらにあっちへ繋がる……”って感じだ」

もちろんマシソンにも、アクションを撮る際のこだわりはある。

「アクションのシークエンスではスーパー・クローズアップを使いたくない。観客の視線をあちこちに向けさせることになるからね。ミディアム・ワイドショットの方がはるかに理解しやすいんだよ。男たちが互いに振り回されて地面に倒れるなら、地面を見せたいんだ。(男たちを)フレームの外に飛び出させないようにね」

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マシソンによると、こうしたアクションの撮り方は、文字通りあたりを“跳び回る”ローラの場合も同じだったという。それでもハイスピードでは撮影せず、現場で流れる時間をそのまま映像に収めるのが彼のやり方だった。一方でマシソンは、「アクションシーンがヘビーでフィジカルだと感じたら、それはジェームズの功績だよ」とも語っている。

また『LOGAN/ローガン』では、チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)が能力を使うシーンでカメラを強く揺さぶっての撮影が行われた。その理由について、マシソンは「(チャールズの能力を)ほかの映画より攻撃的に、また(観客にも)肌でわかるようにしたかったんだ」と語っている。撮影された映像にはVFXチームによる加工が施されているが、その詳細は以下の記事をご覧いただきたい。

ローガン&ローラの「ラスト」はいかに撮られたか

『LOGAN/ローガン』のラストで、ローラに寄り添われながら、ローガン/ウルヴァリンはついに命を落とす。本作のストーリー、そしてヒュー・ジャックマン扮するウルヴァリンを締めくくる重要なシーンだが、マシスンによるとこのシーンの脚本は「何度も書き直されていた」ようだ。紆余曲折を経ての撮影現場で、マシスンはヒュー・ジャックマンとダフネ・キーンを前に、ある思いを抱いたという。

「(ヒューとダフネの)二人を両方撮ることがすごく大切だと思った。(二人から)涙があふれてくる場面だよ、ヒューだけを撮って“すごくいいね。じゃあダフネを撮ろう”なんてことはできない。だって二人は自分のすべてを捧げているんだからね、消耗してしまう」

しかしマシソンのこうした企みは、マンゴールド監督のこだわりに背くものだった。

ジェームズはカメラ一台だけで撮ることに強いこだわりがある。でも僕は彼を顧みることすらしなかった。ジェームズが僕に腹を立ててたのは知ってるけど、そのとき現場で何が起ころうとしていたか、彼も僕と同意見だったと思う。僕たちは二台のカメラで撮るほうが良いと確信していたんだ」

現場でのヒューは、文句ひとつ言わずに同じことを繰り返す人物だったという。しかしマシソンは、このシーンをヒューとダフネが何度も繰り返すことは厳しいと考えていた……。『LOGAN/ローガン』の本編で使われているのは、二台のカメラで同時に撮影された、まさに決定的な演技だったのである。

ラストでヒューとダフネが見せた演技を、マシソンはこのように振り返っている。

「本物の瞬間、本物のエモーションだよ。本物の演技とは、そのとき本当に起きているものなんだ。それを何度も繰り返して、俳優を疲弊させることはできない。二人は素晴らしかったよ。“ああ、撮れた”と思ったんだ」

ヒュー・ジャックマンが望んだ「もう一つのエンディング」

こうして『LOGAN/ローガン』のラストで、ヒュー・ジャックマンが17年間演じてきたウルヴァリンはその死を遂げた。しかし演じていたヒュー本人は、当初このラストとは別の結末を希望していたという。それは本作に大きな影響を与えた、クリント・イーストウッド監督作品『許されざる者』(1992年)により近いものだった。

『許されざる者』で、主人公のウィリアム・マニーは自らの目的を達したあと、自分の犯した殺人や仲間の死を超えてなお生きていく。その結末について、ヒューはこう語っている。

「マニーが死なないところに強さを感じる結末だ。観客は彼が死ぬだろうと予想するけど、マニーは最後に(敵の)全員を撃つと、なかったことにした自分の闇を引き受ける。彼は生きていかなければならないのさ、それが非常に素晴らしいんだ」

そしてヒューは、こうした結末を『LOGAN/ローガン』にも一度は求めたという。

「(結末で)ローガンが死ぬかもしれない、という可能性は常にあったんだ。だから“自由に考えよう、彼が死なない方が力強い結末になるかもしれない”って言ってみたんだよ。ジェームズは完成版のエンディングが良いと確信していたけど、彼は正しかったね。(マニーのような)人間ではなく、決して死なないであろう人物で真に心を打つのは、“こんな感じなんだな”と口にしながら死んでいくことだ

映画『LOGAN/ローガン』は2017年6月1日より公開中。一度のみならず、二度、三度とその壮絶な最期を見届けてほしい。

Sources: http://www.express.co.uk/entertainment/films/773778/Logan-ending-Wolverine-Hugh-Jackman-cinematographer-John-Mathieson-Wolverine
http://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/logan-wolverine-death-scene-laura-what-was-like-set-983357
https://geektyrant.com/news/hugh-jackman-says-he-wanted-logan-to-end-like-clint-eastwoods-unforgiven
https://www.yahoo.com/movies/hugh-jackman-wanted-logan-to-end-like-unforgiven-173140331.html
Eyecatch Image: https://www.facebook.com/TheWolverineMovie/photos/a.518092601539940.134721.267047309977805/1736874872995034/?type=3&theater

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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