【ネタバレ解説】マーベル「ロキ」第4話のミッドクレジットシーンで分かったこと

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)ドラマ「ロキ」の第4話『分岐イベント』は、ロキというキャラクターが持つ歴史を大きく示す回となった。その多くは、本シリーズ初の登場となるミッドクレジット・シーンに詰め込まれている。
残すところ2話となった本シリーズで、わずかに映し出されたミッドクレジット・シーンには、疑問符を浮かべた方も多いはず。本記事では、このミッドクレジットシーンで判明したことを整理してみる。
この記事には、「ロキ」第4話『分岐イベント』のネタバレが含まれています。

第4話では、TVAへの疑念が深まるなか、組織内部で大きな乱れが生じた。メビウスをはじめとするTVA職員は、自分たちはタイムキーパーによって作り出されたものと信じ、与えられた運命を全うしていたが、実際には裁判官サヴォーナをはじめとする上層部によって記憶を消されており、職員として働かされていたのだ。
一方、ロキとシルヴィは、タイムキーパーが偽物のアンドロイドであることを突き止めた。その後、ロキはTVAの秘密を知るサヴォーナによって剪定(せんてい)されてしまい、死んでしまったと思われた。
しかし、ミッドクレジットシーンでは、どうやらロキが死んでいないことが分かる。「ここはヘル(地獄)か?死んだのか?」と自問するロキの耳元に「まだだ」と何者かのささやき声。すると、崩壊した街を背景に、子ども1人と大人2人、1体のワニのような生き物が現れたのだ。後に詳しく説明するが、ロキの前に現れたのは、いずれも別世界に存在する変異体のロキだった。
剪定=死ではない
まず大枠の整理として、剪定された者に待ち受ける運命は死のみと考えられていたが、ミッドクレジット・シーンでこの認識が誤りだったことが判明する。目を覚まし、「ここはヘルか?」とつぶやいたロキは、自分の居場所を『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)に登場したヘラが支配する死者の領域だと勘違いするが、ロキがたどり着いたのは現実の世界だった。とすると、メビウスもどこかで生存している可能性はある。
もっとも、このシーンだけではTVAの秘密を暴くことは難しい。ここで鍵を握るのが、ロキの前に現れた変異体ロキたちなのだ。
彼らは、いずれもロキに関係する装飾を身に着けている。片膝をついて座る少年と黄色のスーツに身を包んだ男は、ロキやシルヴィと同様に角(つの)の頭飾りを被り、黒スーツの男は、ロキの兄ソーが扱うハンマー“ムジョルニア”のようなものを持つ。少年が抱えるワニのような生き物にも角の頭飾りが確認できる。謎に満ちた彼らの正体は、原作コミックにヒントが隠されているようだ。
新たな変異体ロキたち
エンドクレジットを確認すると、ロキの前に現れた3人は、少年がキッド・ロキ(Kid Loki)、黄色スーツの男がクラシック・ロキ(Classic Loki)、ハンマーを持った男がボーストフル・ロキ(Boastful Loki)と記されている。それぞれ、「このサイテーな世界の終わり」(2017-)のジャック・ビール、「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011-2019)などのデオビア・オパレイ、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)などで知られるリチャード・E・グラントが演じている。
マーベル・コミックの歴史において、ロキは様々な姿で登場するが、少なくともキッド・ロキとクラシック・ロキは同様のキャラクターが存在する。まずはキッド・ロキについて。2010年に刊行されたコミック「Thor」で描かれた「シージ」というタイムラインでは、アスガルドを戦場に、アベンジャーズと、初代グリーン・ゴブリンとして知られるノーマン・オズボーン率いる侵攻軍の決戦が繰り広げられる。アスガルドへの侵攻をノーマンに吹き込んだ張本人であるロキは、途中で改心しアベンジャーズ側につくことに。この後、ロキは裏切りがばれてノーマンに殺されてしまうのだが、新たに生まれ変わることになったのだ。この生まれ変わりこそ、キッド・ロキとして知られるキャラクターなのである。
一方で、リチャード・E・グラントが演じるクラシック・ロキは、キッド・ロキのように同名のキャラクターがいるわけではなさそう。もっとも、クラシック・ロキは、アメコミ界のレジェンドとして知られるジャック・カービーとスタン・リーが1960代に手がけたコミック「Journey Into Mystery」でマーベル・コミック初登場を果たしたロキと同じく、黄色と緑を基調としたスーツを身にまとっている。これこそ、“古典的”を意味するクラシックを冠したキャラクター名が付けられた所以だろう。
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