「ロキ」重要人物・メビウスは「ミステリの探偵役」 ─ オーウェン・ウィルソン、銀髪と役づくりの秘密を語る

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のドラマシリーズ「ロキ」で、トム・ヒドルストン演じる主人公とともに重要な役割を担うのが、時系列を監視する組織・TVAのエージェントであるメビウスだ。この新キャラクターを演じるのは、ウェス・アンダーソン作品や『ワンダー 君は太陽』(2017)などのオーウェン・ウィルソン。コミック作品は初めて、テレビシリーズへのレギュラー出演も初めてとなる。
監督のケイト・ヘロンは、本作を“ミステリー”として、またメビウスという人物を「ロキとともに観客を導く探偵役」として捉えた。おまけにロキとは相棒でありながらしばしば攻防を繰り広げるとあって、メビウス役のキャスティングが極めて重要であることは当初から認識していたという。米国メディアでは、オーウェンのキャスティングと役づくりについて、オーウェン自身とヘロン監督が率直に語っている。

オーウェン・ウィルソン、シルバーヘアで新たな挑戦
もとよりオーウェンの大ファンだったというヘロンは、メビウス役の候補にオーウェンの名前が浮上したことを大いに喜び、オファーの電話をかけることに大いに緊張したそう。ただし、オーウェンは監督の話を快く聞き入れ、最後には出演を承諾した。その時、監督には「自分自身とはまったく違う役柄をやりたい、新しい挑戦をしたい」と申し出たという。
オーウェンと監督は、このキーワードからメビウス役の造形にあたった。当初、監督はだらしない見た目の人物を想定していたが、オーウェンの解釈を踏まえ、撮影の数週間前にビジュアルのイメージも一新。オーウェンはトレードマークのブロンドヘアを封印し、シルバーのウィッグをかぶっているが、これはオーウェン自身のアイデアだ。オーウェンは「メビウスの見た目がすごく気に入っている」と述べ、その経緯を語った。
「『Documentary Now!(原題)』というテレビに出た時にウィッグをかぶったんですが、その時に、グレーのクルーカットのウィッグを用意してもらいました。実際には使わなかったんですが、見た目が良かったので覚えていたんです。そこで今回提案してみたら、受け入れてもらえて、しかもうまくいった。彼らの想定とは違っただろうし、ちょっと不安だったんじゃないかと思うんですが、今ではこれ以外のメビウスは想像できないと言ってもらえるはず。(見た目が)この役を作ってくれたところがありますからね。」
ヘロン監督もこれに同意し、「(今までのオーウェンとは)見た目も、内面の演技もまったく違います」とコメント。メビウスとしての姿に慣れてしまったせいで、撮影現場でブロンドヘアのオーウェンを見かけるとむしろ違和感をおぼえたという。ちなみに、メビウスの口髭はコミックのキャラクターにオマージュを捧げたものである。

もっともオーウェン自身は、メビウス役を演じる上でコミックには目を通さなかったことを明かしている。マイケル・ウォルドロンによる脚本を読み、ヘロン監督やトム・ヒドルストンとの話し合いを基に役柄を作りあげていったのだ。
「撮影が始まる前、トムに(『マイティ・ソー』の)神話を説明してもらい、ロキが何を考えていたのか、兄との関係はどうだったのかと質問させてもらいました。そのすべてが役に立ったし、話したことを実際のシーンに使ったこともあります。トムが話すのが本当に上手で、説明もうまい。メビウス役を演じる時にも使わせてもらっています。[中略]僕が得意じゃない、論理的なことを喋る場面もありますが、監督はとても相談しやすいし、良い解決策が見つかったら、プロデューサーたちもアイデアを温かく受け入れてくれます。だからアイデアを出しやすかったし、トムと互いに理解しあっていたアイデアもたくさんありました。」
オーウェンは「ロキ」のストーリーについて、「自由意志やタイムラインに関するプロットより、むしろ人間ドラマの面に惹かれた」という。「人の不安定な面、虚栄心を見て、自分たちの意図に沿わせようとする。それが、ポジションをめぐる二人の攻防を面白くするわけです。決まり文句のようですが、チェスの対局のようなものです」。しかし第1話の時点では、この言葉の真意はまだわからない。

ところでオーウェンはMCUについてほとんど何も知らなかったようで、いわく「知っていたのはアイアンマンやハルク……それからアクアマンくらい」(残念ながらアクアマンはDCコミックスのヒーローである)。もっとも、オーウェンは自分にMCUの知識があまりないことをさほど気にしていないそう。そればかりか、自分のそういう側面がメビウスに似ているのだと強調する。
「メビウスはTVAにおける自分のポジションをさらりと受け入れていて、あまり深く考え込みすぎない。そういう人だし、それが彼の人生。僕もこの役柄に対してはそういうところがあって、MCUには参加したけれど、すごくリラックスしているし、自分に自信もあります。メビウスも確固たる考え方の持ち主で、なにかに驚くことはありませんしね。」
マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長によれば、こうしたメビウスの性質こそがロキの新たな一面を引き出すのだという。「ロキは兄や父親、アベンジャーズのメンバーなど、他者からのリアクションに慣れています。けれども、メビウスはロキが求める反応を一切しない。それが新しい関係性に繋がるんです」。
ところでオーウェンは、俳優のみならず『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)などで脚本家としても実績を残している。ヘロン監督によれば、本作でもその才能は活きているようだ。第1話でラヴォーナ・レンスレイヤーに「いつもあなたを見上げているような気がする。まあ、そういうものだ」とささやくセリフは、撮影中にオーウェンが即興で考え出したもの。監督は「即興の演技が最高に面白い」と称え、「脚本家としての頭を使って、セットでいろんなことを提案してくれるんです。“遊び方のルールがわかった”と言われたら、どんどんやってほしいと思いますよね」と話した。
ディズニープラス オリジナルドラマシリーズ「ロキ」は配信中。
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Sources: The Hollywood Reporter, Variety, Bustle, Insider, Entertainment Weekly